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相方は座敷ワラシ!  作者: 沙φ亜竜
第5章 清らかな歌声響く昼下がり
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-4-

「あら~、なかなかいい雰囲気じゃない~」

「うん、そうだね。ぼくもそう思うよ」(パシャリ)

「見て見て~、このテーブルクロスも綺麗だわ~。可愛い刺繍が入ってる♪」

「うんうん、いいね~」(パシャリ)

「お父さん、ウェイトレスさんも可愛いわよ、撮っておいたらどう~?」

「おお~、ほんとだ~。では失礼して……」(パシャリ)

「ねぇねぇ、お母さん。好きなの食べていいの~?」

「ええ、どうぞ」

「わ~い、なに食べよっかなぁ~♪」


 はしゃいでいる夫婦と、母親に手をつながれた女の子。

 観光地で見かけるような情景を連想させる三名のお客さんたちを、ウェイトレス姿の水野さんが案内する。

 いきなりカメラを向けられて、さすがに動揺しているようだったけど。


「……ねぇねぇ、あれって長波さんのご家族よね? そっくりだし」


 調理場を出て隅っこから様子を見ていたあたしに、笹峰さんが話しかけてくる。

 彼女は一昨日まで裁縫部隊として準備に大忙しだったけど、春祭当日になっても雑用係としていろいろと手伝っているのだ。


「う……。そっくりなんて言わないで……。恥ずかしいわ」

「いい人たちですのに……」


 あたしの、うめき声とも言えるようなつぶやきに、笑ちゃんが口を挟む。


「うんうん、仲よさそうだよね」

「そりゃ確かに、仲はいいけどさ……。あのはしゃぎっぷりは、どうなのよ……」


 そんな声を上げるあたしの苦悩など知るよしもなく、三人は席に着いた。


「イベントだもの、いいじゃない。……あっ、そろそろ料理の準備もできたみたいね」

「え? 料理の準備?」


 まだ注文を聞いてもいないのに?

 怪訝に思って訊き返そうとしたとき。


「あの……うちの香紀がこのクラスのはずなんですけど、もしいたら呼んできてくれないかしら?」


 お母さんが水野さんに尋ねる声が聞こえてきた。


「ぎゃっ」


 あたしは反射的に逃げようとしたのだけど。


「ほらほら、お呼びだよ! 行ってきなさい!」

「そうですの。行きましょうですの!」


 笹峰さんと笑ちゃんに背中を押され、あたしは家族のもとへと駆り出されるのだった。



 ☆☆☆☆☆



「あっ、香紀! 笑ちゃんも! ほらほら、こっちにいらっしゃい!」


 手招きするお母さんと、笑顔のままカメラを構えているお父さん、背が低いので足をぶらぶらさせながらメニューを見ているお姉ちゃん。

 あたしは及び腰になりながらも、どうにか引きつった笑みを浮かべて、三人の前まで来た。

 その横に笑ちゃんも並ぶ。


「おお~、それがライブの衣装だね? 可愛いよ、香紀!」(パシャリ)


 構えたカメラであたしたちを撮影し始めるお父さん。


「ちょ……やめてよ、お父さん! 恥ずかしいってば!」


 クラスメイトの視線もある上、笹峰さんの作ってくれたこの衣装はスカート丈も短く、ひらひらのフリルがついた可愛いドレス風だった。

 二重の恥ずかしさに襲われながら、あたしは真っ赤になって止めようとしたのだけど、お父さんはまったく聞く耳を持たない。


 と、そんな明るい声の響くテーブルに、一旦調理場に戻っていた水野さんが姿を見せた。

 彼女は、料理を乗せたトレイを運んできてくれたようだ。

 そして水野さんは、そのトレイをお姉ちゃんの目の前に置いた。


 あ……あれって……。


「お子様には特別メニューとして、ミニお子様ランチをサービスしてるんです。どうぞ、召し上がれ」


 ニコッ。

 笑顔で話しかけるウェイトレス姿の水野さんに、お姉ちゃんが顔を伏せ、肩を震わせていた。


「わ……わたしはこれでも、高校生よ~!」


 憤慨して両手をバタバタと振りながら怒鳴り散らすお姉ちゃん。その様子はどう見ても、小学生としか思えないのだけど。

 確かにあたしは、彼女がお姉ちゃんだってことを、みんなに言っていなかった。

 学校で家族の話なんてほとんどしないから、あたしの家族構成なんて知らなかったのだ。


「あう、し……失礼しました……! そ……それでは、こちらはお下げ致しま――」


 慌てて謝罪の言葉を並べ、トレイを持ち上げようとする水野さんの手を、お姉ちゃんはそっとつかむ。


「待って。せっかく用意してくれたんだもの。見たところ小さな子供のお客さんもいないみたいだし、無駄になったら悪いわ。仕方がないから、食べてあげるわよ」


 落ち着いた様子を装いながら、そう言った。でも、あたしにはなんとなくわかっていた。


「そ……そうですか? それじゃあ……」


 水野さんが手を止めて、お姉ちゃんの目の前にトレイが戻されるやいなや、


「じゃ、いっただっきま~す♪」


 はしゃいだ声を上げて猛然とミニお子様ランチに文字どおりかぶりつく。

 ミニお子様ランチは、少量ずつたくさんの料理が可愛らしく盛りつけられているから、可愛いものが大好きなお姉ちゃんの好みにバッチリとヒットしていた。

 お姉ちゃんは、仕方なくではなく、本当に心の底から食べたかったのだ。


 水野さんや、調理場のほうからこちらをうかがうクラスメイトたちの前で、お姉ちゃんは満面の笑みを輝かせてお子様ランチを口に運ぶ。


 ああ、もう、こぼしまくってるよ! ううう、恥ずかしい……!


 そんなあたしの苦悩を、もちろんお姉ちゃんはまったく気にすることもなく、口の端にケチャップをくっつけながら一心不乱に食べ続けていた。


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