第十二話
熱は完全に下がったわけではありませんが、書ききれました。
お待たせしました。
10メートル以上の巨体なだけあり、穴もかなり大きい。いっそのこと、トンネルと呼んでもこの二人は気にしないとすら思う。穴はかなり暗く、3メートル先がやっと見えて、右腕の紋章が互いを確認する唯一の目印だ。「腕章」という言葉がぴったりだな。
俺の後ろには、ププを頭に乗せた沢村、音も無く歩く一の順でついてくる。常に細心の注意を払っているため会話は、トンネルに入ってすぐに途切れた。
トンネルを歩き続けて20分程たっただろうか。光が見えた。霊は地上に出たのか。
3人が穴を出て辺りを見回すと、場所はすぐに分かった。沢村は先日来たし、俺は在籍していた。一に至っては来るのは2時間ぶりだな。
そう、北沢中。またか、と正直思う。だがそこらに霊は見当たらない。俺達三人は霊力を近距離で感じているはずだが、あの巨体を隠せる物などあるわけないさ。
戸惑っているうちに、地震がきた。昔の人は、地震は地下でナマズが動くから起きると考えたらしいが、今回はナマズなどではなく、別のものが動いてる。
それは霊だ。
地震と錯覚するならば、かなり浅い所にいるはずで、いつ襲われてもおかしくないのだ。それにこちらからは相手が見えない。
事態の把握ができた俺は叫んだ。叫ばないと地響きで声が聞こえないだろうな。
「どうすんだよ!霊がいないじゃんか!」
「仕方ないでしょ!罠よ!」
「よく考えてから行動しましょうよ!」
「一の言う通りだぞ、沢村!」
「とりあえず避難して!」
俺達三人は揺れる校庭を走り、中庭まで来た。確かこの辺が沢村が鬼型の霊を狩った場所だな。もう1週間経つのか。
感傷に浸る間もなく、校舎に入る。ここなら霊も襲ってこないだろう。
身を隠してすぐ、霊が校庭に穴を空けて現れた。霊は御丁寧に穴を塞いでる。あれだけ大きな穴だ。気付かないのも無理はない。
沢村が俺と一を手招きした。
「私が囮になるから、二人は校舎通って回り込んで霊を囲んで。そうすれば倒せるでしょ。」
だが、また先刻の二の舞を演じることになるぜ。俺と同じ疑問を一が聞いてくれた。
「穴掘って逃げられますよ?」
「よく見なさい、中庭はコンクリートよ。あれなら穴掘れないわ。」
それは認めよう。だが、
「跳ばれて校庭まで行かれたらどうすんだ?」
「跳ばせない。最初は足を集中的に攻撃、怯んだらトドメを。」
というわけで、沢村と一が体育館裏に、俺も体育館裏にスタンバイした。霊の入り口の中同士ならば、携帯電話は繋がる。沢村の声が聞こえた。
「いいわね。包囲作戦、開始。」