40.
迎えた魔導祭当日。
ガラリと雰囲気を変えた学院の中を私達は歩いていた。会場に向かうために。
「うわー、アレも、あっちも、めっちゃ美味しそう。ちょっと、ほんのちょっとでいいから寄って行こうよ!リーシャ!!」
「ダメです。リーシャも貴女も代表でしょう?さっさと会場に到着しないと」
両隣で言い争っているのは、ミレイアとコリアンナが言い争っていた。コリアンナは別のチームなのに、私達を先導していてよいのだろうか。
しかしながら、正直ミレイアが足を止めたいと思う理由も分かる。魔法で作られた、見たこともないお菓子や食べ物。そして魔導銃での射的やお化け屋敷やコスプレカフェなどと言った俗なものまでそこには揃っていた。
この魔導祭、学院を挙げての催し物ということもあり、外部からたくさんの人間が来ている。生徒の保護者、学院のOB、遊び感覚で来ている一般市民や貴族、そして未来の生徒――様々な人間が集まっていた。
そういえば、母様も来ると言っていた気がする。
「私もちょっと見ていきたいけど――」
「もー!1週間も魔導祭は続くんだから、別の日になさい!さっさと進む!!そして、エントリー!!!」
そう。魔導祭は1週間続く。
1日目、2日目は代表に選ばれなかった生徒含めた団体競技、3日目以降にカンタータ、グリモワール、スタチュエット、レギオン、そして最終日にデュエルと続く。
とにかく大きなイベントなのだ。
とはいっても、自分が出場しない日は暇なので、その時に回ればいいというのは正論だ。
私は、大人しくコリアンナについていくことにした。
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会場に到着すると同時に、学生証を見せて出場準備――エントリーを済ませる。
そして、代表者のみに配られるらしい各競技の用紙を広げた。スタチュエットの方には披露する順番が書かれていた。私は……全出場者の中でも一番最後だ。大トリ。中々のプレッシャーである。
そして、デュエルの方の用紙には――
「リーシャ。デュエルのトーナメント表は見たか?」
「……はい」
ギロリと睨みつけてくるオーランドに対して、気圧されそうになる。
私はこのまま彼に殺されてしまうのでは?とすら思う。そんなことになろうものなら、勿論抵抗はするが。
彼の言うトーナメント表。そこには、第一回戦で私とオーランドがあたる組み合わせが記載されていた。彼も出ていることはかなり前から知っていたが、正直気まずい上に面倒くさいので、一番最後まで戦いたくなかった。
「悪いことは言わない。辞退するんだ」
「は?」
「いくら代表に選ばれたと言っても、責任を感じる必要はない。怪我をする前に辞退するんだ。君はスタチュエットにだけ参加すればいい。ショーを見に行くくらいに熱心なんだから」
意味が分からない。辞退しろだって?怪我をする?まるで彼は、私に勝てることを確信しているようだ。それも私に怪我をさせるくらいの大差をつけて。それだけじゃない。スタチュエットにだけ出場すれば、満足だろというような態度が気に食わない。私はなんだか、馬鹿にされたようでムカついた。
「馬鹿にしないでください!私は貴方のような他人を見下して馬鹿にして、戦う前から辞退しろと言ってくるようなセコい人間には負けません!!」
「せ、セコい!?」
「ええ。小さいですし、小物です。そんな人と戦ったところで、怪我なんてするわけがないので、お引き取りください」
そのまま隣でオーランドに対してドン引きしていたコリアンナとミレイアを連れて、その場を離れる。
何故、オーランドに対してはこんなにも表面に出して憤慨してしまうのだろうか。無感情で追い払えない自分に対してすらイラつく。
実をいうと、確かにデュエルの方にはそこまで興味がなかった。けれど、オーランドを叩きのめすためにもきちんと参加しようと決意を改めた。
「……災難だったわね。私はリーシャが勝つと思うわ」
「あれが婚約者なんだー。やば男」
オーランドの横を通り過ぎた後に、元のテンションを取り戻したコリアンナとミレイアが声を掛けてくる。その言葉になんだか勇気づけられたし、やば男とオーランドを称すミレイアには少し胸がすいた気がした。




