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今だから話せる、銀行オンラインのテロリスト対策

作者: 茜子


「これはここだけの秘密にしていただきたいのですが……

 このビルの場所は絶対に誰にも言わないでくださいね。

 テロの目標になりますから」


「もちろんです」


 三菱重工爆破事件の記憶も新しい頃だった。


 今から四十数年前、私は山手線某駅の駅前のビルの中にいた。

 一見、ありきたりの雑居ビルであるが、その奥には、最新の空調設備を備えた巨大なコンピュータルームが隠されている。

 そして、その中に都市銀行の大型コンピュータシステムが設置されていた。


 当時は日本でも大企業に対するテロが相次いでおり、銀行オンラインシステムは過激派の格好の的だったからである。

 もちろん、セキュリティも厳重だった。


 巨大な計算機室へ続く通路はただ一つ、離れた二つの扉で仕切られ、その扉が同時に開くことは絶対にないように作られている。

 職員が扉を開けた瞬間にテロリストが乱入するのを防ぐためだった。


 扉の前の個人認証も、読み取り機に手のひらを置くと指紋を読み取って自動的に扉が開くようになっていた。

 なので、他人が偽って中に入ることも出来ない。


 私は、メーカの下請けで、個人認証の記録を保存するプログラムを納品した。

 現地調整を済ませ、私は近くの喫茶店で個人認証システムの担当者とコーヒーを飲んでいた。


 私は素直に相手の会社の技術をほめた。

 四十年前のコンピュータは非力で、指紋認証は不可能に近いくらいすごい事だった。


「それにしても、すごい技術ですね。

 手のひらを置いただけで指紋のパターンをリアルタイムに解析するなんて!

 これなら、オンラインシステムのセキュリティは万全ですね」


 相手は、周りを見渡して小声で言った。


「これはここだけの秘密にしていただきたいのですが……

 客には指紋認証と言ってるんですが、実際には指の長さを計ってるだけなんですよ」


「……」


「だって、指紋の照合なんてしたら、時間いくらあっても足りないでしょ?

 扉の開閉に間に合うわけないじゃないですか」


 世の中には、外部から見れば完璧に見えるが、核心の部分が実はとても脆いシステムがあることを、その時私は初めて知ったのだった。そして、もちろん、それは最後ではなかったが。


もしも、少しでも「面白かった」「良かった」などと思ってくださいましたら

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