第十話
東京は雨が強かったです。
こんばんは。
なんとか、10分遅れで更新しました。10分ぐらいは許容範囲でしょう。
それでは堅苦しい挨拶はやめにして、
どうぞ楽しんでください
小泉一輝
一度霊の入口を出よう、という一の提案を受けて俺達三人+霊一匹は駅ビルのとあるファミレスで、ドリンクバーのジュースを時々口に運びながら霊について話していた。
「僕は去年辺りに霊狩人になったんだと思います。周囲には僕のような人はいなかったんですが、なんとなく突然備わった力の使い方を知っていたんです。」
沢村、お前はどうなんだ。
「私も似てるかな。誰かから話を受けたわけじゃないし、ある日突然だったからね。」
ジュースのボタンを押しながら、ふと考えた。ププは何を食べるのかね。俺達人間は野菜なり魚介類なり動物なりを食しているわけだが、ププに限らず霊はどうしているのだろうか。
席に戻ると一がこの一年にあったことを語り出した。
「今日狩ったやつも入れて、霊狩人になってから10体ぐらい狩りました。最初は怖かったんですが、すぐに馴染みました。先輩たちは?」
「私は30体ちょっとかな。この子は最近あったばっかり。」
ププを指さして言う。
「俺はププと同種のを100体ぐらいは狩った。
霊達は何のために霊界からやってくるんだよ?そもそも別世界の気配を感じられる霊狩人って何者なんだ?」
沢村は俺の質問で何かを思い出した様子である。
「いっけない、忘れてた。別世界の気配、霊力。こんなとこで話してる場合じゃないわ。すぐに行くわよ。」
沢村が慌てて荷物を手にどったところで俺も思い出した。
「そういえば今日も霊狩りだっけ?」
「そんなダラダラしてないで、すぐ動く。一刻を争うんだから。」
そんな俺と沢村の口喧嘩に、一が冷静に低い声で言ってきた。
「取り敢えず、外行きません?」
今朝沢村が霊力を感じたのは、双志高から電車で6駅、沢村の家が近いらしい場所。行こうと思えば俺の家から自転車で行ける、それなりに大きく更にはジャングルジムもある公園。当然か偶然か、3人とも霊力を感じ取っている。視界の端にププが怯えているのが映った。
「じゃ、いい?」
沢村は確認をとってから入退の呪文を唱えた。いつも思うが、なぜ一人ずつじゃないのかね。
霊の入口に入るのはいつものお決まりの感覚がきて、一瞬明るくなった後だが、今日は光の後に暗闇が訪れた。なかなか晴れそうにない。
理由はすぐに分かった。ここが霊の入口であることは、肌寒さや右腕の紋章が証明している。人間界の公園と作りは同じであるから、光を遮るものは一つしかない。
それは霊だ。大きすぎるぐらいの霊を前にして一が声を出す。
「でか。コレホントに狩れるんですか?」
「もちろん、3人でね。」
沢村は動揺の素振りをみせずに笑顔で答えた。頭上のププを心配してやれよ。怯えがかなりいってるぜ。
今回の霊は一言で言うと「熊」だな。第一印象がそれで、体長は学校の校舎よりも高そうである。指先には長く鋭い爪がついていて、口を閉じていても見える牙だけでも俺の身長はあるようにみえて、巨大と比べるとインパクトで数段劣る。
震えるププを公園の隅のジャングルジムの中心においてきた沢村が武器を出したので、俺と一も後に続く。
これで準備が整い、沢村は高らかに叫んだ。
「さぁ、いくわよ。」