〜そうか、そういうことだったのか……いや本当はなに一つ理解していないのだけど〜
「それは君が呑み込んだ人達との関係。言うなれば『魂の共有』かね」
厨二病だった。
「魂渡しとかでもいいかもね?」
え? ああうん。そうだね……。
如何しよう、カノジョを直視するのが途轍もなく難しく感じる。だって技名を考えている辺りとか、もう、ねぇ。
「なんだいその眼は? まあいいや。これで君は、君の能力を十全に使えるはずだよ。どんな気持ちだい? 百万もの人間と繋がることは」
……どっかのダークファンタジー漫画のようだなこれは。俺は擬似的な太陽でも創成出来るんですか? 出来ちゃいそうで怖いわ。
カノジョがいやらしくニヤリと笑った。一体なんだってんだ。俺に此の世の理でも見せてくれるのですか? 対価になにかもっていかれるんですか?
「さて、これでもうワタシがすることはなくなったね。役目を終えた脇役は消えるとしますよ」
そう、カノジョは言って背を向けた。あさっさりと、また明日会えるくらいの気軽さで。
なぁ、ちょっと待ってや。少し話さないか?
「……いや、ワタシからはもう話すことはないね」カノジョは振り返ることなく呟く。
そう……かい。
「…………」
今更語り合うことなんかないのかもしれないけれど、一つ言わせてくれ。
俺は深く息を吸い込んだ。
ありがとう。
別に大きな声で言った訳ではない。ただ出来得る限り全ての思いを乗せて、届いてほしいと願いながら。
「…………さよならだ」
あぁまたな。
カノジョの声が震えていたのは、気のせいだろう。まるで今際の際の台詞みたいなのもきっと勘違いだろう。
カノジョは足先から徐々に薄れていく。白い絵の具で上書きするように消えていく。
「そういえば、もう一つプレゼントがあったんだったよ。ほら受け取りな」
胸から下がなくなったカノジョは頭だけをこちらに向けてそう言った。自然とカノジョの瞳へ視線が吸い寄せられる。
「DDD」
ガツンと強い衝撃が頭にきた。鈍器で殴られたかのような鈍い痛みだ。……次から次へとカノジョの記憶が流れ込んでくる。
「これでワタシは君の中で永遠に……」
そうしてカノジョは、言葉を言い終える前に白の世界と同化した。残されたのは、俺ただ一人……独り?
…………○
俺は孤独になってしまった。
孤高と孤独は違うと本で読んだ気がする。孤高は他の人達とは違い高みで一人佇んでいて、孤独はただの寂しい人。そんなイメージ。
俺は孤独になってしまった。
小学校・中学校では気取って孤高の風をしていた。見た眼の所為で虐められていたから。
俺は孤高であるから寂しくなんかない。俺は高尚な人間なんだと自分に言い聞かせてきた。
高校に入学して彼女に出逢った。カノジョにも出会った。運命だとかさだめだとかそんな言葉で表せるはずもなく。
俺は……俺達は出逢うべくして出逢い、出遭うべくして出遭ったのだ。そこにはソウイウモノによる強制力が介入されていたのかもしれない。
ただの平凡な男子高校生と女子高校生の日常は交ざったのだ。偶々同じ時期の偶々同じ高校の偶々同じ学級で。
二人の女生徒との邂逅は俺の人生を大いに変えることとなった。良い意味でも、悪い意味でも。
良い意味を挙げるとするのならば、人に優しくなれたと思う。
子どもの頃……と言ってもまだ高校生の身分ではあるが……は周りの人間は全て敵だと思った。
俺に対して攻撃や奇異な視線を送ってくる人間は敵だと思った。
今更になって思えてくるのは別に皆が皆、危害を加えにきた訳ではなかったのかな、とかそんなことを思った。
本当に今更だけど、ね。
そんな捻くれ坊やを温かく包み込んでくれたような二人。あの二人には本当に感謝しきれない……のに。
その二人はもういない。
意識を内側へ向けてみると、カノジョの意志がより明確になった。周りを見るような感じで周囲を見渡すと、町の人達と繋がった。
俺は一人になってしまった。けれど、独りではなかったようだ。俺という一つの意識は、皆という全体の意識を統合している。
だから、俺は皆と共に生きている。何時も常に誰かの心と触れ合っている。
なぁ。君は誰だ。
そうして俺は今もまた誰か話しかける。
なんか……もうダメっすわ。
早く終われぇ。




