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「さて、ここから侵入するよー」

「……お前、こんな時でも呑気だな?」

「まぁ、色々準備しているからね。上手く行かない確率の方が低いし。正当法で真正面から行くだと、やっぱりすぐに領主には会えなさそうだし、こういうのが一番いいよ」



 にこにこしながらそんなことを言う私を見て、ユギは呆れながらもどこか力が抜けたようだ。

 こういう様子のユギを見ると、私はほっとした。




 私とユギだけではなくて、フロネア伯爵家に仕える者も一緒である。

 領主は離れの……外から侵入しにくい場所で軟禁されているようだった。領主が軟禁されてしまう事態が起こったのは、ユギの存在も大きいらしい。




 元々領主は奥さんやその実家との関係が良くなかったようだ。




 それでいてこの辺境の地ではどちらかというと魔物を倒すことの方が重要だが、奥さんやその実家はどちらかというと貴族としての在り方を大事にするタイプみたい。それもあって話が合わないというのもあったみたいだ。

 夫婦になったのだからちゃんと話し合いをして解決をすればいいのになと思うけれど、話し合いでもどうにもならないことというのは存在するから仕方がないか。




「なんか騎士も多いね。やっぱり領主のことを奪還されるかもしれないって危機感はあるっぽい」

「それはそうかもな……。本当に大丈夫だろうか」

「まぁ、大丈夫じゃない? 向こうも領主を殺したいわけではないと思うんだよね。領主はこの領地で慕われているし、殺してしまったらそれこそ暴動がおこりそうだし。あとは人質としての価値も凄くあるだろうし」




 私がそういうと、「そうか…」と何とも言えない表情でユギは頷いた。




「ヤージュは貴族らしい部分はあまりないけれど、やっぱり貴族なんだな」

「うん。そうだよー。私はちゃんと貴族としての教育を受けている人間だからね?」



 私がそう口にすると、ユギは笑った。




 私の家はそういう強くなることばかりに観点を置かれているようなイメージを持たれているけれど、そうではないんだよね。

 お母さんはともかくとして、他はちゃんとしているもん。お父さんは私達がどういう生き方でも出来るようにきっちりと色んなことを教えてもらっているからね。




「お前達――」



 そうやって話をしながら進んでいると、使用人に見つかった。ひとまず、すぐさま気絶させる。



「ひとまずこれでオッケー」



 敵対する者の命を奪うことは、必要であればしなければならないこと。



 だけれども必要最低限、そういうことはしない方がいいと思っている。お母さんとお父さんも、そうはいっていたかな。相手がどれだけ自分にとって敵対するような存在だったとしても、その人を大切にしている存在は少なからずいる。だからこそ誰かを傷つけたり、殺したりするというのはそれだけ恨みを買う。




 私はお母さんとお父さんのように――自分の意思で何かを行うことはきちんとした覚悟を持った上で行うならいいとは思うけれどね。そうやって私の家族は選択して、ずっと進んできたはずだもん。

 それにしても戦う力のない使用人たちの姿もちらほらあるものだね。あんまり危険がある場にそういう人たちのことを置いておかない方がいいとは思う。だって領主を軟禁しているという状況であるなら、あんまりそういう事情を知らない人たちが傍に居ると大変なのにな。

 巻き込まれないようにってしないといけないのになーって思う。





「そっちは?」

「問題ない」

「ヤージュ様、こちらも対応終わりました」




 私の問いかけにユギやフロネア伯爵家から来た者達と一緒に奥へと進んだ。今の所邪魔をしようとしてきた人たちは全てどうにかした。

 こういうのは早急に進めるのが一番なんだよね。



 素早さこそが、問題を解決するための第一手。お母さんとお父さんは問題解決も早いんだよね。特にお母さんはあんまり時間がかかると嫌がる方だもの。うずうずして、我慢できなくなってしまう。でもそれでもきちんと解決できるのだから凄いと思う。

 私もああいう風にさらっとなんでも解決できるようになりたいなとそんな気持ちでいっぱいだ。




「ここじゃない?」




 そうしてそうやって進んでいく中で、私達は領主のいるだろう場所へとたどり着く。



 そこの周りには一見すると周りに人が居ないように見えて、潜んでいる人達はいる。

 その中には、魔法を使える者達もいた。

 私達を不意打ちで倒そうとしたのだろうけれど、まだ甘い。

 私はフロネア伯爵家でいつも、こういう訓練も受けていた。お母さんとお父さんはいつも私がこういうときに対応出来るようにしてくれていたのだ。




「甘いね」



 私はそう言って魔法を、その魔法使いへと向けた。



 そしてその魔法使いは、悲鳴を上げた。まさかこうやって反撃されるとは思っていなかったらしい。




 こうやって領主を軟禁するなんて大事をやっているのだから、自分では倒せない相手が現れるのも想定すべきなのになと思った。

 ひとまず他にも騎士や魔法使いが潜んでいたのでさっさと倒していた。




 ――そして私達は領主の軟禁されている部屋へとたどり着くのだった。


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