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勇者の断罪と聖女追放の代償

作者: 黄泉川


「聖女プラーエおよび天道教会を追放とする!」


勇者ハヤトの声が王宮の大広間に響き渡った。

 ――ようやくこの寄生虫を追い出せる――

 勇者ハヤトの胸は清々とした開放感が満ちていた。

 大広間では、誘い出された天道教会の者たちが次々と王家の衛兵に取り押さえられてゆく。聖女プラーエは悔しそうに顔を歪めながら言った。

 

「何故このような仕打ちをなさるのですか、勇者様?」

「聖結界のためと言いながら、俺たちから巻き上げたアイテムが司祭どもの遊ぶ金になっているのはバレているんだ。」

「高貴な使命には相応の謝礼が必要なのですわ。司祭たちは聖結界を維持するための要ですわ!」


 聖女プラーエは天道教会のゴリ押しでパーティに加わり、「聖結界のために」と称して魔物のドロップアイテムを片っ端から巻き上げていた。そのアイテムで装備を整えていれば、女戦士が怪我で離脱することもなかったかもしれない。

 おまけに天道教会は腐敗の極みだ。清貧とは程遠い司祭たち、教皇に至っては豪華な邸宅に住み20人以上の愛人と100人を越える子供を儲ける始末。ハヤトの怒りは頂点に達していた


「私たちを追放して、聖結界はどうするおつもりですか?私たちが管理する聖結界がなければ、この大地は虚空に飲まれて消えてしまいます!」

「ふん、問題ないさ。聖なる結界と言いながらその実、単に巨大な魔術結界であることはわかっている。王家の古文書に聖結界の開発から維持管理まで書いてあったさ」

 

そこへ王女マリッサがたたみかける

「おほほほ!聖結界の管理は王家が引き継ぎます。教会の皆様はは心置きなくお引き取りくださいませ。」


 王女マリッサとは、魔物に襲われた馬車を助けてから始まった縁で、今では恋人同士の2人。彼女とともに聖結界について調べる中で、驚くべき事実が判明した。王家の古文書に日本語で書かれた聖結界のマニュアルが存在したことだ。はるか昔、転移した日本人がこの聖結界を作ったらしい。

 さらに調査を進めた結果、聖結界の維持に必要な資産の倍以上が聖結界の維持管理費として教会に流れ、国の財がむしり取られていたことがわかった。魔術の結界を「聖なる」結界と偽り、予算を騙し取る

―――まさしく天道教会は国の癌だった。

 そして今、王家の力を借り、ようやくこの寄生虫と生臭坊主どもを一掃できる。


「天道聖典なんて嘘の塊だ!大地は巨大な亀の死骸の上にある?大地は平らで虚空に浮かんでいるだの…なら星が満ち欠けするのはなぜだ!」

「大地は巨亀アクバーラの亡骸が変じたもの…星々はそのように明滅している魔物であると言います…」

「何も証明出来ていないじゃないか!さぁ国から出ていくといい!聖典には結界の外にも世界があると書かれているんだろう?聖典を信じるなら出て行っても問題ないはずだ!」




――――――――――――


国外追放を命じられた馬車の群れに、聖女プラーエと教皇の姿があった。


「王女マリッサの馬車が魔物に襲われたのも、きっとアチラの仕込み、そのまま寝所に忍び込むとは王女マリッサにしてやられたのう」

「教皇さま、申し訳ございません…勇者様のお心を掴めませんでした…」

 

聖女プラーエはうなだれた。

 転移者である勇者ハヤトの価値観につけこまれたのだ。

 勇者パーティが困窮していたのには、勇者が毎回最高級の食事を求めたことにもある。麦カス入りのビールではなく清浄な水、砂混じりの壺パンではなく希少な白パン…当初聖女プラーエは勇者様はずいぶんと贅沢なものだと思い、教会の手配により十分な接待ができていると安心していたのだ。しかし、どうやらこの世界の食事が勇者の故郷に比べてずいぶんと劣るということに気づいたのは、ずっと後のことだった。


「勇者の様子を見るに、王女マリッサが教会を徹底的に悪しく言ったのだろう。」

 

 聖女プラーエはよく分からなかった、なぜ勇者が教会に清貧を求めるのか。

  天道教会…天魔道教会は、聖結界という大魔術を管理運営するための組織。所属する高位聖職者はもちろん魔術師で、高位の魔力保持者には高給は必要だし、多くの子孫を残すことも義務とされている。なぜ勇者が王家の一夫多妻を受け入れ、なぜ聖職者のそれは許さないのか。かの王女マリッサとて側室腹の第16番目の王女なのに。

 そして、聖典とマニュアルの作者は同じなのに、何故マニュアルだけを信じるのか


教皇は穏やかにプラーエに語りかけた

「教会には外の世界へ行くための備えがある。プラーエよ心配することはない」


 ―その瞬間、空がゆらめき、聖結界が消えた気がした―

 

 聖結界は、長きにわたるメンテナンスとバージョンアップのため全く初期とは全く違うものに変わっている。古いマニュアルでは維持も再起動も不可能だろう。いや、教会の者ですらもはや再起動は不可能だ。あの巨大な魔術は、もはや莫大なコストをかけて動かし続けるしかない。


 遠くない未来、大地は虚空に飲まれるだろう。

教皇は聖女の父

王家は継承に関するゴタゴタで教会の存在意義を忘れています

天道教会は聖職者というより武装ry

この世界はメシマズ(技術)


誤字報告ありがとうございますm(_ _)m

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