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相方は座敷ワラシ!  作者: 沙φ亜竜
第2章 ノリと笑いが必要です
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-5-

 そんな日が続いていた、とある放課後。

 美野ちゃんと委員長があたしの席までやってきて、こんなことを言い出した。


「かのりん、実はちょっと話があるのよ」

「ここでは話しづらいことだから、場所を変えたいんだけど、いいかな?」


 ふたりとも、どうしたというのだろう?

 とても真剣な表情を見せるふたりの勢いに圧され、あたしは素直に頷きを返す。


「じゃあ、行きましょうか」


 ポン。

 美野ちゃんはあたしの背中を軽く叩き、ついてくるよう促す。


 ふたりに続いて歩いていくと、彼女たちは階段を上り始めた。

 二階から三階、そしてさらに上へ。

 うちの学校の校舎は三階建てだけど、三階から屋上へと階段は続いている。


 とはいえ、屋上への扉はカギがかけられているので、ほとんど人が通らない場所となっていた。

 その屋上に出るための扉の前で立ち止まるあたしたち三人。


「ここなら大丈夫ね」


 真剣な表情を崩さないまま、美野ちゃんと委員長は、あたしをじっと見つめている。


「んっと……。どんな話かな……?」


 普段のふたりからは感じられない雰囲気に、あたしは少々怖気づきながらも、そう訊いてみた。


「実はね……。笑ちゃんについて、いろいろと調べてみたのよ」

「そしたらさ、とんでもないことがわかったんだ」


 険しい表情で声を潜めながら、ふたりは答える。


 笑ちゃんのこと……?

 あれ? そういえば、いつもあたしのすぐ近くにくっついて、最近はほとんど姿を現したままだった笑ちゃんが、今はいないみたいだ。


 笑ちゃんは姿を消すこともできるけど、二週間くらい一緒に過ごしてきたあたしには、姿を消していたとしても気配だけは感じられるようになっていた。

 それなのに、今はその気配すら感じられない。


 いったい、どこに行ったのだろう?

 考えを巡らせているあたしに、美野ちゃんはさらなる困惑を引き起こす言葉を放つ。


「笑ちゃんは、座敷童子じゃなくて、悪霊だったのよ」


 …………え?

 あたしは耳を疑った。


 あの、おかっぱ頭がよく似合う、ちょっととぼけた感じの笑ちゃんが、悪霊……?


 あたしは笑ちゃんに取り憑かれていると言ってもいい状態だけど、一緒にいて感じたのは、ほんわかした雰囲気だけだった。

 悪霊などという禍々しい存在だなんて、どこをどう考えても信じられない。


「それが作戦なのよ。油断させて心の中まで侵食していき、やがてはすべてを喰らう。そういう悪霊だったのよ、笑ちゃんは」

「図書室でいろいろと古い文献を調べてみたんだけど……。この学校で起こったとある事件についての記事に、笑ちゃんに関する記載があった。数年に一度くらいの割合で現れて、生徒を喰らうと言われているらしいんだよ」

「数年ごとに行方不明の生徒が出るっていうのは、この学校では有名な話だったらしいわ。最近は噂も薄れて、教師たちも話題にしないように気をつけてるから、今となってはほとんど誰も知らないんだけどね」

「だから、かのりん、あなたは今、すごく危険な状態なんだよ!」


 真剣に訴えかけてくるふたりの様子を見る限り、冗談なんかじゃないのだろう。

 普段のふたりは、あたしをからかったりバカにしたり、そういった扱いをすることが多い。

 気を許し合っている間柄だから、それも嫌じゃない。むしろ嬉しいくらいだった。


 でも、今日は美野ちゃんも委員長も、そんな素振りをまったく見せない。

 だからこそ、本気であたしを心配してくれているのだと、確信を得ることができた。


「わたしたち、どうにか笑ちゃんを祓おうと、いろいろ調べて、必要なものを部室に揃えたの」

「だからかのりん、一緒に行こう!」


 あたしを促すふたり。

 部室という単語に、ちょっと引っかかる感じを受けはしたけど。

 それでも、こんなに真剣な表情で見つめられたら、否定の意思を返すことなんてできるはずがなかった。


 部室というは、このあいだ勧誘された、あのレクリエーションルームのこと。

 美野ちゃんと委員長は、あの勧誘のあと、そのまま妖怪部に入部していた。


 笑ちゃんは結局、あたしがいないなら入部しない、ということに落ち着いたのだけど。

 それも、獲物であるあたしをひとり占めしたかったから、という理由だったのだろうか……。


 ここ最近、放課後になると、美野ちゃんと委員長は揃って部室に向かっていた。

 あたしはすぐ家に帰っていたから、ふたりがどんなことをしているのかは知らなかったけど、あたしを心配していろいろと準備してくれていたのだ。


 友達って、やっぱりいいものだわ。

 あたしはホロリと、心の中で嬉し涙を流していた。



 ☆☆☆☆☆



 ふたりに連れられて、あたしはレクリエーションルームへと向かう。

 と、階段を下りて廊下に出たところで、背後から声がかかった。


「あれ? 長波?」

「あ……とも……じゃなくて、桜之城くん……」


 声をかけてきたのは、友親くんだった。


 友親くんは、以前にも言ったとおり、美野ちゃん同様、幼稚園からの幼馴染みだ。

 出会ったばかりのその頃は、お互い幼かったこともあって、気軽に名前で呼び合っていた。

 だから今でも、そう呼びたいとは思っている。


 だけど、男子と下の名前で呼び合うなんて恋人同士みたいなこと、学校ではなかなかできるものじゃない。

 というわけで、今では名字で呼ぶようになっていた。


 友親くんのほうも同じように考えているのだろう、あたしのことを長波と名字で呼んでいる。だから、これでいいんだ。そう自分に言い聞かせている。

 もっとも、さっきみたいに、つい名前で呼びかけそうになっちゃうことも多いのだけど。


「委員長と歩境もいたんだ。三人揃って、どこ行くの? あれ? 笑ちゃんの姿が見えないみたいだけど……」

「ん……ちょっと、ね。それじゃあ急ぐから、またね」


 疑問を向けてくる友親くんに、美野ちゃんはピシャリと冷めた言葉を返すと、あたしの手をつかんでスタスタと歩き始めた。


「あ……あの、桜之城くん、ごめんね。また明日……!」

「ん。また……あとでね」


 慌てて友親くんに声を送ると、彼は手を振り返してくれた。

 ……え? また、あとで?

 友親くんの言葉が気にはなったけど、美野ちゃんに力強く引っ張られていたあたしは、これ以上その件について考えることはできなかった。


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