〜そして俺は決意した〜
カノジョは眼を閉じた。ゆっくりと息を吸い込み、ふっと一息で吐き出した。
「君に期待しているからさ、カマちゃん」
カノジョは眼を開きながら、そうのたまった。
「いや、違うな。より正確に言うならば、期待しているんじゃない。君ならやってくれると信用して信頼して信じているんだよ」
信じる? アホ抜かせ。こんな俺を一体誰が信じるっていうんだ。
「だから、私が、君を、信じている。君は些か自分を卑下し過ぎているんじゃないかな?」
俺は人から信頼されるような人間ではない。現にこうして自分の過ちを見て見ぬ振りしている。
「確かにそうかもしれない」
ほら、やっぱり……。
「だけど、君は良い意味でも悪い意味でも口先だけなんだ。面倒だ面倒だと言いつつ、君はしっかりとすべきことは成し遂げているではないか。どんな物事においても、一歩離れた地点から観察してより良い解決策を導こうとしていていたではないか」
逆に君は俺を買いかぶり過ぎだ。俺はただ後で文句を言われるのが嫌なだけだ。結果的にそう見えてしまったのであれば誤解でしかないな。
「ふむ、言葉であーだこーだ語っても無意味なようだな。どれ、もう一度……」
そう言って、カノジョは手を振りかざす。
「DDD」
ふとDDDとはなんの略なのか気になった。一瞬、とあるギャルゲーのタイトルが思い浮かんだような……いや、気のせいだろう。
気付くと白の空間にいた。場所が変わっておらず、なんだ不発か、と思ったがどうやら違うらしい。カノジョはいなかった。
代わりに……と言ってあれだが……彼女がいた。
「し〜ろちゃん」
久方振りだね、君。と言っても数時間程度なのだろうかね?
彼女はふわりとした微笑をこちらに向けていた。
ますますDDDというモノが分からなくなった。先程、俺に使われた時には過去を見せられたようなのだけれど、今回のは違うようだ。
今、彼女と話すのはとても辛い。どの面下げて会えばいいのか分からない。
「白ちゃんは……」
ん?
「白ちゃんは、アイツをやっつけたの?」
……いや、倒してないよ。
アイツとは言わずもがな先生……教育実習生ことであろう。
「如何して?」
如何してと言われても……ただ単純に俺よりも先生の方がより強かったからじゃないかな。弱肉強食。俺は弱かったから喰べられちゃったのかな。
「……白ちゃんはそれでいいの?」彼女は寂しそうな顔をした。
…………どうだろうね。
「私たちの日常を壊されたんだよ? 悔しくないの? 私は白ちゃんが取り込まれたと思った時、アイツをブッ殺してやろうとさえ決意したよ」
悔しくないのかどうかと問われたならば、悔しいよ。真向からぶつかって負けちゃんたんだしさ。
話していると、恥ずかしくなってきた。言い訳をしているみたいで。俺は俯き、彼女を視界から外した。
彼女、ブッ殺すとか……軽く狂気を感じるよ。
「白ちゃん」
彼女は俺に近寄り、そして抱き寄せた。暖かな気持ちに包まれる。
ふわりと香る彼女の香り。身体の芯からポカポカと温められる気がした。
それにですね、おにゃのこの柔らかい部分がですね、顔にですね、当たっているのですよ。……なんか余計に恥ずかしくなってきたんですけど。
当ててんのよ! とか言われたらキュン死にしてしまいそうだわ。
「白ちゃん。私はアイツを許せない。私達の町を、友達を、日々を、全て奪われたんだよ」
彼女は至って真面目だった。なんか……罪悪感が芽生えてきた。
確かに先生は俺達から色々なモノを奪い、蹂躙したかもしれない。だけど、それは天災のようなモノで仕方がなかったのかもしれないぜ。
「そんな理由で赦せるはずがない!」
今迄にない彼女の叫びだった。
「私は……私は!!」
彼女がどれほど怒っているのかが伝わってきた。俺は……。
……俺は彼女の背中に手を回した。
「……白ちゃん?」
そうだな。俺も赦せない。だけどさ、あんな風やられて、それで悔しい悔しいって言ってたら負け犬の遠吠えみたいじゃん。なんかカッコ悪いかなって思ってた。
「うん」
だが、そんなことを考えて逃げている俺の方がよっぽどみっともないな。世間体ばかり気にしてさ、笑いもんだよ。ははは。
俺は彼女から身体を離し、真直ぐ見つめた。彼女は少し怪訝そうな顔をする。
「白ちゃん……?」
俺は先生を……アイツをぶっ飛ばしてくる!!
「……うん!」
周防涼白さんの次回作にご期待下さい!
みたいにはなりませんよねー。
書いてみてから、あれ? 思っていたことと全然違うんだけど……と思うことの連続です。
後書きで、すぐに終わらせるみたいなことを書いたのは何時頃でしたかな?




