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〜ただいまー……っとなんだこりゃ?!〜

 何時の間にか時は過ぎていた。髪の毛は肩甲骨の辺りまで伸びていた。どれほどの時間が経ったのだろうか。


 分からない。けれど、然して問題でもあるまい。そのようなことは些末なことだ。



 少年漫画で主人公は時間の流れが遅いところで特訓するのはおかしな話ではないだろう。残念ながら俺は主人公にはなれないけれど。


 さて、準備は整った。俺は、内包している凡そ百万もの魂に語りかけ続けてきた。



 気が遠くなる程の時間がかかった。錯乱している人……魂と対談するのは骨が折れた。だけど、全員と話し終えた。


 そして、これから全てを終わらせる。


 これから起こるのは、終わりへと向かう始まりの物語。誰も幸せになることはない悲しいお話。


 俺が幕を下ろさねばならない。


 スライド式の鍵を外すように指を動かす。白の空間に亀裂が走る。そこからは俺達の町だった場所が覘く。


 きっと、もう二度とここへ帰ることは出来ない。少しだけ邪な考えが浮上する。


 魂渡し……カノジョが言った……は皆と繋がることが出来る力。肉体という縛りを捨てて誰かとコネクトする能力。


 それが在ればそれさえ在るのであれば、この白の世界で孤独などを感じずに過ごすことが出来よう。


 彼女ともカノジョとも何時迄も話すことが出来よう。


 だけど。それは。それは、禁止された戯れのように、やってはいけないことなのだと思う。


 人の心を弄ぶような、禁忌めいたことのように感じられる。飽く迄も俺が勝手にそう思っただけに過ぎないのだけれど。


 だけど、一度そう考えてしまった後はずっと心に引っ掛かったようなモヤモヤとした後ろめたい気持ちになった。


 だから、全てを終わらせて……。


 拳を作る。力強く握り締めた所為か血の気が曳いて白っぽくなった。もう、迷わない。


 俺は亀裂に向かって歩を進めた。


…………○


 眼の前に広がる景色は荒廃した町並み。ゴーストタウンとはこのことなのだろうか。なんか違う気がする。


所々に建物の残骸がある。


「やあ、君」


 そこに居たのは何時かの教育実習生だった。体感ではもう数カ月は経っていた。なのに、先生のその姿は記憶の中のままだった。


 まるで代わり映えのない風だった。あの時のまま……つまりはすっぽんぽんだ。お巡りさんこちらです。って居ないのか。


「お久し振りです先生。……先生は相変わらずですね」


 せめて服を着るとかさぁ、なんか出来なかったのかね。ほんの数分の間の出来事ではなかろう。俺がいなくなったのは。


「ふむ、相変わらずの続きが気になる物言いだね。相変わらず……なんなのかな?」


「そいつぁご想像にお任せ致しますよ。俺……すみません僕という一人称は嫌いなので、俺でもいいですか?」


「別に気にしないけど……変に律儀なのだね君は。それと、良い意味で受け取っておくよ」


「ありがとうございます、先生」


 小休止、会話が途切れる。俺の一人称の振りをしておいて、結局なにも言う訳ではなかった。なんか不発弾みたいでカッコ悪いな。


「さて、一体全体何が起こったのかは全く見当もつかないけれど、前回とは違うようだね?」先生は言った。


 前回。この場所で争って俺が負けたことを指しているのだろう。勝ちを確信している人に現れる特有の驕りと言うのか余裕と言うのか、そんな雰囲気 があった。


「そう、ですね。俺は……いえ、俺達(・・)は決着をつけるべくして此処に来ました。覚悟は出来ています」


 覚悟の有無だけで人は変わる。それが大きな事柄であればあるほど、ね。


「決着、ね。残念だけど結末は既に分かっているんじゃないのかな? 以前と同様に私が勝って、君が負ける。眼に見えているじゃないか?」


 確かに自分よりも強い相手に対して、同じ戦法を用いたところで勝てるとは限らない。寧ろパターンを読まれ、呆気なくやられてしまうかもしれない。


 だけど。


「ですが必ずしもそうなるとは思っていません。俺が圧勝する可能性だってあるんですよ?」


 同じステータスでなければ。より強い力を以てして戦いに挑むのであれば戦況は変わるであろう。


「ふふ、言ってなさいな」


「ええ、ほざいてますよ」


 緊張感の欠ける会話の応酬をしていた気がしないでもないが、なんだかんだ言って、まぁそれなりに楽しいようにも感じられた。


 初めて出遭った時には嫌悪感しか抱かなかったのにも関わらず。なんだろうね。なにがあったのだろうかね。


「ソー言えば先生。俺のことをずっと待ち構えていたのですか? 数カ月の間、其処から動いていなかったように思えるのですが……」


「うん? 君は何を言っているのかな? 数カ月もなにもまだ数分も経っていないよ」


 どうやらそうらしい。何カ月にも及んだ白の空間での出来事は、此方……現実世界ではほんの少しで終わってしまうことだったらしい。


 まるで俺だけに見ることが許された夢のようにも思えるけれど、何処か違うような気もする。


 罪の意識が具現化……よりかビジョン、イメージとなって、俺に夢を見せたのかもしれない。


 この経験は罪による罰なのだとしても、誰かによる応援(エール)なのだとしても、俺を立ち止まることなく思考を続けさせることとなった。

主人公、ブレすぎ。

もっと緊張感を持つとかさぁあってもいいんじゃないかな?

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