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〜なんだい今際の時みたいにさ〜

3000文字程度だと思います。

 やられたっ……と思う間も無く、影によって足を雁字搦めにされてしまう。一瞬のうちにして、右足は再起不能となった。


 影が太腿まで伸び、網タイツのようにも見えなくもない。少し、いや、かなり不吉すぎる。だが男だ、みたいな。



 即断即決。俺は右脚を斬り捨てた。手刀によって。脚の付け根から膝までの間を真っ二つ。飛び散る鮮血。立ち込める熱気、生臭さ。


 頭の中で火花が散ったかのような痛み。すぐに再生するはずだから、少しの辛抱。しかし痛い。本当に辛い。


 俺の口から切なげな吐息が漏れる。別に変な意味とかではなくて。




 にゅるりと、パスタマシーンから麺が這い出るように脚が生えてきた。キモい、正直キモい。表面が組織液かなにかでテカっていて、拍車をかけてキモい。


 だが、何時も通りの俺の脚だった。




 徐々に、立ち籠めていた土煙は霧散していく。映画とかで攻撃された悪役が姿を現すように。大抵、この場合の悪役は無傷であるだろう。


 そして、主人公ズはこう言うんだ「なん……だと……?!」と、焦燥した感じで。


 さて、今回は……先生の場合はどうだろうか。


「くぅ、こんな……こんな事が!!」


 満身創痍、先生の身体はボロボロだった。俺のヤクザキックの所為で? 違う。先生は内側から身体を破壊され続けているんだ。


 お腹には風穴が開き、向こうの景色が見える……建物とかはなにもないんだけれども。


 左腕は、かろうじて皮一枚でくっついているように見える。断続的に血が流れている。恢復しようとするも、俺の先程の攻撃によって阻害されているのだと思う。


「一体、何をしたっ!」先生は叫んだ。怨み憎しみその他諸々、負の感情を籠めて。


「それは、いちいち説明しなければならないことなのですか」俺は聞き返す。だって、もう、きっと、全てが終わるのだから。


「余裕綽々な態度をとっていた先生は何処へいったんですか」皮肉を込めてそう言った。


「くそったれ!」


 そう、先生が吐き捨てるのと同時に、右腕で殴るようなモーションをしてきた。すると、拳の延長線上には影が伸びてきた。


 俺は、あえて避けない。一瞬、先生がニヤリと笑った気がした。「勝った! 第三部完!」とか思っているに違いない。


 もし仮に、俺が殺られたとして、此の世から消えたのなら、一体誰が俺の後釜になるのかな、なんて思った。誰かが誰かの代わりになんて成れる筈もないのに。


 無限ロケットパンチみたいなのが、あと少しで俺に到達しそうになった時。


 先生の影は雲散霧消する。


 茫然自失の体となった先生は「なん……だと……?」と口が動いていた。俺はすぐさま詰め寄り、左腕を引き千切った。


「********」


 言葉にならない叫び声。空気を劈くような悲鳴。なんだか、酷く憐れに思えてくる所為か、まるで俺が悪者になったような錯覚に陥りかねない。


 次に右腕。手刀で一閃すると、しゃらんという音が出てきそうな程にあっさりと、簡単に肉を引き裂いた。


 再度、耳障りな絶叫を聞くのかと思ったが、良い意味で予想は裏切られ、見れば歯を喰い縛り脂汗を流すのが居た。


「なん……で…………?」

「知るか」


 地面を踏み鳴らすと、影で雁字搦めにする。


「先生はもう終わるのですから、説明など無意味ですよね。最期の一言とかを訊くつもりないですから」


 そして、手を翳そうとして……。バチィッ! と電気に触れてしまったかのような感覚。それ以上は侵入出来ない不可侵の結界。


 絶対領域(アブソリュート・テリトリー)だと?! 何処にこんな力を隠していたんだ、コイツは。


「うぉぉぉおおおぉぉおぉお!」


