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4/28 二話目

「ユギ!! ちょっと話があるんだけどいい?」




 私は自分の気持ちを実感してから早速ユギの元へと突撃した。……お母さんがついてきているけれど、それは一先ず良しとする。だってお母さんは気になって私が駄目だっていっても見に来るだろうし。

 ユギはお母さんがこちらをのぞいているのは気づいていないみたい。




「俺もヤージュに話がある」

「そうなの? ユギからいう?」



 私は少しだけ躊躇して、そう告げる。



 だって自分の気持ちを伝えることは私にとって凄く緊張することなんだもん。

 それに私が告白した後だと、ユギも自分の話が出来なくなってしまうかもしれないもんね。

 私の言葉を聞いてユギは頷く。そして神妙な面立ちで告げる。





「俺は……この領地を継ごうと思うんだ」

「わー、いいね。ユギが領主になるのいいと思うよ」

「……ヤージュは簡単に応援するんだな」

「当たり前じゃん。なんで?」

「俺は平民として生きてきたから、色々足りない。父さんの血は継いでいても……生粋の貴族ってわけじゃない。だから反対したり、難色を示したり、俺のことを思うからこそ止める人とか、色々いるから。俺は領主を継ぐかどうか決めるために色んな人に話を聞いて、そういう言葉を沢山かけられた」




 ユギはそんなことを言う。



 まぁ、確かに考えてみればユギは平民として生きてきたわけで貴族の常識も当然知らないだろう。私達貴族は、様々な教育を受けるものだからね。私の家である……普通の貴族とは異なるフロネア伯爵家でもそうだったんだ。

 だから他の貴族だと余計に、周りからの……貴族らしかぬ行動を咎める目というのはあるかもしれない。





 幾らここが辺境の領地とはいえ、王都に社交界で向かうこともないわけじゃないだろうし。

 この領地でなら問題なくても、外に出れば問題かもしれない。

 あとはいきなりユギのような存在が領主になることで、反対するものはいるだろう。お母さんがそのあたりは認めるから数は少ないだろうけれど。





「周りが何て言おうとも、ユギはやりたいんでしょー? 他人の言葉よりも、本人がやりたいことを私は応援するもん。大変だったとしてもね、やりたいって気持ちがあればそれが力になるんだよー」



 私はユギがやりたいことなら、大変だろうとも応援するよ。

 好きな人が頑張ろうとしているなら、背中を押すのが当然だもんね。もちろん、大変だからって止めるのも愛情だろうけれど、私はユギが頑張りたいって言うのならば私はそれを支えたいってそんな風に勝手に思っている。



「……そうか」



 そう言ったユギは小さく笑う。



 私の返答がお気に召したのならばそれで良かったと思うよ。私はユギが笑っている方が嬉しいもんね!





「ユギがね、頑張りたいっていうなら私は手伝うよ。私はこんなのでも、伯爵令嬢だからね! ユギが知らない部分とか色々補助出来るんだよー」




 私が軽くそう言い切ると、「本当か?」とでもいうような目で見られた。普段の私を見ていると信じられない気持ちも分からなくはない。

 それでも私はちゃんと出来るもんね! 教師の人達にも問題ないって言われているから大丈夫なはず!





「ねぇねぇ、ユギ。次は私の話を聞いてくれるー?」



 緊張はするけれど、私はユギにちゃんと伝えたかったのでそう言い切る。



「いいけど、なんだ?」



 ユギは私がこうやって改まって話し出すことを不思議そうにしている。きっと私がユギのことを好きだなんてとてもじゃないけれど、考えていないんだろうなというのは分かる。

 きっと、ユギにとっては私は恋愛対象ではない。

 でもね、ユギなら……私が気持ちを伝えたら考えてはくれるんじゃないかなって勝手に思っているんだよ!

 そういうわけで私は意を決して口を開く。







「私ね、ユギのことが好きなんだよ?」

「は?」

「信じてない顔してる? 私はユギのことが好きだなーって気づいたから、ユギが良ければ恋人になって欲しいなって思っているんだけど」





 私は一気に自分の要件を言い切ると、ユギは固まる。




 私の言った言葉が予想外だったのだろう。あと、隠れているお母さんはなんとか騒がないようにしているのは分かるけど、顔が煩い。




「そう、なのか」

「うん。だからユギが私のことをどうしてもいやとかじゃなければ、考えて欲しいなーって」



 私はそう言ってユギの顔を覗き込む。



「……嫌ではない」

「本当?」



 私はユギの言葉を聞いて、自分の声が弾んだのが分かる。



「ああ。すぐには返事はできないが、考える」





 ユギがそう言ってくれたので私は嬉しくてたまらなくなった。

 ついでにいうと隠れていたお母さんもその時に飛び出してきた。嬉しそうに笑って、「良かったねー」と頭をわしゃわしゃされるのだった。



 そうして私は、領主を目指すユギの傍にいることになった。


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