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『婚約者を大好きな自分』を演じてきた侯爵令嬢、自立しろと言われたので、好き勝手に生きていくことにしました  作者: 皇 翼


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37.

「なんだか弱くなりました?」

「……私は、喧嘩を売られているのでしょうか」


クレイヴ先生の研究室に入った直後、じろじろとこちらを観察してきたマーカスに唐突に貶された。

私達のやり取りに対して、クレイヴ先生は呆れたようにマーカスを窘めた。


「腕輪のせいだろう。『絶縁の腕輪』。珍しい魔道具だな。大方、スタチュエットの修練のためにつけられているといったところか」


流石にクレイヴ先生は一目見ただけで分かったのだろう。マーカスと違って。

しかし、この腕輪の効果が私の魔力にまで現れているとは思わなかった。ただたんに出力時に力を制御されているのかと思ったが、そうではなく、常に身体全体の魔力を制御されているのかもしれない。


「リーシャ……マーカスもだが、お前たちは魔法の出力制御が苦手だからな。分かっているとは思うが、魔力の制御というのは上手ければ、窮地を脱するほどの力を出せることがある」

「戦闘中に魔力だけで次の動きが読まれてしまうことですよね。マーカスが丸わかりでした」

「え……は??何の話ですか?」

「前に戦った時、私は貴方の魔法を簡単に相殺できました。それは何故でしょうか。学年も習熟度もあなたの方が上であるにも関わらず、です」


マーカスは分かっていないようだが、私は他の人よりも魔力の流れを追うことは得意なようで、魔力の流れで、次の動きや使う魔法が簡単に分かってしまうのだ。複合魔法と使っている場合は詠唱も配合率もオリジナルだが、その中身の配合率がその魔力で分かってしまう故に、打ち消すことも容易にできた。

頭に血が上っていたマーカスは気が付いていなかったようだが。

そこまで説明して、マーカスは顔を赤くして私に文句を言ってきた。


「貴女だけ強くなろうとしてるだなんて、ずるいです。その腕輪を僕にも寄こしてください」

「マーカス、わがままを言うな。魔道具を使わなくても、地道に制御していくことも出来るさ。まあ、魔力が強ければ強いほどに難しくはあるが」


しかしながら、マーカスに対して偉そうに言うほど私も魔力の制御ができているわけではない。

そもそも、私は、相手が避けられないくらいに強い魔法を使ってしまえばいいと考えているようなタイプだった。

しかし――。勝ったとはいえ、リューガスに対してこの手は通じなかった。私よりも強い相手だったからだ。

だからこそ、そういう相手により勝てるように少しでも別の手を講じておくべきだ。それも、スタチュエットの修練以外で今回私が魔力制御に真面目に取り組んでいる理由だ。


マーカスはブーブーと文句を言いながらも、魔力制御の基礎をクレイヴ先生からまずは口頭で伝えられていた。

その近くで、私は様々な魔法を使って身体に弱い魔法を使う感覚を染み込ませていく。

倒れそうなくらいに回数を重ねてから分かってきたことだが、込める魔力を小さくできればできるほどに、身体を襲う疲労感が明確に減っている。

きっとこれが、魔力を制限したうえで規模の小さい魔法を出すという感覚なのだろう。


あと少し、あと少しで何かがつかめそうな気がする。

目の前の掌の上に氷の蝶を出すことに集中する。あの舞台で観た美しい蝶。周囲に冷気が渦巻き、そこに出現する直前――。


「ストップ。そこまでだ」


遠くにいたはずのクレイヴ先生に手を掴まれ、止められる。それと同時に全身から力が抜け、抱きしめるように支えられた。


***


「目を離すとすーぐこれだ。リーシャ、お前本当に死んじまうぞ?今、身体に力が入らないだろ?」

「……そんなことはな――」


否定しようとすると、支えていた手から力が抜かれ、倒れそうになる。すぐに再度同じように支えられて、そのまま近くの椅子に座らせられた。


「そんなことは?」

「ありました」

「お前の母親にも頼まれているんだ。あまり心配かけないようにしてやれ。それに、もしお前に何かがあったら……」

「え?」


クレイヴ先生が無言になり、何かあったのかと顔を上げると、思ったよりも近くにその顔があった。

なんとなく彼の顔を観察する。先生だからと言っても、21歳と私と5つしか変わらない年齢ということもあって他の先生よりもかなり若かった。漆黒の短髪がオールバックという少し見た目の年齢があがるような髪型にされてはいるが、まだ他の教師に比べると若々しかった。しかし何故何も言わないのだろうか。いつも騒がしいマーカスが今は席を外しているようで、少し気まずい。

無言で見つめられて30秒ほど。普段気にしていなかったクレイヴ先生の顔をしっかりと観察できてしまうほどの時間。美しい(アメシスト)をはめ込んだようなその瞳にジッと見つめられていたが、クレイヴ先生が溜息を吐く。


「お前って危機意識ってものがねえのな」


その急な言葉と共に、額に衝撃が走った。


「っ!!?」

「俺も時々忘れそうになるが、子供なんだから、もう無理はするなよ。じゃなきゃ、俺が監督責任でお前の母親に八つ裂きにされる」


『思ってたより子供(ガキ)だったんだよな』なんて呟きと共に、額を軽く小突かれたようだ。

まだ動けない身体になんてことをするんだと一瞬その理不尽さに憤ったが、母様という名称が出て、約束のことを思い出した。没頭しすぎない。自分の身体と命を最優先にして、父様みたいにはならないこと。忘れかけていたそれをクレイヴ先生が注意し、見守ってくれていたのだ。

あらためて。母様からの言葉を心に刻んで、今日は身体が動くようになり次第、部屋に戻って休もうと思った。

X(旧Twitter)におまけ載せています。読まなくても特に物語に支障はないです。クレイヴ視点です。

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