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ノスフェラトゥとヴェアヴォルフ  作者: 周防涼白
ぶらり異世界小旅行編
59/59

~おろろーーーーんおろろろろろぉ~

どこへ向かっているんでしょうかねぇ……(遠い目

 もうもうと立ち込める土煙の中からの叫び声。あまりの声の大きさに寝静まっていた城中が俄かに活気づく。


 その声は五月蝿いぐらいに甲高く、聞くものを不愉快にさせる様なモノだった。


「魔物ではなく魔族の、それも最上級の魔王の襲来はあまりにも突然すぎやしないかい……やっぱりフラグか? フラグの所為なのか!?」


「訳の分からない事を言っている場合か! すぐに戦闘準備をしろ!!」


「そんなこと言ったって、僕ら裸じゃん……ってもう鎧姿になってるし。どんな早着替えだよ」


 女騎士は先程までは裸であった筈なのに、また寝巻き姿でやって来ていた筈なのに、何時の間にやら鎧を着込んでいた。


「ぐずぐずするな! 魔族を斃す……其の為(・・・)の勇者であろう?!」


 あぁそうか……と少年は先程までのほんのり桃色ムードから急激に冷めていく。


 彼女や此の世界の住人に於いて、勇者の定義は人間性など皆無で、敵を殺す道具以外何者……よりか何物か……でもないのかな、と少年は思ってしまうが顔には出さない。


 なら、彼女は新しく手に入れた道具を大切に扱おうとしているだけなのかと其の様な事も考えてしまう。


「オゥケィ。ばっちり問題ない寧ろ万事解決」


「また訳の分からない事を……!」


 少年は女騎士の視線を右手で遮りながら立ち上がる。


「俺が襲来者を撃退させる、それでいいんだろ? なーに心配すんなや、さっきの声を聞いた感じ女のだったべ。それに俺は勇者なんだろ?」


 少年は風呂の底を一度踏み、穴を作りはってあったお湯を流し、もう一度踏み土魔法で形成した風呂と穴を消した。


 少年が身を翻したと思えば、既に漆黒の衣服に身体を包んでいた。


「やっぱり厨二臭いよなぁ」


 自分の姿を見下ろし、自嘲気に呟く少年。だが、少し満足気に微笑んでいる様にも見える。


「さて、ちょっくら行ってきますわ」


 少年は女騎士を一瞥もせずに駆けてゆく。


…………○


 オゥケィ。状況を確認しよう。先ずは俺の立ち位置だ。勇者? 救世主? メシア? まぁ表現の仕方はどうでもいい。


 とりあえず、此の世界の人々を脅かすであろう魔獣の間引きや魔族及び魔王の討伐……よりか抹殺か。


 魔獣は魔物の上位互換の様な、より凶悪化した存在らしい。魔力を通常の固体より多く其の身に宿し、体表が硬質化したり色が変わったりするらしい。まぁゲームでよくありのテンプレだわな。


 魔族は高度な知識を宿し人語を理解しているとかなんとか。ま、より人間に近づいていると考えていいんじゃないか。でだ、魔族は己が欲望を満たすだけで他の生物を蹂躙したり虐殺したりするとかなんとか。こぇえよ、あと凄く怖い。でも、人間も同じ様なものか。


 自分より下等な生物は平気で殺すよな。でも、其れ等って人間の様な知能は有していないよな。自分達と同じ様に笑い、泣き、悲しみ、怒る奴を虫とかと同じ様に殺せるのか……?


 俺には本当に魔王を殺せる覚悟とやらがあるのだろうか……?




 勇者召喚……平和だった彼の国から遠くかけ離れた、異世界ファンタジーの様な処へ勝手に呼び出されて、今現在。確かに非日常的な出来事に憧れてはいた。


 だが、しかし、バット。憧れは所詮、憧れでしかない。実際その妄想が現実になってしまった際は困る以外何も出来ないと思うな。絶対に起こり得ない事を想像するのは楽しいけれど、その絶対が覆されて、起こってしまったら……。




 此方に来て不愉快に感じるのは、肩書きだけのプライドが高い貴族からの嫌がらせとか、さ。お前等、助けて欲しいから勇者召喚っていう誘拐をしているのに、其の人を蔑ろにするって如何なの? 馬鹿なの? 死ぬの?


 俺は本当にコイツ等の為に命を懸けて守る必要あるのかとかさ。やっぱり逃げ出して異世界スローライフでも送りたいなとか思う訳ですよ。……まぁいいけど。守りたいと思える人達もいることだし。今は魔王とか自称する奴……多分魔族の王様なんだろうけど……を如何にかすることが重要だ。


 …………魔王さんや、勝手に自己満足して家に帰ってくれませんかね。


…………○


 雲が月を隠している。


「…………ほぅ? 其方が勇者か?」


 死屍累々とした惨状であった。


「来るのが聊か遅すぎたのではないか? ん?」


 少年は襲来者の姿を目視すると同時に恐怖した。赤い絨毯の上に一人で立っている様な人型……に翼と尻尾が生えている。人間ではない。SM嬢が着る様な黒のボンデージで其の身を包み、自身の両腕を拘束している。翼が腕の様に広がっている。頭には角も生えていた。刺青の様な線が体中に走っている。


 鷹などの翼の様な形で、片翼だけで軽く二メートルは超えていている。尻尾は蠍のの様に節に分かれ最後の節だけ膨らみ先は巨大な注射器のように尖っている。


「此奴等だけでは余興にすらなりはせんぞ」


 ぽいっと尻尾で突き刺していた人型を投げ捨てる。ごろごろと転がり、少年の目の前で止まる。何時だったか少年を謁見の間まで呼びにきた騎士だった。首が曲がるべきではない方向に明らかに折れている。


 少年は血の気が曳いた。キモチワルイ。たまらず嘔吐した。消化しかかっている夕飯が逆流してきた。喉がひりひりしていくのを感じた。


 雲が動き、月明かりが照らされる。少年は其の女をはっきりと確認し、また其の場の赤い絨毯の様に感じたものも認識する。


 ばらばらになった人間であった。


 少年はもう一度激しく吐瀉しようとするが、先程ので胃の中は空っぽになっており、喉の掻痒感が増しただけであった。


…………○

次回は何時になるのかわからないです(笑


…………すみません。

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