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「ユギ、ほら、見てみて」

「……危ないぞ?」

「大丈夫だよ。魔法でどうにでもするから」



 街から少しだけ離れた山。崖になっている部分に立ち、その場に美しく咲いている黄色い花を採り、ユギに見せる。

 ユギはなんだかんだ私のことを心配してくれていて、それが私は嬉しいなと思ってならない。




「……ヤージュは危険なことも本当に躊躇せずに行うよな。なんというか自分が行うことに対しての心配が全くないというか」

「私だって自分の命を粗末にしたいわけではないよ?」



 私がそう言ったら、本当か? とでもいう風な、信じてもらえない視線を向けられた。



 私は……というより私達兄弟はいつもお母さんの無茶ぶりに子供のころから付き合わされてきた。子供の頃だけ特別で、大きくなったら普通の人に変わったりするというのもよくある話らしい。

 だけれども、お母さんはいつだって何年経っても特別なのだ。



 特に私はお母さんの無茶ぶりについていけるだけの才能があったから、そういうのに連れまわされることが多かった。それこそお母さんが居なければ死んでしまいそうな……そんな危険な場所にだってよくいっていた。

 これまで生きてきた中で、私が死にかけるほど大変だったとそう言えるのはお母さんに連れまわされた時だけだ。

 私はそういう経験があるからこそ、なんというかよっぽどのことでないと危険だなと感じない感覚がある。ある意味、お母さんについて回ったから普通とは違う常識感覚になっているのかも!




「本当か?」

「うん。ユギは心配性だね? ユギも一緒にこうやって遊ぼうよ。ちょっとぐらい無茶をした方が強くはなれるよ?」

「……まぁ、それはそうだが。でもお前についていってたら命が幾らあっても足りなさそうだ」

「大丈夫だよ。私はまだ普通だもん」

「ヤージュが普通なわけないだろ」

「お母さんとお父さんに比べたら全然普通」




 私がそう言いながら笑えば、益々呆れたような目を向けられる。なんだろう、ユギって、私が幾らお母さんとお父さんのことが凄いと口もしても実感わかないのかも。

 まぁ、それが《炎剣帝》と《光剣》って呼ばれる存在だと知ったら別だろうけれど。



「よしっ、ユギ。折角だからさ、危険な魔物が居そうな場所行かない? 街の周辺だとまだ危ない魔物少ないでしょ? もっと泊りがけで出かけたら楽しいと思うよ。ユギが経験したことのないような刺激を与えられるよ?」

「……年頃の女が、異性と一緒に泊りがけで出かけようとするなよ。お前、その言い草だと普通に野営とかする気だろ」



 ジト目でその赤い瞳が私を見ている。

 やっぱりとても綺麗で、見ていて気分がよくなる。



「うん。野営しようよ。野営って結構楽しいよね。私、野営スキル結構高いんだよ?」

「いや、お前はもう少し危機感を持て」

「持ってるよー。私はユギに襲われたら全力で暴れて、抵抗はするよ? といってもユギはそんなことしないでしょ?」



 私はユギはきっとそんなことはしないのだろうなとそう知っている。でもまぁ、本当にユギが私のことを好きとかになって、そういう気分になったらそれはそれで考えるけれど。

 私がにこにこしながらユギに言えば、また呆れた表情を浮かべられる。



「……はぁ」

「ね、いいでしょ。行こうよ。まだまだ私は辺境の地で遊びたい場所がいっぱいあるんだよ。きっとユギと一緒なら楽しいからね」



 私がそういって何度も誘うと、ユギは頷いてくれる。



 なんだかんだユギって、押しに弱いというか、受け入れている相手には優しいというか、そういう部分があるよね。

 私はそういうユギの一面を知れば知るほど笑ってしまう。




「ユギはどういうところに行きたい? 私が全部決めちゃってもいい? ユギ的には何日ぐらい行きたい?」



 私は楽しくなって、いくつも質問をする。

 なんだろう、ユギは強いから一緒に泊りがけで魔物を倒しに行ったりも出来るんだよね。

 それも嬉しいことだ。

 家族達以外で、同年代で――こうして共に魔物討伐に行ける人ってあんまりいないんだもん。




「ヤージュが好きに選んでいい。ただ……あんまり危険すぎる場所は嫌かな」



 ユギにそう言われたので、ユギの意見を聞きながら場所を選ぶことにする。

 どこにしようかな? ユギはどれだけ野営とか慣れているかな?

 うん、そういうことを考えていると楽しみで仕方がないなと思った。



 私はそれから向かう先を決めるために、聞き込みなどをすることにした。



 折角だからユギにとって良い経験になりそうな場所がいいよね。私の方がずっと魔物との戦いは慣れているし。ユギに良いところを見せたいなってそういう気持ちでいっぱいになる。

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