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「俺、勇者辞めるわ」
訓練という名の扱きが一週間程続いたある日の夜、オレは唐突に告げた。
「え、なんて?」
思わず、俺は問い返してしまう。だってそうだろ。行成、自分の予想を超える事を言われては。
「なんかさぁ、ユウシャサマーって感じがしないじゃん。まるで、物みたいに扱われてない俺ら」
そう言われてみればソウ感じてしまうかもしれないが、だからと言って、ソウであるとは断定出来ない。
「国を、世界を救ってもらうべく、過酷な訓練になってるんじゃない? 折角召喚した勇者が弱くて魔王に返り討ちに遭いました、じゃとんだ笑い話だしさ」
「そーなんだろーけどさー……」
オレは何やら考え込むように俯いてしまう。
「なぁ、オレも勇者を辞めて一緒に世界を周らないか? 知らない土地、未知の生物、新しい種族との出逢い……考えるだけで胸熱だろ? ゲームの世界に来たようなもんなんだからさ!」
確かに魔王なんて知ったことかって言って、異世界ぶらり旅したいさ。だけど。
「だけど、此の世界の人達は俺に、勇者に縋っている訳だろ。其れを蔑ろに出来ないと言うか、申し訳ないと言うか、なんか、最後までやり遂げたい? のかな。仕事投げ出さずに」
「あぁ~俺はソーユー人間だったなぁ! 忘れてたよ。俺がオレたる所以は其処なんだよな、うん」
「そうだろ? オレ。ほら、断らない男」
「断れ(・)ない男、だろ」
と、オレは不敵な笑みを浮かべた。俺も釣られて笑みが零れる。
会話がなく、窓を叩く雨の音だけが木霊する。
「うん、此れ以上説得しても無駄だろうし、最後に一ついいかな?」
「どうぞ」
俺はどっしりと構える。オレは一つ深呼吸。
「シンクロしよう」
「えっ///」
「なんで其処で恥じらう必要がある?!」
「いや……その、貴方と合体したい、みたいな事言われましたらね……わはは」
「んな訳ねぇだろ! ほら手ーだせ! 手!」
と、強引に俺の手を引っ張るオレ。
「あ///」
「そ~ゆ~のいらないから!」
「分かったよ。ノリ悪いなオレ」
「よし分かった黙れ。直ぐさま口を閉じろ!」
「了解」
手と手が触れ合う。まるで鏡に写っているかのようだ。
「前回の分では中途半端だったから、多分今回で完璧に分け合える筈だよ」
「おけおけ、よろしく頼んます」
「ほいっと、DDD」
白い闇に堕ちて行く。
身体の中から何かが抜けて行く。
魔法を行使する時の、魔力が抜けるのに似ている。
だけど、なんか違うかも。
なんだろうね、何か大切なモノが喪失して行く気がする。
そうして……俺の記憶は途切れた。
…………○
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