30.
オーランドに対して、初めて怒ってしまった。
だって彼のあの言葉が、あまりにもひどかったから。まるで怒りをぶつけるように、わざと私を傷付けるような言葉を選んでいるような印象を受けたのだ。
思わず、私も触発されたように怒りを発散させて、あんな風に突き放すようなことを言ってしまったけれど――。
時間が経つにつれて心の奥に妙な違和感が残り続けていた。
本当にオーランドがあんなことを言うだろうか?いや、彼が私に対してあの言葉を言ったのは事実である。そういう意味ではなく、あれは、あの言葉はオーランドの本意だったのだろうか。
確かに彼はいつも素っ気なくて、婚約者である私に対しても冷たく、距離を置いていた。
でも、彼は決して人を傷つけることを選んで、楽しむような下劣な人間ではなかったはずだ。だからわざわざ私に声を掛けてまであんなことをしてきた意味が分からなかった。これは大きな違和感である。
彼の言葉は常に冷静で、たとえ突き放すような態度を取ることがあっても、あそこまで直接的に罵倒するようなことはなかった。
それなのに、どうして――
「とんだ阿婆擦れだな」
あの時の彼の声音を思い出して、胸がざわついた。
そこにあったのは、まるで私に怒っているのではなく、別の何かに苛立ち、私にぶつけているような印象だった。とにかく、冷静になって思いだしてみれば、彼の言動すべてに違和感を覚えた。
自分はずっと誰かと仲違いなんてすることがあり得ないと思っていた。
人生とは何が起こるか分からないものだ――なんて現実逃避をする。考えても考えても、そもそものコミュニケーションの基礎値が足りないということもあって、なんの答えも出なかった。
クレイヴ先生もこんな気持ちだったのだろうか。
最近になって聞いたことだが、クレイヴ先生とあの教師――リューガスは近しい、友人という間柄だったという。私とオーランドの関係性とは全く違うが、割と近しい間柄だったという共通点はあるだろう。
それがある日急変する。そしてその真の理由は自分には理解しがたいものだった。
「……むしろ、彼とは教師としても同期だったこともあって、仲が良かったとすら思っていたんだよ」
先生は悲しげにそう言っていた。
だからこそ、あんな風に突然態度を豹変させたことが信じられず、ショックを受けたのだ、と。今でも信じられない、あんなことをされて、お前たちを……生徒を傷付けられそうにもなったというのにな。すまない。彼を恨めそうにはないよ。そう悲しそうに私とマーカスに謝っていた。私達は気にしないで欲しいと伝えるが、どうにもあの件については、気付けずに私達に散々手間をかけさせたと、まだ申し訳なく思っているようだ。
本当に人間関係というのは意味が分からない。
オーランドに対する違和感と、人間関係の難しさに頭を悩ませていようが、時間は過ぎ去っていく。
あれから2週間程。私は――
「我らが蒼氷組が目指すは優勝ただ一つ!死んでも勝てー!!」
魔導祭に巻き込まれていた。




