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People who should not be called

手には血が付いていた。


足元には、赤黒い血で染まったナイフが落ちている。


そして――世界が暗転した。


まただ。


次に目を開けたとき、俺の前には信じられない光景が広がっていた。


青い空。


風に揺れる草原。


優しくざわめく木々。


どこかで鳥のさえずりまで聞こえる。


俺はしばらく呆然と立ち尽くした。


「……あの世か?」


あまりにも穏やかだった。


あまりにも綺麗だった。


「連続殺人鬼の俺が来るような場所には見えねぇな」


その瞬間だった。


頭の中に無機質な声が響いた。


『対象確認エラー。対象確認エラー。誤召喚を検知しました。指定サークル内で待機してください』


「は?」


地面が淡く光り始める。


次の瞬間、俺の足元を囲むように巨大な魔法陣が浮かび上がった。


『誤召喚を検知しました。指定サークル内で待機してください』


俺は辺りを見回した。


誰もいない。


「さっきから“誤召喚”って何だ?」


返事はない。


「それに、なんでお前の指示に従わなきゃいけない?」


沈黙。


俺は鼻で笑った。


「俺は好きな場所へ行く」


一歩前へ出る。


「好きなことをする」


さらに一歩。


血の付いた手を見下ろしながら続けた。


「邪魔する奴がいるなら――」


口元が歪む。


「殺すだけだ」


俺は魔法陣に背を向け、反対方向へ歩き出した。


すると声は先ほどより強い口調で警告してきた。


『警告。指定サークルから離脱しています。直ちに戻ってください。重大な結果を招く可能性があります』


「知るか」


俺は空に向かって中指を立てた。


「止めたいなら自分で来いよ」


そのまま歩き続ける。


すると突然、左手の甲に焼けるような痛みが走った。


「……今度は何だ?」


手を見ると、見慣れない紋章が浮かび上がっている。


俺はその紋章を指で触れた。


すると空中に青白い光が広がり、一枚の半透明な画面が現れた。


まるでゲームのステータス画面のようだった。


━━━━━━━━━━━━


名前:不明


年齢:27


状態:生存


━━━━━━━━━━━━


「……はっ」


思わず笑いが漏れる。


「ガキのゲームかよ」


だが、その下に表示された文字を見た瞬間、少しだけ興味が湧いた。


━━━━━━━━━━━━


討伐指定対象


★★★★★★


生死問わず――否。


死亡状態のみ有効。


━━━━━━━━━━━━


六つ星。


しかも生け捕りではない。


最初から殺す前提だ。


数秒間その表示を見つめた後、俺は声を上げて笑った。


「なるほどな」


誰に向けるでもなく呟く。


「そういう遊びか」


声は何も答えない。


俺はナイフを握り直した。


「相手が誰だろうと関係ない」


風が止まる。


鳥の声も消える。


世界が不気味な静寂に包まれた。


俺は笑みを浮かべたまま続けた。


「血が流れるなら――」


ナイフの刃を軽く撫でる。


「殺せる」


その瞬間、空中に新たな画面が出現した。


━━━━━━━━━━━━


緊急再評価中……


対象分析……


勇者適性:なし


聖者適性:なし


救世主適性:なし


英雄適性:なし


致命的エラー


召喚対象不一致


誤召喚確定


━━━━━━━━━━


「はははははっ!」


腹を抱えて笑った。


「やっと認めたか」


初めて声に迷いが混じる。


『お願いです。指定サークルへ戻ってください』


「断る」


『指定サークルへ戻ってください』


「断る」


『このままでは死亡する可能性があります』


俺は肩を震わせながら笑った。


「死亡?」


ゆっくりと両手を広げる。


「そのために来たんじゃねぇのか?」


沈黙。


長い沈黙。


まるで向こう側も返す言葉を失ったかのようだった。


だが次の瞬間。


遥か彼方の地平線の向こうで何かが動いた。


巨大だった。


山のように巨大な影。


それがゆっくりと立ち上がる。


大地が震えた。


空気が震えた。


それを見た瞬間、声は焦ったように叫ぶ。


『緊急修正プロセスを開始します!』


だが俺は歩みを止めない。


むしろ笑みを深めた。


「遅い」


影の方へ向かって歩き出す。


この世界が何であろうと。


神が支配していようと。


化け物が待っていようと。


関係ない。


奴らはたった一つだけ間違えた。


呼び出してはいけない人間を召喚してしまったのだから。

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