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外部
会議室はまだ朝の光で白く明るい。机の上には資料が並び、誰も視線を合わせないまま、言葉だけが交わされる。
「案件A、進捗は?」
声は落ち着いている。問いかけの意味だけがあり感情はない。
「予定通りです。担当は佐伯です」
指示や確認だけで、返事に余計な色はない。
「予算は?」
「確保済み。調整済みです」
誰も顔を上げず、互いの存在は確認するだけ。
だが、座る位置、資料の並べ方、声のトーンだけで、誰が主導権を握るかがはっきりと判る。佐伯は資料に目を落とし、言葉を発さない。必要以上の情報を求めず、必要以上に介入しない。
それだけで、周囲の目は自然と彼に集まる。
「他に報告は?」
「ありません」
短い返答が、会議室を静寂で満たす。言葉では感情を表さない。だからこそ決定権、影響力、役割の配置が、無言のうちに決まっている。
誰も異議を唱えない。誰も佐伯の線を越えようとはしない。会議が終わり、資料が回収される。
机の上には、事務的に整理された紙だけが残る。外部の世界もまた、線に沿って動いている。
佐伯は、唯その線を確認し、必要な対応を慎重に選ぶ。




