15.
「お前たちは何をしているんだ!!」
雷のような怒声が森に響き渡った。
戦闘の熱気がまだ残る中、私は息を切らしながら、目の前のマーカスを睨みつけたまま立ち尽くしていた。彼もまた、服に破れた跡を作りながらも、悔しそうに歯を食いしばっている。
だが、今の私たちにとって最大の脅威は――
「頭を冷やさせるために山奥に置いたのに、更にヒートアップして何事だ!!」
クレイヴ先生の怒号だった。
私とマーカスは揃ってその怒号に全身を震わせた。先生にここまで怒られたのは初めてだからだ。
しかし、ちらりと見た先生の表情は怒りを通り越して呆れ果てていた。こめかみに浮かぶ深すぎる青筋が、それを如実に物語っている。見捨てられてしまうかもしれない。きっとマーカスも同じことを考えている。
「俺は、お前たちに反省しろと言ったんだぞ? なのに、まさか学院の敷地を吹き飛ばすとはな……」
そう言われ、私は周囲を見回した。
確かに、改めて見れば惨状は一目瞭然だった。地面は深く抉られ、木々は焼け焦げ、風の刃によって切り裂かれた枝葉が無惨に散乱している。特にマーカスの風と私の雷がぶつかり合った場所は、大きく抉られて、まるで隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来上がっていた。それに遠くにあった山も一つ、いや、2つは吹き飛んでいた。
「お前ら、まさか自分たちがどれだけの被害を出したのか分かってないんじゃないだろうな?」
クレイヴ先生の低い声に、私は思わず目を逸らす。
すると、マーカスが口を開いた。
「僕は悪くないです! この女が挑発したんです!」
「先に厭味を言ってきて、かつ攻撃してきたのはそっちでしょう?」
「はぁ!? 貴女が先に馬鹿とか言うからでしょう!?」
バチバチと火花が散るような視線を交わす。
しかし、それを見たクレイヴ先生は、はぁ、と深いため息をついた。
「……はぁ。まあ、どっちも反省していないことは分かった。だがな、お前たち――」
先生はぐるりとその場を見渡し、言葉を続けた。
「今回の件で、山の一部が吹き飛んだだけじゃなく、学院の土地まで削れてしまったんだよ」
マーカスと私は、同時に「え?」と間抜けな声を漏らした。
正直、こんな広大な土地があるんだから、そのくらいどうでもいいだろうという心が透けて見えていたのかもしれない。
「この規模の破壊は……間違いなく学院側にバレる。始末書どころの話じゃ済まないかもしれないぞ。これは『破壊行為』、学校長らに対しても喧嘩を売っているようなものだ」
先生はこめかみを押さえ、心底疲れた様子で呟いた。
だが、その言葉をよそに私とマーカスはまだ互いに言い足りないことがある故に、口論を続けてしまう。だって、向こうが絶対に悪いからだ。
「そもそも、貴方が学院の中で絡んでこなければ、こんなことにはならなかったのよ!」
「はぁ!? そっちこそ、クレイヴ先生にべったりくっついて時間を奪ってたくせに、よく言いますね!?」
「私が先生の知識を学ぶことの何がいけないのよ!」
「それは僕の役目なんですよ!!」
「独り占めしようとするところがせこいのよ!」
バチバチと火花が散るような口論を続けていたが、クレイヴ先生がもう一度、深いため息をついた。
「……もう好きにしろ」
そう言い捨てると、先生は疲れ切った顔で背を向け、私達ごと学院に転送した後に学院の方へと歩き始めた。
******
週明け。
私はしばしばする目を擦りながらも、朝会に出席した。休みにも関わらず、散々マーカスと喧嘩をしたせいで、正直、ぐったりしていた。
そんな私の耳に、信じがたい言葉が飛び込んできた。
「本日をもってクレイヴ=ハットランナー教諭は懲戒免職となります」
――……は?
呆然とする私の横で、今日も今日とて絡んできていたマーカスも目を見開いていた。
私は、自分の耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待って、何で先生が懲戒免職になるのですか!?」
思わず少し大きな声が出てしまったが、周囲の生徒たちはすでにもっと大きな声でザワザワと騒ぎ出していた。
「え、もしかして、一昨日の……?」
横で呟いたマーカスと、私は同時に顔を見合わせる。
一昨日の件がきっと学院側にバレていたのだ。そして、その責任を取る形で――。
「いやいやいや!!何で先生が!?」
焦りと共に、胸の奥が嫌な感覚に締め付けられる。
まさか――私たちの罪を全て背負う形で……!?




