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金曜日になった。
丸一日かけて春祭の準備をする日ということで、クラスメイトたちも必死に作業を続けていた。
ある者は、机と椅子を並べ、テーブルクロスと座布団をセットする。
またある者は、教壇の一段高くなっている部分に塗装したベニヤ板を乗せ、それを固定して舞台を作る。
黒板や側壁の辺りには、天井付近から白い布を垂らし、見栄えがよくなるように装飾も施された。
装飾はカーテンにも加えられ、色とりどりの模様が目に映えるよう工夫を凝らしていた。
ようかい喫茶は妖怪の喫茶店ではなく、あくまでも陽気で爽快な喫茶店。
おどろおどろしい雰囲気なんて出してしまってはダメなのだ。
……小明麻さんとしては、妖怪たちが存在しやすいように、奇っ怪な紋様やらオブジェやらを準備したかったみたいだけど。
クラスメイトが一致団結して、お断り願ったのだ。
小明麻さんのおかげで、クラスの結束は強まったと言っても過言ではないだろう。
準備は、夜遅くまで続いた。
もちろんあたしは、笑ちゃんとふたりで、練習に励むよう言われていたのだけど。
これも練習の一環だから。そう言って喫茶店の準備の手伝いを買って出ていた。
結局どんな練習をしていいのかわからないままなのだから、少しでもクラスの手伝いをしないと悪い気がしたのだ。
あたしとともに、笑ちゃんも準備を手伝っている。
一度にたくさんの荷物を運ぼうとして盛大にすっ転び、持っていた荷物をぶちまけてしまった、お約束のような笑ちゃんにツッコミを入れたりしつつも、準備は順調に進んだ。
そして夜も更けてきた頃、ようやくあたしたちのクラスの出し物、ようかい喫茶の内装と外観が完成した。
教室の中には、お客さんを招く椅子とテーブルの他に、仕切りを作った後ろ側に簡単な調理場が設けられていた。
ほとんどの料理は下ごしらえなどの準備を終えてあるのだけど、中には鮮度が必要な食材もある。
そういった食材は明日の朝になってから運び込まれ、ここで簡単な調理が行われる予定になっている。
あたしは、クラスメイトと一緒に廊下へと出る。
入り口となるドアの横にある壁面には、「ようかい喫茶へようこそ!」の装飾文字がでかでかと描かれていた。
当然ながら壁に直接描くわけにはいかないため、大きな模造紙に文字や絵を描いて貼りつけてあるのだけど。
「うん、結構いい感じにできてるじゃない」
まだ準備が終わった段階、つまり本番はこれからだというのに、すでにあたしは満足感と達成感に包まれていた。
「みなさん、お疲れ様~! 今日はもう遅いから、後片付けは明日にしましょうか。早く帰ってゆっくり休みなさい。しっかり明日の決戦に備えるのよ!」
「お~~~~~っ!」
合戦に向かう騎馬隊のごときかけ声が、夜の闇に包まれた廊下にこだまする。
咲先生もクラスメイトのみんなも気合い入ってるな~。
あたしも、頑張らないと。
改めて気合いを入れ直す。
日曜日には、お母さんたちも来るって言ってたな~……。
そう考えると、恥ずかしくて逃げ出したい気持ちにさいなまれるのだけど。
でも、みんな期待してくれてるんだから、しっかりしなきゃ!
「笑ちゃん、一緒に頑張ろうね!」
あたしはぐっと力を込めたこぶしを握り、すぐそばにずっと寄り添ってくれていた笑ちゃんに微笑みかける。
「…………」
「あれ……? 笑ちゃん、どうしたの?」
笑ちゃんは、なぜだか不安げな表情を浮かべていた。
だけどそれも一瞬のことで、
「あ……うん、頑張るですの! イベントおべんと嬉しいな、ですの!」
そう言ってあたしと同じように両手で握りこぶしを作った笑ちゃんは、大きくはしゃいだ声を上げていた。




