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5行動目 勉強計画をたてよう

テスト個票が返され、それぞれの成績を見せ合う生物部の4人。カイ、ユイ、俺の3人でクラストップ3という意味のわからない結果に喜んでいたが、ほぼ赤点の新舞さんは話についていけず、一人席に戻ってしまう。

残りのホームルームの時間を使い、LINEで新舞さんを助けるための作戦会議をおこなった俺たち3人。

テスト前まで毎週勉強会を開く、というダルすぎる計画に俺はやや反対気味だが、果たして……

 帰りのHRが終わると、カイとユイはすぐさま新舞さんの席に向かった。

 「新舞さん!ちょっといいかな!」

 いきなりカイに話しかけられたことで、たじろぐ新舞さん。

 「どうしたの……?さっき言った通り、今日は部活休みだよ。」

 やはり先程の会話を気にしているらしい。

 ユイが新舞さんの肩に手を置いて話し出す。

 「勉強のことで話があるの。さっきの成績も含めて、今後について色々相談しましょう。」

 「え、えと……今日?」

 俯く新舞さんに、カイが優しく声をかける。

 「そうだ。せっかく生物部に上位陣が集まっているんだから、一人だけおいてきぼりにするのも考えものだ。この後の部活の時間を使おうと思うんだけど、どうだい?」

 新舞さんが無言で頷いたのを見て、カイはニカッと笑った。

 「よし!僕と葉山くんは先に生物室に向かっているから、準備が出来たらユイさんと来てくれ。」

 俺はカイについて行くことにした。

───────────────────────────

 時刻は16時半。放課後の生物室。

 長テーブルを4人で囲み、個票返却後にたてた計画を新舞さんに話した。

 「え、じゃあ放課後は週3で私の家に来て勉強会するってこと?私は全然いいんだけど、3人に迷惑じゃないかな。」

 「僕たちは大丈夫だ。な?」

 カイの呼び掛けに頷くマイ。俺は全然大丈夫じゃないぞ。

 何せ、テストまでの月火木が全て潰れるのだ。テスト前は俺自身の勉強も進めたいし、他人にそんな構ってられない。

 作戦通り、新舞さんが少しでも拒否すれば全力で擁護に回る予定だったが、

 「ほんと!じゃあ、よろしくお願いします……!」

 新舞さんがすぐに承諾してしまったため、俺は賛成せざるを得なくなった。

 俺の様子とは裏腹に、カイは元気よく話を進める。

 「ただ、流石にテストまで毎週勉強会というのも負担が重い。テスト2週間前からは各自で勉強にしようと思うんだが、どうだい?それに、各々予定もあるだろうから、勉強会への参加は自由としたい。」

 「賛成です。」

 「速いね!葉山くんのやる気が感じられるよ!」

 これなら俺も心から賛成できる。てっきり強制参加だと思っていたから、このカイの提案には拍手を送りたい。

 ユイが手を上げて話し出す。

 「では、早速来週の月曜日から始めましょう。明後日と明明後日の土日で、準備をお願いします。」

 今日の部活はここまでのようだ。あの新舞さんが珍しく落ち込んでいたから、一時はどうなるかと思ったが……この調子なら大丈夫だろう。

 思いのほか部活が早く終わり、アニメの時間に間に合いそうだ。

 正直、かなり面倒だと思っていた。だが、カイは俺たちにも気をつかった提案をしてくれた。何より、あれだけ新舞さんにへこまれると、どうにも調子が狂う。彼女を助けると思えば、悪い気はしない。

 とりあえず今の俺はアニメが見たいので、3人と生物室で別れ、急いで駅に向かった。

───────────────────────────

 土曜日、イオンモール津田沼の大型書店。

 俺はここで、高校受験用の参考書を探していた。本当なら3人で選びたいところだが、2人とも予定があるとのことで、教材選びは俺1人に託された。

 木曜の部活の後、新舞さんに各教科の解答用紙をLINEで送ってもらい、「新舞さんを助けよう」グループの俺、ユイ、カイの3人で分析した。どうやら、高校入学と共に勉強習慣が無くなっただけではなく、中学レベルの知識も記憶の彼方へと飛んでしまったらしい。

