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ノスフェラトゥとヴェアヴォルフ  作者: 周防涼白
ぶらり異世界小旅行編
58/59

~ええぇえええぇー。ちょっ! おまーーっ~

区切り方がうまくいかないです(泣

 次の日も、其のまた次の日も女騎士、彼女に依る訓練の日々が続いた。


 日を重ねる度に剣筋とか身体の動かし方がより解るようになっていた。少年が良くなかったり間違った動きをする毎に注意を呼び掛けてくれ、直ぐに正しいやり方を見せていた。彼女の鍛え方と勇者補正が相まってか、少年と彼女の差は少しずつではあるが、確実にゆっくりと縮まっていった。

 

 稽古? 組手? でも打ち合う時間が長引くようになり、十回に一度くらいは一本取れるようになったお。ただ……まだまだ大変すぎるんだが。


「ははははははははゼロ! 楽しいなぁ楽しいなぁゼロ!」


「っく、何時も何時も余裕そうですね」


 潰された訓練用の剣で何度も打ち合う。余裕そうな表情で一つ一つが重い剣戟の応酬が繰り返される。ほんの一瞬、彼女に隙が出来た様に見え、少年は其れを逃さず勢い良く剣を振り下ろす。もらった! 少年は確信に似た思いを胸に。


 が、予想に反して彼女は素早い動きを見せ、少年の太刀筋を横に紙一重で避け、そして少年の喉元に剣を押し当て……少年の頬に汗が伝う。にやりと彼女は微笑む。


「……参り、ました」


「ふふっ、それじゃあ少し休憩でもするか?」


「お願いしますー」


 だぁーっと少年は呻き声をあげながら芝生に倒れ込む。視界に広がるのは雲一つない青空と、彼女の姿が太陽と重なり眩しく思い目を瞑った。よっと言いながら彼女は少年の横に座る。


「…………」


「…………」


 そよ風が吹き彼女が髪を抑える。なんだか平和だなぁ。魔族と戦争をしているだなんて思えないよ。このまま悪い事なんて起こらず平穏な日々が続けばいいのになぁ、なんて。……此処でフラグが立ててしまったなんて思いもしなかったんだ。


 少年はちらりと彼女に視線を寄せると、身体の中心線上の衣服が破け、そこから柔らかそうな肉が覗ける。丁度、双丘の間の服がなくなっている状態である。


「?!」


「どうしたゼロ? なにかあったのか?」彼女は微笑みながら問う。まるで其の衣服の状態に気付いていないようである。


「い、いや……なにもありませんよ?」


 少年は努めて平静を装うとするが、声が震えている。其れに少し裏返っている。彼女は少年の視線に疑問を抱き、下を見下ろすと、自分の衣服が破けている事に気が付いた。


「なっなっなっなぁー!」


 彼女は直ぐ様片手で胸元を隠し赤面する。もう片方の手で少年の顔をぐいぐいと押し、自身を見せない様に試みる。


「ばっ馬鹿者! 何処が『なにもありませんよ?』だ?!」


「いやー眼福といいますかなんといいますか……良い身体してますよね」


「恥を知れ! 痴れ者が!」


 と、何時の間にか現れていた座学の女先生が辞書を使って後頭部を叩く。地味に鋭い攻撃であった為、少年は軽く涙目になっていた。


「ほら、ゼロ様、楽しい座学の時間に遅れてしまいますよ!」


 余りの気配のなさ及び唐突さに彼女は唖然、俺も茫然。え、なんなの此の世界。ホントに異世界から勇者を召喚する必要があったりするの? 高スペックな人多くね?


 先生に連行される途中、兵士さん達から罵倒冷笑陰口などその他諸々の誹謗中傷を受ける事となっていた。まぁしょうがないよね。嫁入り前の人の柔肌を見てしまった訳だし。


 少年は自嘲の笑みを浮かべながら何処か遠くを見ている様な目をしていた。


 此のまま嫌がらせがエスカレートしてトイレにも行けなくなったら困るよ。最悪、どっかの誰かよろしく飲尿療法でもしなければならないのか。用も足せるし、喉も潤う! ……なんて楽観視出来ねーよ。


…………○


 異世界の生活にも慣れた頃、少年は夜にこっそりと部屋から抜け出し訓練場……芝でなく砂利の……に足を運んでいた。


 軽く全属性魔法の発動をする。例えば、掌に炎を出現させ投擲、空中で固定、分割、結合、小規模の爆発を起こす……細い魔力の糸の様な物をくっつけ、そう次々に命令を書き換えながら。


 一通り確認し終える頃には月明かりを反射する汗がうっすらと浮かんでいた。少年は土魔法でドデカイ樽の様な鍋の様な物を作った。風呂である。


 持参していたタオルを使い軽く身体の汗をふいてから、いざ。人工的な照明は殆どない異世界に於いて夜空は絶景であった。


 ぽやぽやと今迄の事とこれからの事を考えていると、ジャリっと誰かが近付いてくる音がした。


「お月様、綺麗ですね」


 少年はそう先手を打った。足音の人は一瞬、歩を止め、また動きだす……ジャリジャリと音を鳴らして。


「そうか? 何時も通りに見えるぞ」


 返す言葉は至って冷静の様に思える、が、実際の処は……? 足音の人は近衛騎士団団長、彼女であった。普段着ている様な鎧姿ではなく、寝巻きに一枚羽織った感じの服装だ。


「所でゼロよ、お前が今入っているのはお風呂と言うやつではないのか」


「そーですねー風呂ですねー。……一緒に入りますか?」


 気になる人に悪戯をする少年の様な笑みを浮かべて。なんてね……そう、少年は呟くのだが。


「そう……だな……では、少し失礼しようかな」


 と言って、ちゃぽんという音ともに水面に波が伝わっていく。少年はもしや……と思い振り返ると、羽織っている服の類を全て脱ぎ、風呂へと片足を入れる女騎士の姿がそこにあった。


「な……!」


 少年は慌てて顔を背け、湯の中に顔を突っ込み叫んだ。ななななんだってー! 息が切れ、顔を上げ、咳き込む少年。


 女騎士はタオル等を使って身体を隠すことなどせず、一糸纏わぬ姿なので少年にとっては劇薬すぎて逆に毒薬の様に感じた。


「ど、どうしたのだゼロよ……?!」


「い、いや……なんで服を脱いでらっしゃるのか疑問に思いまして」


「服を着ながらお風呂に入るのが常識なのか? それは初耳だな」


「そりゃ裸で入るのが普通でしょうけど……僕も男な訳ですし、貴女は女の人である訳ですよ。気を許した人になら肌をさらしても問題はないでしょうけど……」


「なら! ……なら問題は……」


 え、もしかしてもしかするのですか……? 据え膳なのですか!?


 少年は焦る気持ちを落ち着けられぬまま振り返ろうとすると……突然、それは本当に唐突な出来事だった。


 雷が落ちる様な、激しい瞬きと共に爆音。何かが空より落下してきた様な。


「ふははははは! 何処ぞにいるか勇者よ! 魔王たる予が相対しようぞ!!」


 少年にとって平和で平穏な日常になりつつあった日々は唐突に切り裂かれた。


…………○

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