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 いざ、領主を助けようと思ったわけだけどどこから手を付けよう?

 こういうのは姉や兄達ならもっと得意だと思う。しっかり自立していて、自分の意思で歩いていて……私はそんな姉や兄達と比べると自分がまだまだだとそんな風にいつも思う。





 例えばお母さんだったら……私みたいに悩んだりなんかしなくて、もっと楽観的に全てを解決するだろう。私はお母さんに似ているとは言われるけれど、お母さんほど何も悩まないは出来ないんだよなーって思う。





 さて、領主周りの情報収集に関しては周りを揺さぶって情報を集めたり……、あとはフロネア伯爵家からの遣いの人に頼んで探ってもらったりしている。

 お母さんは力で全て解決みたいな感じの人だけど、お父さんはそうではない。お父さんは戦う力を持っているだけじゃなくて、ちゃんと細かい点にも気を配れる。フロネア伯爵家の密偵部隊とかもお父さんが作ったらしい。

 私がこの辺境の地で暮らすにあたって、心配して人を寄越してくれていたりもしている。あとはお母さんとお父さんに憧れている人は多いから、この街の冒険者ギルドに話を通して人を動かしてもらっている。






 ……冒険者ギルドのギルド長には、「マリアージュ様とグラン様の娘!? ぜひ、冒険者ギルドに登録を」なんて言われたけれど結局登録はしていない。報酬を支払うから領主周りの情報は集めて欲しいっては言ってある。






「……」




 ユギは領主の錯乱の件を聞いてから、黙り込んでいたり、考え込んでいたりする。やっぱり領主のことで本当に色々と思う所があるんだろう。



 私がもう少し待ってと言ったら、大人しく待っていてくれている。

 ――それは私に対する信頼が少なからずあるからだとは思う。私はそのことは嬉しい。ただあまりにも待たせすぎたり、結局領主をどうにも出来なければその信頼も失われるだろうけれど。




「ユギ、ご飯食べてる?」

「……ああ」

「本当? あんまり食べてないように見えるけれど」

「食べる気になってないんだ……本当に大丈夫か?」

「うん。というか、こういう時は食べた方がいいんだよー? だって食事はね、力の源なんだよ。だから元気がない時はより一層食べるべきだよ。色々買ってきたよ」




 この街は領主のことがあって、大分すさんでいる。空気も悪くなっていて、そのあたりはどうにかするべきだなとそんな気分でいっぱいだ。



 領主はとても慕われていた。

 だからこそ領主が錯乱したというのを信じられない人も居たり、本当に混乱しているみたい。

 私はこの辺境の地にきて、少ししか経っていないけれどそれでもこんなに領主が慕われているんだなというのがよく分かる。






 フロネア伯爵家の密偵達も使って、下手な暴動は起きないようにしている。

 だってこのままだといずれ限界は来る。とはいえ、そういう暴動が起きたら……余計に領主の身が危険になる。身柄があちら側にあるのが一番の問題なんだよね。




 命は失われたら二度と戻らないものだから、そのあたりは早急にどうにかしないといけない。

 私は一先ず、買ってきたパンなどをユギに差し出して無理にでも食べてもらうことにする。私が食べたいものを購入してばかりだからユギの好物がどれだけあるか分からないけれどね。

 私はユギにご飯を食べてもらいながら、パクパクと自分の好きなものを食べる。





「ヤージュは、元気だな……」

「こういう時は元気な方がいいと思うからね。それに結局焦ってもどうしようもないなら、ちゃんとご飯たべよう? 私はお腹すいているからいっぱい食べるよ」




 私が呑気に食べて、飲んでとしているとユギは吹き出した。



 なんだか気が抜けたらしい。うん、笑顔になってくれたなら良かった。やっぱり暗い顔をしているよりもこうやって笑っていてくれている方がずっといいよね。

 領主を助けることが出来たなら、もっとユギは吹っ切れてくれるかな?




 今はまだユギは落ち着いて物事を考えられる状況ではない。元々領主とのことがあってユギは焦りを見せながら生きているようだった。それがようやく領主と対面出来たのにも関わらずこういう状況になってしまったんだもんね。




 領主の問題をどうにかすることが出来れば……ユギはもっと笑ってくれるだろうか。

 もっと心に余裕が出来れば……ユギはどんな姿を見せてくれるだろうか。私はずっとそればかりを考えていた。




 さて、ユギを元気づけながら私は情報収集に勤しんだ。





 それで数日後には領主の状況が判明した。本当にお母さんとお父さんの下についている人達って優秀な人達が多いよね。私にとって自慢の人達だなって毎回思う。

 基本的にお母さんに憧れている人達は脳筋というか、あんまり深く考えずに生きている人の方がずっと多い。それでもこうやって頭を使える人もちゃんといるんだから層が厚いなと思ったりもする。

 早速情報が集まった私は、ユギにそのことを共有して――そして領主のことを助けに行くことになった。




 さっさと助けて、問題を解決しちゃおう!



 私がこうやって他家のことに関わるのはあんまりないことだから、少しだけ上手く行くかなとは思うけれど……まぁ、やるしかないよね。ユギのお父さんを助けたいのは私だし。


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