 今回の中間テストでは、数学だと展開や因数分解、英語は基本文法が多くの割合を占めており、中学の復習を中心に出題されていた。

 だから、彼女のあの点数を見た俺たち3人は、まずは中学レベルの復習から始め、その後に中間テストの解き直し、それが終わって初めて期末テストまでの範囲の勉強にしよう、という結論を出した。

 我が高校は決して偏差値が低いわけではない。県内で見れば上位の高校だ。だからこそ、過酷な受験生活が終わった途端、一気に学習内容を忘れる生徒だっている。

 「兄さん、さっきから何か考えごとですか?」

 後ろから妹の咲良(さくら)が話しかけてくる。今日は本屋ついでに、妹の頼みでショッピングに来たというわけだ。

 「いや、なんでもないよ。」

 「じゃあ、何故ずっと中学の参考書を見ているのですか?」

 「来週から週3で友達と勉強会をするんだ。その教材探しだよ。」

 「……それって女ですか?」

 「俺含めて男2人、女2人だ。」

 「……ダブルデート」

 「へ?」

 「兄さん、中学生に手を出すんですね。ドン引きです。」

 フイと俺に背を向け、首に付けた季節外れのマフラーをいじりだす咲良。何の話だ?

 「ち、違うって。高校で中学レベルの内容が出来てないヤツがいるから、そいつをみんなで助けようって話になって」

 「じゃあ尚更デートじゃないですかッ!!!」

 「お静かにお願いしまーす。」

 咲良がデカめの声で叫んだため、店員さんに注意された。当然である。

 「クッ、所詮バイトの分際で……!」

 うお、コイツ口が悪すぎるぞ。兄として注意しなければ。

 「ほら、周りの迷惑になるんだから、静かにするか向こうで座ってなさい。」

 「いえ、私も参考書選びに付き合います。」

 そう言って俺の横に並んでくる。助けようとしてくれるのはありがたいが……

 「お前、まだ中1なんだから。今見ても分からないと思うぞ。」

 「心配無用です。兄さん、その方はどの分野が苦手なんですか?」

 「え、そうだなあ……。苦手というか、ただ忘れてる感じがして。そのまま特に勉強せずにテストを迎えちゃった感じかな。」

 「でしたら、このシリーズが良いでしょう。」

 咲良は俺に『7日間で終わる!中学総復習』と書かれた参考書を差し出してきた。

 中を見ると、左ページに公式や重要用語、右ページには簡単な練習問題が載っている形式で、それぞれのページには『〇日目』と書かれている。どうやら本当に7日間で終わるらしい。

 「中学の復習にいつまでも時間を割く訳にはいきません。これで全体的な確認をおこない、キホンを思い出してもらう作戦です。兄さんの高校に入れたのですから、これで十分でしょう。」

 ほう……すごい。中1とは思えない分析力だ。

 咲良は話を続ける。

 「社会科目は中学の内容に高校の知識が加わってくる形ですから、特別時間をとる必要はありません。期末テストに向けた勉強は、そのまま復習にもなるでしょう。」

 確かに、歴史と地理は中学でやったやつが高校の教科書にも出てきてたな。教科書を見ればそれがそのまま予習にも復習にもなるわけだ。

 咲良、よく考えてるな……。

 「国語は授業をよく聞いて、分からないところは授業終わりにすぐ質問する。自宅では徹底して漢字の練習をしましょう。余裕があったらYouTubeなどに上がっている教科書解説動画を見るといいかもしれません。」

 やばい、普通にタメになる。

 俺はそのまま、数学と英語の対策についても咲良から教えてもらい、オススメされた参考書を購入した。俺1人で来ていたら、きっと変なのを選んでいただろうな。

 「ありがとう、咲良。」

 「いえ。この後は私のショッピングに付き合ってもらうので、これくらい当然です。勉強会頑張ってください。」

 その後、俺は咲良の服選びに3時間付き合わされた。1着の服をカゴに入れるのに大体45分もかかっており、挙句の果てには「やっぱりいりません。」と言って全部戻しだし、咲良のショッピングは終わった。

 世界一無駄な3時間だったと思う。


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