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ノスフェラトゥとヴェアヴォルフ  作者: 周防涼白
ぶらり異世界小旅行編
56/59

~えぇー……まじかい~

おっっっっっっ久し振りです。

「なん……だと……?」


 此処にいる人達の口からは其れに類するような言葉が洩れていた。表情も暗い者が多い。


 自分探しの旅かよ……と少年は心の中で悪態をついた。


「勇者ゼロよ、其方が申す事に嘘偽りはないのだな……?」


「はい、私の母国語で聢とソウ書かれております」


 王様は小声で呟く何という事か、と。


 そして、有耶無耶な感じで緊急の集会の様なものは終わった。


…………○


 午後のメニューである魔法の訓練はなくなり、普段は午前のメニューである剣術の訓練が始まった。


 小隊が変わったのか先週までの人達とは顔触れが異なっていた。背の高い女騎士が一歩前に出て宣言。


「ゼロよ、今日から私が剣の訓練を担当する。ビシバシ鍛えるから心得ておけ!」


 あーはいはい。またフルボッコにされるんだろ、分かってるから。少年は諦めムードに入っていた。が、少年の予想とは違う結果になった。


 女騎士は何処迄も実直であり不当な暴力や不正な行いをなによりも嫌っていた。だから、今迄の新人弄りの様な事は起らなかった。


 女騎士と少年は手合わせをしたのだが、実力の差は歴然としていて、少年は圧倒的なまでに打ちのめされた。


 え、なんなの此の人、滅茶苦茶強いんですけど。勇者要らなくね。少年は思った。




 女騎士は名誉貴族の出で、余り良い印象は抱かれていなかった。しかし、彼女は一向(ひたすら)努力を続け、周りからの嫌がらせを耐えに耐え抜き、今の地位を手に入れた。


 近衛師団団長である。


 近衛騎士の中の最高位で、他の近衛兵や普通の兵士を育成する立場である。ただ、その地位に就いた事で、男気がよりなくなってしまった。


 男尊女卑が根付く残る此の世界に於いて、女が(おとこ)より強いと言う事は、余り喜ばしい事ではない。


 また、血筋だけの名許(ばか)り貴族からの嫌がらせは絶えず、彼女を団長から引き摺り落とし、新しい貴族の男を団長に引き継がせようという計画さえもあった。



 二人揃って芝生の上に倒れ込む。ゼロは息も絶え絶えという状況で、彼女はまだまだ余裕な表情で、という違いはあるが。


 彼女は歓喜していた。まだまだ型は荒いが爆発的な成長力で、一歩ずつ確実に強くなる少年が居る事に。


 自分と肩を並べ得る人が近くに居る事に。他の兵士とは違い、より高みを目指そうとしている少年に。ボコボコにしても粘り強く挑戦し続ける少年に。私の事を嫌うでもなく尊敬のような眼差しを送ってくる少年に、彼女は歓喜していた。




 少年が異世界召喚させられた国は、幸か不幸か、ある意味平和な国であった。魔王が住む土地とはかけ離れていて、魔物による被害があまりなかった。


 また臨海部に位置することや、周りが山に囲まれているお陰で他国から攻められることも殆どなかった。訓練したとしても実践する場がない、なら厳しい訓練をする意味などないのではなかろうか……兵士はそう思い、手を抜くようになった。


其の所為で兵士達はあまりヤル気がなかった。毎日特訓させられるだけでは色々と溜まるものがあるのであろう。其の様な意味でも? 少年も溜まっていた。主に下の話だが。


 一陣の風が吹き、少年に彼女の香りが届けられる。訓練によって身体が火照ったのか汗のにおいと女特有の甘ったるいニオイ。


 少年はクラッときた。

 ついでムラッときた。


 やや、此れは拙いですよ。此方に来てからソーユーことしていないから、溜まりに溜まっているのですよ。


 少年がふと視線を彼女に移すと、真っ白な首筋や其処から続く鎖骨、そして、胸の膨らみに眼が離せなくなった。


 より状況が悪化した! Oh my! クールになれ……そう、素数でも数えてだな……。素数とは孤独な数字。素数を数えていると俺も一人だと感じられ……ない?! 彼女は直ぐ傍に居る!!


 少年は視線を空に移し、必死に素数を脳内で唱え始める。だが、気付けば視線がまた吸い寄せられる。


 こ、此れが万乳引力の法則ってか、流石、乳トン先生だぜ。モロミセよりチラ見せ、またはギリギリ見えないとかの方がそそるのですよ。


 だから、襟元から伺えそうな白い双丘に釘つけされてしまう。ポッチが見えそうで見えないのが一番そそられる。


「あー、そのだなゼロよ」


「は、はいっ?!」


 突然、名前を呼ばれて声が裏返ってしまう。慌てまくりだよ、もぉ。視線を慌てて空に移すがもう遅い、絶対に気付かれている。


「女、という生き物はだな、以外と人の視線には敏感なのだよ覚えておきたまえ」


「……はい」


「ま、まぁ! 私も、其の様な眼で見られているのは嬉しくない訳ではないのだがな……ごにょごにょ」


 ちらりと彼女の横顔を覗けば、紅く染めながらうなじの辺りをポリポリと掻く彼女。どうやら満更でもなさそうな……雰囲気であるぅ?


「えっとぉ? そのぉ……」


「…………」


「…………」


 気まずい、嬉しい様な恥ずかしい様な……何ですかい此の初々しい感じの反応は。ラブコメの神様でも降臨しているんですか?


 矢張りと言うのか、またもや彼女へ視線が吸い寄せられてしまう。気付けば彼女と視線が交錯する。彼女の瞳はうるうると潤っていてなんつーの? もう、正直たまりませんっ。


「ううん! さぁゼロ様、次は楽しい楽しい! 座学の時間ですわよ。早くいらっしゃいな」


 突然、咳払いとともに甘い一時の終了が宣言される。ジーザス! もっとラブラブコメコメしたいです。


 てか、先生(アンタ)、現れるタイミングが良過ぎないかい、狙ってたの待ち伏せてたの?


 座学は平時よりも長く続き、何故か夕飯を抜きにされて、其のまま部屋に直行することになった。


…………○

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