アリアさんはやはり家が一番
学園生活、普通の人だったら輝かしい青春を想像し楽しみにすることだろう。多分
しかし、私アリアに関しては違う。私はこんな所には行きたくなんてなかった。家であの人「エピック」さんと家で暮らしたかった、とはいえ引きこもりというわけでもなく修行の為に外に出たりしていたり。(家の近くだけど)
そんな物で良かった私の人生、しかし今や学園などという忌まわしき場所に住んでいて授業を受けている。
内容も簡単な物ばかりとっくに魔術の基本原理とか能力の扱い方とか修行でやっている、そして私に寄ってくる虫はどいつもこいつも好奇心と下心満載である気持ち悪い、まあ私は顔が良いらしい...し?仕方がないことらしい。私はよくわからないけどエピックさんが言っていたからそういうことなのだろう。
「すまない、少しいいかな?」
そう言って私に話しかけて来たのは最下位クラスの担任ローレンスだ。私はこの男が少し苦手だ、だが尊敬もしている。
尊敬している理由だが、試験で成績が底辺だった生徒たちのクラス所謂最下位クラスを担当しているのだがそんな所を担当していれば必然的に成績優秀な者達に馬鹿にされるだろう。それに最下位クラスは貴族でありながら問題児が多いとのことで制御が効かないとのこと。
しかしそれでも、真面目に頑張って教えようとしている。そこは素直に尊敬できる、しかしどれだけ馬鹿にされても行動にいつも本気を感じる、嫌な顔ひとつせず。私はそこが苦手なのだ、何をどう思ったらあそこまで頑張れる?何を生きがいにしたらいつも本気になる?中々に気になる。
「あの...アリアさん?」
「ああすいません少し考え事をしていました。」
「そ、それでは要件をお伝えすると王子達が貴女に会いたいと言っていまし「断ってください」
「...あの「断ってください」
沈黙が続く。王子が呼んでる?知ったことじゃない、興味も利益も無いので行く必要もない。時間の無駄と言えるだろう。
「アリアさん、あの...私が怒られるんですが...」
「ですね、しかしそれは私に関係ありません」
「人の心とかは?」
「ないです」
「そこを何とかお願いしますよー、給料減らされるかもしれないんですよ私?本当にお願いします!」
ちょっと涙目になりながらも女子生徒の私に土下座する教師。なんとも滑稽で惨めな光景だが、こんなことされてしまったら私まで白い目で見られてしまう。
「...はぁ、わかりました。そこまで懇願されたらしょうがないですね」
実に不本意だけど周りの目があるので、さっさとここから離れたい。だから仕方なく言う通りにすることにする。チッ、ローレンスの策略は見事に刺さったな。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
当のローレンスの顔は、憎たらしいほどに笑顔だった。
世間体を気にして了承してしまったアリアは気晴らしに甘いものを食べようと街を散策していた、王都には初めて来たわけではない。幼くして母親を亡くしたアリアはショックでしばらく塞ぎ込んでいた、そんなアリアを見かねたエピックが気晴らしに街に連れてきたのである。
そこで見たものは何も知らぬ少女に輝きをもたらした、好奇心の発芽である。
それからというもの月に二日ほど街に連れて行ってもらい、次第に彼女は元気になっていった。しかし彼女の容姿は子供ながら美しく人目を引いた、そのせいで誘拐されたことがあった。その結果家が一番という結論に至ったのだ。
「...美味しい」
アリアの食べているのはいちごパフェである、この世界にはおよそ似つかわしくないものだ。因みにパフェ以外にもいろいろあり、シュークリーム、どら焼き、エクレア、羊羹などなど。
これは昔、突如現れたカミシロという人物がレシピを遺していった影響で今もなお人気な食べ物だ。
最初は貴族だけの高級品だったが、時代が流れて一般に普及した。
アリアはその常に変わらぬ表情により恋愛をするとか好物が無いなど、何も知らない人からは冷血女だと思われがちだが実際には普通の女の子、可愛いものが好きであり恋もする。しかし彼女はその性格から理解はされない、そして特に改善するつもりも無い。
「もし、そこのお方。同席してもよろしいでしょうか?」
声をかけてきたのは神に仕える乙女、シスターの格好をした女性だ。
「どうぞ」
アリアは少し迷ってから了承した、本来ならばどんな存在であれ一人で楽しみたいアリアは断るはずなのだ、しかしそれを認めたのは彼女が盲目であったからだ。目を常に閉じて話していて体が完全にこちらに向いていない様子からそう判断した。
障害者には優しく、そう教わったからアリアは席を共にした。
「ありがとうございます、心優しき人」
アリアはパフェを食べながら注文をしているシスターを観察する。黒く飾り気の無いその姿はまさに修道女だ、そしてやはり目立つのは閉じている目であろう。傷跡が無いことから察するに病気によるものだろうか。
「気になりますか?わたくしの目が」
「...まあ、はい」
「これはですね、呪いによるものです」
呪い、それは未知の力である。魔術が魔力を通して発動するものだが、呪いはそうではなくしかし源はわかっていない。
一説によれば人の業、怨嗟によるものと言われているが完全には言い切れない。
「昔とある魔物にやられまして...情けないことにその時に視力を奪われてしまいました」
とコーヒーを飲みながら言うシスター。
襲われたと言いながら何も感じてなさそうに言うシスターにアリアは違和感を覚えた、が昔のことならもう割り切っていると結論づけた。
「ふふ、心配なさらず。代わりに鋭くなったものがありますからね。...ねえあなた?こんな話をご存知ですか?汚染された聖遺物『天上への扉』天国の鍵とも呼ばれる代物を」
「聞いたことがないですね。なんですかそれ?」
世間話ですよ、と前置きを置いてシスターは語る。
「かつての英雄、最初の冒険者である『先駆者』オルが探索の果てに手に入れた聖遺物。それは豪華な装飾が施された鍵だったそうです。しかしオルはあっさりとそれを自身が作った冒険者協会に売ってしまいました。どうしてだと思います?」
「ふーむ、その聖遺物には呪いがかかっていたとか?汚染されたと言ってましたし」
「おっと汚染されたは余計でしたね。失礼しました、それは忘れてください」
「なら実は何の効果も無い、ただの鍵だったから、とかですかね」
シスターは一瞬驚いた顔をしたがすぐに微笑みに戻す。
「あらあら、殆ど正解ですね。厳密には効果はあるらしいのですが、オルは鍵を売る際にこう言ったらしいんです『人類には過ぎた代物だ、これは私達ではどうすることもできない。白き星が求め、次元が裂かれる暁には、これを譲ってやれ』と」
「なんだか具体的過ぎませんか?」
かつてと言っているのだから相当昔の英雄のはず、現在までそんなに残っているものなのだろうか
「......協会の力、ですかね」
なぜだか顔を逸らしたシスター、怪しい。何かを誤魔化している雰囲気がする。エピックさんも誤魔化している時はこんな感じだった。
「ふふ、まあそういう訳で今も鍵は協会本部が管理しているのですよ。」
「それは分かりましたが、結局何が言いたいんですか」
「言ったでしょう、ただの世間話とね。ふふ」
いつの間にかコーヒーを飲み干していたシスターはアリアのパフェの分のお金をテーブルに置いて立ち上がる。
「さてわたくしはそろそろ行きます、貴女に星の加護がありますよう」
そう言ってシスターは立ち去った。なんだか妙な気配だった、また会うことになりそうな気がする。
それはともかく、久しぶりに街を満喫できて楽しかった。ついでに奢られたので気分はとても良い。
もちろん家が一番良いけれども。




