第七話
電車を降りて沢村と別れた時からずっと考えていた。沢村は一体何者なのか。一見、どこにでも居るような女子高生だし、霊狩人以外の人間からすれば変な雰囲気だってしない。むしろ、顔がいいもんだからモテそうだ。だが、自己紹介を聞いてしまった大多数の奴は「なんだアイツ」と思ったことだろう。2日前に島津に聞いたところ、その通りだった。
「島津、沢村をどう思う?」
「由紀?顔はいいし、性格もいいけど、特技の…霊狩りだっけ?それ以外は抜群でしょ。」
「ふーん、そう。」
「由紀が好きなの?」
「100%それはない。俺がそういう事に興味が無いのはお前も知ってるだろ?」
島津は俺の目を凝視してきた。疑ってるな、この野郎。
「まぁ、どうであろうと私には関係ないわね。でも知ってるからね。」
「何をだよ?」
「放課後に図書室に二人でいること。何してんの?」
「島津には関係ないんだろ。下らないことを尋ねるなよ。」
「はいは~い。じゃ、また明日。」
とまぁこんな事があった。
沢村がププを飼うことにした翌日、入学して8日が経過した。校内巡回、復習テストを無事に終え、いよいよ授業が始まった。本格的に高校生活がスタートしたと言えるだろう。
その高校生活の中心とも言える部活の見学は今日から始まる。俺は春休みから楽しみにしていたが、部活に入る事は出来なくなってしまった。隣の席に座る女子のせいでな。
昨日ププを抱えて上機嫌の沢村と別れる前に、部活の話を持ち出したとこを両断されてしまった。
「明日は部活を見に行くから、図書室は行けないぜ。」
「ダメよ。放課後にしか霊狩りできないんだから、部活なんてやってたら霊が人間界に現れるわよ。」
とのことで。
駅を出てからのいつもの道。日常の風景の中に、非日常の気配を感じた。この気配と同じ物に覚えがある。頭の中に鬼型の霊の姿が鮮明に蘇ってきた。まさか、今日も霊狩りをするのか。
俺の歩みは小さなコンパスでゆっくりになった。
教室には既に沢村の姿があり、俺に気付いて何か嬉しい事があったような笑顔で目の前にきた。沢村の口が開きかけたので予想してみた。今日は霊狩りするわよ、だろう。
「今日も霊狩りをやりに行くわよ。」
大体当たっていた。90点をくれてやる。
場所は分かっているし予想出来た事なので俺は軽く、そう、と返事をして次席に着いた。沢村は軽い反応を不思議に思ったようだが、俺の机を不法占拠しているププを撫でた。おいおい、連れてきてもいいのかよ。
「もし校内に俺達以外の霊狩人がいたらププが狩られるぞ。」
「大丈夫よ。保護〈プロテクト〉してあるから。それにこの学校にいる霊狩人は私達2人だけよ。」
確か保護〈プロテクト〉ってのは、霊力が出るのを押さえるんだっけ。
「この学校の外にはいるのか?」
「数人が日本国内にいるわ。逆に言えば霊狩人は外国にいないからね。」
そんなことも聞いたな。特定の条件があるってな。
今日の授業は全然集中できず、終わるのがとても早く感じた。妙な焦りをSHRが終わってもずっと抱えていた。霊が俺を見て、笑っているように思えた。
だが、霊の入口にいたのは霊ではなかった事を、俺は後になって知ることになる。
こんにちは。予定通りに日曜日の投稿です。
読んで下さった方は分かると思いますが、今回はあまり話が進んでいません。その分次回に力を注ごうと思います。
今後ともお付き合いお願いします。
小泉一輝でした