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「どんな知識も魔法も行動も空虚にしか感じない、なのにさっさと何か好きなことを見つけるなりなんなりして自分に近付くなと婚約者に言われて、限界を迎えたってことか。なるほどな。……学生は遊ぶのと勉強が仕事だとは言うが……なんていうか、全く合わない人間と婚約はキツイだろうな。おまえとお前の婚約者ではスコアもそもそもの素質も違いすぎるんだよ」
この教師、クライヴ……先生はやはり私の悩みを馬鹿になんてすることなく、すんなりと受け入れた。それどころか共感して、私を肯定してきていた。教師として怒らることすらない。不思議な人間だ。
「私、音楽も芸術も運動も魔法も勉強も、人付き合いも……何をしても楽しくないんです」
「確かに。成績も申し分ない『オールS』。他の追従を許さないスコアだな。苦手な事とかはないのか?」
聞かれはしたが、思い浮かばなかった。
敷いて言えば、人付き合いだろうか。話しても特に新たな知識は得られないし、話題も化粧品や流行りの芸能人、好きな男子や嫌いな教師の話など身のない話ばかり。女子生徒が何人も一緒にトイレに行くというのも理解不能だった。だから面倒さが勝ったのもあり、この学院に入学してすぐに、もう人付き合いなどしなくなってしまった。
「人付き合いです」
「だろうな」
「苦手だって分かってるなら、なんで聞いたんですか?」
「お前みたいなタイプは不可能だと思うことに直面すると燃えて夢中になるタイプだからな。ソースは俺。だが、人付き合い自体がそもそもくだらないと思ってるやつにはこれは適用されない。だから人付き合い以外で苦手と感じているか難易度が高いことかで探すのが筋だな」
「はあ。それでは先生が不可能だと思って、夢中になったことは?」
正直自分が不可能だと思うことに対して夢中になっている姿など想像できない。
それに、この先生と私が同じタイプだと言われていることにも納得できない。ないない尽くしで先生が夢中になっていることなんて話題に出しはしたが、実のところは興味もなかった。
人付き合いが苦手なことに対して『だろうな』とテキトーな返事をされたことで、なんとなくそれを否定しようと軽い意趣返しのつもりで返しただけの返事だ。
しかしその言葉を発した直後、先生は弾丸を周囲に撒き散らすマシンガンのように喋りだした。
「俺の趣味、そしてこの学院の教師及び教授としての専門分野は、単身の魔法使いによる『複合魔法』。この分野は非常に素晴らしいんだよ……!まず、少し前までは違う系統の別の魔法を人間が同時に混ぜ合わせて発動することは不可能とされていた。そうだな、例えば人間Aが水魔法を発動して、人間Bがそこに炎魔法を発動させて、水蒸気を生み出す。こんな感じだ。しかし!6年前、魔法を同時に発動する方法が見つかったんだ!!それは魔法の固定。片方の魔法を構築して発動した直後に、そこに固定魔法をかけてその場に固定。その後、組み合わせたい魔法を発動して混ぜ合わせるんだ。だが俺はこの方法で組み合わせるだけでなく、他の方法……例えば全く同時に魔法式を構築してな――」
長い。とにかくクライヴ先生は、一度語らせ始めると全く止まらなかった。
よほどその『複合魔法』と呼ばれる分野の学術が好きなのだろう。その熱意だけは伝わってきた。魅力は全く分からないが。
「で、複合魔法の発動方法もそうだが、一番面白いのが、複合する法の比率による変化で――」
話はまだまだ続くようだ。なんだか更に退屈になってきて、私は欠伸を堪えながらもボケっとしながら受け答えしていたのが悪かったのかもしれない。
「じゃあ、実践あるのみだ!早速研究室へ行くぞ!!」
「え……?」
腕を捕まれ、身体が半分浮きそうなくらいの勢いで連れ出される。私は結局、研究室とやらに連れて行かれる時も、埋まらない空虚さを感じていた。




