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「じゃあ、行くよー」
私はユギと向かい合っている。
ユギは私の戦い方を見て、私と戦ってくれる気になってくれた。
私はワクワクして仕方がない。笑顔のまま、長剣を手に、ユギに飛び掛かった。
私との模擬戦をする人は、結構一瞬で負ける人って多い。私の素早さについていけない人とか結構いる。
だけど、ユギは違う。
いきなり私がとびかかっても対応できるのだ。
その事実に私は高揚した気持ちになる。
「あははっ、ユギ、楽しいね」
私がそう口にすると、ユギは何処か呆れたような表情を浮かべている。
私って戦うことを楽しいと思っている人間だ。それは昔から、お母さんとお父さんに戦い方を教わっていて、私にとって戦うことは……ずっと身近にあった。
それこそ本当に小さな頃からそうだ。それは普通の人とは違う暮らしだったようだけど、私は楽しく過ごしていた。
ユギは魔法も使えるのかな?
そんなことを考えながら、私は魔法を行使する。
いくつもの属性の魔法を一気に出現させる。そうすれば、ユギが目を見開く。
驚いている顔を見て、楽しくなる。私がユギの前で見せた魔物との戦闘では見せなかった、大量の魔法。きっとユギは私がこれだけ魔法を使えるとは思っていなかったんだろうなと思う。
なんだか驚かせられたことが面白くて、笑みがこぼれる。
――ユギも、私に対応をするために魔法を使う。
力強い魔力が、その場を支配する。うん、とてもゾクゾクするような魔力。
冷たくて、力強いもの。
良い魔力だなと、私は嬉しい。属性に関しては沢山ではなく、二つぐらいかな? それでもこの年でそれだけ使えるのは一般的に見て凄いことなのだ。
私が剣と魔法で、ひたすらに攻撃を繰り出せば――ユギはその対応で必死だ。
それでもこれだけ対応をし続けられることが本当に凄い。うん、同じ年頃でこういう風に対応できるのが凄い。
「わぁ」
私の魔法に魔法をぶつけつつ、剣に纏った魔力で弾き飛ばしたりしているのだ。
やっぱり凄い。
こうやって戦っているだけでわくわくするなんて最高だと思う。
「楽しいね、ユギ」
「そうか?」
「うん。私はこうやって戦い甲斐のある相手と戦えると、楽しいって思うよ」
私がにっこりと笑ってそういえば、やっぱり呆れたような目を向けられる。
ユギは戦うことが楽しくはないのかな? 冷たい目はしているから、強くなろうとした目的も楽しいものではないのかな。
私は両親の関係で、小さい頃から楽しんで戦闘を学んでいるけれど――、他の人はきっとそれだけが理由ではないのだ。
ユギはもっと楽しそうに笑ってくれたら、冷たい瞳ではなく温かい瞳を向けてくれたらどんなに楽しいだろうか。もっと楽しい表情を沢山見れたらいいなとそんな気持ちになる。
色んな表情を変えられるように、見れるようになれたら嬉しいな。
そんなことを考えながら、私は引き続き飛び掛かる。
その模擬戦は、ユギの体力の限界が来てから終わった。
「はぁはぁ……お前、体力ありすぎだろ」
「私はずっと、昔から体を動かしてきたからね。ユギはもっと体力つけたら持久戦でもっと沢山戦えそうだよね!」
息切れしているユギにそう言って笑いかける。
私はまだまだ元気である。体力づくりは必要だってお母さんも言っていたからね。
「ユギは強くなろうとはしているよね。なら、私と一緒に行動しようよ。そしたら多分、強くなれるよ?」
私はそう言って、ユギを誘う。
このまま後ろを付きまとう形でもいいかなとは思うけれど、どうせなら許可をもらって一緒に居られる方が楽しいよね。その方が色んな一面見れるだろうし。
私はユギがどんなふうに生きていきたいかとかは知らないけれど、それでも私ってユギの役に立つんじゃないかなーって思っている。私は多分、ユギよりも魔物の戦闘とかに慣れているから。
対人戦は模擬戦ぐらいしかないけれどね。
というか、ユギはどういう強さを手に入れたいんだろう?
そのあたりにもよるかもなと思ったりする。
「……たまになら」
「本当? ならよかった。幾らでも誘ってね。私、暇だから」
「……暇?」
「うん。私は自分探し中だから、時間は幾らでもあるからね」
私がそう言って笑えば、ユギが小さく笑った。でもすぐに無表情に変わる。
なんだろう、私に負けた人の中には自棄になる人とか、私の強さを受け入れない人とか色々いる。
あとは私がお母さんとお父さんの娘だと知ったら、だから負けたって言い訳にする人もいる。
……ユギはどうだろう?
私が英雄の娘だって知ったらそういう意味で受け入れるだろうか? 私が両親の娘だから負けたみたいにそういう風に思われるのはちょっと嫌だななどと思った。だって両親の娘だからっていうより、私の強さは私が頑張った結果だもん。