第一話
双志高校。家の最寄り駅から5駅乗った所にある普通の高校。推薦で合格したから、当然通う事になった。
入学1日目。体育館で行われた入学式の後、初日というわけで自己紹介の時間だった。出席番号順に、氏名、出身校と一言を添えておしまい。
俺は30秒程で終わらせて、ぼーっとしていると男子20人が役目を終え、今度は女子の番だ。
徐々に覚えればいいと思い、特別耳を傾けようとは思っていなかった。英語ではlistenではなくhearがこの場合は適切だろうな。
もし誰かに、
「あなたが変わる事になったのは、いつですか?」
などと聞かれたら俺は、
「隣に座っている、沢村という奴の自己紹介を聴いてしまった、今この瞬間だ。」
と答えるね。
これが、その自己紹介だ。
俺の隣の女子は担任から指名されると、他の人と同じように立ち上がって自己紹介を開始した。
「光陽中学出身、」
俺の住んでる市の学校だな。
「沢村由紀。」
ここまでは普通の自己紹介だった。
「特技、霊狩り。」
唖然としているクラスの全員の視線を、沢村は独り占めしていた。担任が次の女子を指名したところで、沢村はストンと静かに着席し、隣の俺に話しかけてきた。
「アンタ、霊狩人〈ゴーストハンター〉?」
「ゴーストハンター?」
「そう。違うの?」
「そんなもの知らん。何のゲームだ?お前正気なのか?」
「えぇ、正気よ。神に賭けてもいいわ。」
そこまで言うなら、本気なのだろう。だが、知らない事は知らない。
沢村は、俺を強く睨んできた。
「ホントにゴーストハンターなんぞ知らん。俺も神に賭けてやる。」
「おかしいなぁ、霊力はあるんだけど…」
「説明するならしてくれよ。」
「後でね。」
そう言って沢村は前を向き、俺はというと、腕枕の中でぐっすりと寝始めた。
これが沢村と俺との出会いだった。