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相方は座敷ワラシ!  作者: 沙φ亜竜
第4章 ようかい喫茶はいかがですか?
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-5-

 放課後になると、クラスメイトはみんな準備に大忙しとなった。

 今日は木曜日。明日は丸一日、春祭の準備の日だ。

 教壇の辺りに設置される舞台と喫茶店の内装の準備が、ようやく始められる。


 あたしは邪魔にならないように、いつもどおり練習のため教室から出た。

 ともあれ、やっぱりなにをどう練習していいのかわからない。

 とりあえず笑ちゃんとふたり、今日は校内を歩き回ってみよう。そう決めた。


 どこのクラスも、春祭の準備をしている。

 いろいろな出し物があるだろうし、お笑いライブのときに役立つなにかが得られるかもしれない。

 そんなことを考えながら、笑ちゃんとお喋りしながら歩くあたし。


 一時期は小明麻さんのせいで、あたしたち『のりわら』を教室まで見に来る人があとを絶たなかったけど、今ではもう、潮が引いたように落ち着いていた。

 たまに、生の「のりわらツッコミ」を見せて! なんていうわけのわからないお願いをされることもあったけど、こうやって歩いていても全然注目されたりはしなかった。

 どこのクラスも春祭の準備で頭がいっぱいだから、あたしたちなんかに構っている暇はないのだろう。


 クラスの出し物は、喫茶店やお化け屋敷といった定番のものから、「謎の洋館、恐怖の猫屋敷」といった、よくわからないものまで、バリエーション豊かだった。


 やっぱり喫茶店って多いんだな~。うちのクラス、大丈夫なのかな……とか。

 お化け屋敷って普通、生徒がお化けをやって怖がらせるよね? このクラス、お客さんがお化けになって、屋敷内の生徒を脅かすことのできるお化け屋敷、って書いてあるわ……とか。

 謎とか言っておきながら、猫が出てくるのをバラしてるし、洋館なのに猫屋敷って、ちょっとおかしいような……とか。


 いろいろと考えを巡らせながら、教室が並ぶ廊下を歩き回る。

 校舎の一階から三階まで、ひとしきり教室を巡り終えたあたしと笑ちゃんは、特別教室棟にも足を踏み入れた。


 春祭ではクラスの出し物がメインとなってはいるけど、部活ごとの出し物も許可されている。

 そういった部活の出し物も、見学しておいたほうがいいかな、と考えたのだ。


 ちなみに妖怪部はとくになにも出展しないらしい。

 まぁ、うちのクラスの出し物自体が、妖怪部主催みたいなものかもしれないけど。


 吹奏楽部は普通に演奏会か~。もうちょっとひねってほしいな……とか。

 軽音楽部はギターの叩き壊し大会か~。って、予算とか内容とか、いろんな意味で大丈夫なの……!? とか。

 書道部は羽根突き大会か~。……罰ゲームで顔に墨を塗るから? あれって、べつに書道じゃないじゃん……とか。


 特別教室棟でもあれこれと考えながら、あたしと笑ちゃんは歩き回る。

 やがて、とある一角からメロディーが流れてきた。


 ……これはギターと琴の音。それに、安らぎすら与えてくれるようなこの澄んだ声は、美野ちゃんだわ。


 美野ちゃんと委員長、そして友親くんが、この先で練習しているようだ。

 彼女たちは、どうやら視聴覚室を使って練習しているらしい。


 視聴覚室は防音壁になっているはずだけど、完全に音をシャットアウトできるほどの設備ではない。

 完全な防音設備にするまでの費用は、視聴覚室に充てられなかったのだろう。

 新しい学校で設備も整っているほうだとは思うけど、それでもごく普通の市立中学校なのだから、当然といえば当然なのかもしれない。


「う~ん、やっぱり美野ちゃん、いい声だな~。春祭で聴いてくれる人も、きっと大満足だよね。委員長の琴と友親くんのギターもいい感じ。友親くんはさすがに弾き慣れてなさそうだけど、それがまた素人っぽくていいかも」


 思わず審査員にでもなったかのような感想を漏らすあたし。


「みんな、頑張ってますの」


 笑ちゃんもあたしの感想に同意を示してくれた。

 と思ったのだけど。


「でも……ちょっと悲しげですの」


 ふと、そんなことをつぶやいた。

 微かに聴こえてくるだけだからなのか、あたしには、そんなふうに思えなかったのだけど。

 ちょっと憂いを含んだような笑ちゃんの表情に、あたしはなんとなく不安を覚えた。


「笑ちゃん……?」


 どう声をかければいいかわからず、あたしはただ彼女の名前を呼ぶ。


「ん……、なんでもないですの」


 そう言ったきり、笑ちゃんは黙り込んでしまった。


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