 遠吠えのような、雄叫び。あまりに荒々しくも美しいそんな怒声。先生は渾身の力を込めてなのか、結界を飛ばしてきた。


 結界、言うなれば途轍もない程堅い壁だ。それが凄まじき速さで潰しにかかってきた。地面に叩きつけられた蛙の如く、へばりついてしまった。


「しゃら、くさい!」


 境界に両の手をついて、力を込める。所詮、心の壁はその人の精神状態に左右されてしまうのだから、今の先生の、心の状況では大したモノは作れない。


 パリンと、薄いガラスの膜を割ったような音が響き渡る。


 吹き飛ばされた距離を詰める。


 先生へ眼を向ける、と。


 そこには、黒の卵が鎮座していた。


…………○


 少年に先生と呼ばれている女は、一際大きな叫び声を上げた。腹の底から込み上げられたソレは少年の鼓膜をビリリと震わせた。


 その咆哮と同時に、女は身体が少し軽くなったような気がした。絶対領域の所為である。ソレは心の壁、他者との境界。不可侵の一線。


 精神エネルギーを消費することで展開することが出来る。しかし、その使用者の心理に大きく左右される為、不発であったり、大した防御力もないまま作られてしまうこともある。


 女は展開を広げて行き、そのまま押しつぶさんばかりの勢いで、壁は少年に迫る。果たして……少年は両手を着き、しゃらくさいと言って、容易く破壊してみせた。


 しかし、手を着き破壊する迄の間に、結界によって少年と女との距離は広がっていた。少年は破壊する際に、意識が一瞬、女から離れた。


 たった、そのほんの一刹那の間で、女の身に変化が訪れる。何時の間にか、女を中心とした半径五メートルほどの円が地面に画かれていた。


 その円は回転を始めた。反時計回りに。イメージとしてはフラフープが近いかもしれない。


 円は縮小し始めた。円周どんどん小さくなり、やがて、直径二メートルほどで収縮は止まった。回転運動は未だ続いている。


 円は空へ向かって延びた。円柱のようである。回転運動は未だ続いている。


 円柱はずっと続いていた横回転に加えて縦にも動き始め、速度はどんどん上昇して行き、球体になった。


 球体は回り続けている。


 少年の視界に黒の卵が入る。困惑。少年は驚く。なんだあれは、と。


 確かに、先程まで女の居た位置にまるで違う黒の球体が出現していたのなら、きっと驚くであろう。


 少年は空いた距離を詰める。至近距離から観察してみれば、ソレが超高速回転していることに気が付く。


 少年は恐る恐ると、試しに触れてみることにした。右手の指が接近して行き、黒と接触した途端。


 少年は指に熱を感じた。急いで指先を確認してみれば、触れた部分の肉が持って行かれていた。


 そして思った。未確認物体を無闇やたらに触るものではないと。少し……いや、かなり愚かな行動だったなと。


 少年は考える。触れる事の出来ない相手を一体如何やって滅せばよいのだろうかと。考える。


 そして、とある少年漫画を思い出す。究極完全生命体に対して、内的営力を利用していたことを。


 その漫画では、ラスボス的存在を偶然の噴火によって宇宙へ飛ばしてしまったのである。ばんなそかな。


 少年と黒の卵との距離は僅か一メートルもない。ただ其処に居るだけでも、頬には風圧で舞い上げられた小石が当たる。


 少年は眼を閉じ深く息を吐く。肺にある空気を押し出すように。少年は思う。様々な出来事を、今迄の生活を。


 つまらない退屈だ……嫌な環境だと思っていた、中学生の頃までは。彼女に逢って沢山変わった。カノジョに会って色々代わった。


 先生(かのじょ)に遭って全てが換わる。あぁ(仮)(かのじょ)もいたな、と。


 少年は最期にそう思ったのである。

終わらせる終わらせると言っておきながら、まるで終わらない。


ぶれまくりですよね……(遠い目

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