~俺とオレ~
「だからさ、オレは俺なんだからさ、ちょっくら一つにでもなって互いにタガイを共有しようじゃないか、っていう提案を出してみる」
元は一つなんだし、とオレは言う。
「オレ(オマエ)は俺に記憶を与え、俺はオレ(オマエ)に能力を与える。ギブアンドテイクの関係だろ? 互いに互いを補い合う。素晴らしい人間愛だと思わないかね」
「確かに俺としては有難い話であるが、オレ(オマエ)なら無理矢理でも記憶とかを奪えたんじゃないのか?」
「ほら、其処はお互い笑顔に成れる方が嬉しいじゃん? 後々になってから、あん時こーすりゃ良かった、なんて思いたくないし」
「さいですか」
「さよーでございますよー」
多次元の来訪者は如何やら俺に極めて近い人間らしかった。それもそうか、俺はオレなんだしな。
「……てかさ、多次元の自分に出遭ったら因果律だとか運命の強制力だとかに排斥されたりしないのかね」
「其処は、ほら、ご都合主義ですから」
オレはニシシと笑った。
オレの提案はとても魅力的である。もう一度、あの時の力を扱えるようになるのだから。
聞いてた感じ、デメリットはなさそうだし、断る必要はなさそうだ。
「あぁ、其の提案に賛成だわ。俺は記憶を、オレは能力を。そうだな?」
「イエス! 話が分かる人で助かるよオレ」
「俺はオレなんだろ? なら俺の事をオレが一番分かっているんじゃないのかい」
そう言って、何方ともなく笑った。
「それじゃあ、お願いしますわ」
「オケオケ。それじゃあ、手ーだして。両手」
言われた通り差し出すと、オレも同じようにする。
手と手が重なる。まるで鏡に写っているかのようだ。
「そんじゃまか」オレはそう言うと、俺の意識は遠くなっていった。
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