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魔法属性は火、水、風、土、雷、光、闇の種類がある。そしてその適性は白金、金、銀、銅で表される。
基本的に魔法を使える人でも一属性や、二属性しか使えない人の方が多い。だけど、私は全属性使うことが出来る。
お母さんは五属性で、お父さんは全属性使えるんだよ。
兄妹の中でこれだけ全属性使えるのは私だけだったりするの。しかも全部、適性高かったりするので、本当に私は両親から戦いの才能をふんだんに受け取っていると言える。
魔法を使うのも、特に何も考えてない。私自身が思うままに、ただやりたいように魔法を使う。
それだけで魔法というものは完成する。
そういう感覚で魔法を使うのって本来なら難しいんだって。
「ほら、見て。私、強いでしょ?」
私は魔物の屍の上に座っている。
ユギに私が凄いんだよって見せたいなと思ったから、敢えて魔物を沢山集めて全部倒したの。
魔法と剣を使って、全て息の根を止めた。
私は怪我一つしてないよ。このあたりに普通に生息している魔物だとそんなに危険はないしね。
「……お前、何者だ?」
私の実力を見たユギは警戒したように言う。
どうしてそんな目をしているんだろう? それにしても私がこうやって力を示すと、怖がる人も多いのだけど……ユギはそういうのではないみたい。それにしてもどうしてこんなに警戒しているんだろう? 何か誰かを警戒しなければならない状況にでもあるのだろうか?
「何者って、私はただのヤージュだよ? それ以上のなんでもないもん」
私がそう口にすると、なんとも言えない表情を浮かべられる。
「……お前は何か目的があってこの地にいるんだ?」
「んー。自分探し?」
「なんだ、それ」
「言った通りだよ。私ね、自分がどんなふうに生きていきたいか、将来のことが決まってないんだ。だから、何かやりたいこと見つからないかなーって」
私がそう言ったら、益々何とも言えない表情を向けられる。
「お前ほどの強さがあればなんだって出来るだろう」
「そうかも。でもその分、何したいかなって考えてるの。戦うのとかは好きだし、そういう道に進んでもいいなぁとは思ってるけど。でも私が実際にやりたいことってなんだろうって分からないからね! そう言ったらお母さんに辺境でしばらく遊んで来たらって言われたんだ」
「……なんだか、お前の母親もおかしくないか? この辺境の地は、自分探しの遊び場には適してないだろう」
ユギにはそんなことを言われた。
まぁ、確かにこの辺境は普通に考えたら魔物が多くて危険だ。それでいて王都のように栄えているかといえば違う。そういう場所に行く方が適しているのではないかと思っているみたい。
私の場合だと王都にはそれなりに行っているし、新しい何かを見つけるために辺境の地に行くのもいいかなと思ってお母さんに進められるままにここにいるわけだけど。
「お母さんは変わりものだよ。それでとっても強いの」
「……お前よりもか?」
「うん。私よりもずーっと凄いの」
お母さんの強さというのは計り知れない。
ずっと昔から、この国で英雄として活躍している。本当に凄いなと思って仕方がない。私はお母さんに勝てる気は全然しないもん。
「それは凄まじいな……」
「うん。凄まじい」
私にとってお母さんは自慢だから、嬉しくなってそう告げる。
「お前……ヤージュは家族仲がいいんだな。そんなに嬉しそうに母親のことを語るなんて」
「うん。私の家は凄く仲が良いからね。反発でもしようものなら、お母さんに怒られちゃうし。私は兄妹の末っ子なんだけど、私は姉達も兄達も大好きだから」
私がそう言ったら、ユギはまるで眩しいものを見るような目を私に向けてくる。どうしてそんな表情をしているんだろう?
「そうか……」
「うん」
でもなんとなく、ユギは家族のことは聞かれたくないんだろうなと思った。
私の家族はとても仲が良くて、不和なんて全然ない。兄妹喧嘩でもしようものなら、お母さんから鉄拳が下されるし。
ユギはもしかしたら家庭環境が複雑だったりするのかな……。
家族仲が良い私のことをそんな目で見るなんて。そういう事情も教えてもらえるぐらい仲良くなれたら嬉しいな。
そんなことを考えながら、私は話を変える。
「よし、話は終わり! ユギは依頼受けてるでしょ? 私は観察するね」
私がそう言って笑えば、ユギが小さく笑った。
ユギは全然笑わないので、小さくでも笑ってくれたことが嬉しかった。
その後にユギが冒険者としての依頼をこなす様子を見る。こうやって誰かが依頼をこなす様子を眺めるのも楽しいよね。
それにユギの戦い方って、見ていてワクワクするし。
あれだけ多くの魔物に囲まれても、荒々しくても、なんだか強い。余裕がない様子だけど、危なげはない。
強いっていうのは、それだけで魅力的なのだ。
解体とかも行っている。でも一部、素材をダメにする解体方法を行っていたから、私は指摘をした。
「お前、解体も得意なのか?」
「うん。お母さんに教わったから!」
私がそう言って笑うと、ユギは「お前のお母さんなんなんだ……」と怪訝そうな顔をしていた。