~俺の住む町~
この国は腐っていやがる。金がものを言う世の中だ。
国の頂上には金さえあればなることが出来る。
犯罪を犯したとしても金さえあれば解決出来る。
盗みをしても金さえされば揉み消すことが出来る。
人を殺したとしても金さえあれば有耶無耶に出来る。
金さえかれば権力を得、権力さえあれば金を得られる。
この国は最低だ。
この国は屑だ。決してこの国を許さない。
俺は視界の端に朝日を感じとると布団を蹴飛ばした。
「おはよう」
別に誰かに言ったわけではない。朝は『おはよう』、昼は『こんにちは』、夜は『こんばんは』。食事のときは『いただきます』で始まり『ごちそうさま』で結ぶ。あいさつは重要だ。
なんて、今のこの国ではあまり意味をなさないだろうがな。
俺の住んでいる町はいわゆるベッドタウンだ。政令指定都市を隣りに控える比較的田舎の町だ。
マンションはほとんどなくて、みんな一軒家に住んでいる。
娯楽施設は小さなカラオケ屋さんとミニシアター、一昔前に流行ったボーリング場くらいかな。
スーパーとか本屋さんも自転車ですぐだし。コンビニは歩いて数分の距離。
不便なんてものはなく住めば都だよ、ホント。
この地方のどの家庭にもクーラーはない。あるのは扇風機と暖房。夏は比較的涼しくて、冬は比較的寒い。まぁ我慢するしかないのだろうけど。
それが、俺の住む町。平和だ。
たとえ、仮初めのものだとしても。
きっと、すがるしか出来ないのだろう。
テレビの事件がこの町で起きない、という保証なんてどこにもない。
でも、起きるはずがないと思っている。
それこそ宝くじを当ててしまうくらいの確率だろう、と楽観視している。
誰もが疑心暗鬼になっているよりは良いだろうけども、少しばかり不安だ。
もし災厄がふりかかったとしたら。一体誰が自分を助けてくれるのだろうか。
吸血鬼が襲って来るのも、狼人間が襲ってくるのも、超能力者が襲ってくるのも。
天文学的数字だけでしかないだろうけど、絶対に来ないなんてことはない。
ありえない、なんてことはありえないのだから。