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流刑地6 権能

蓄音機頭は大振りに斧を振って泣き女の背中に斧を食い込ませる。トレンチコートが返り血で赤く装飾される。そして食い込ませたまま泣き女を引きずり何処かに行こうとしている。

その際に泣き女は鍵山の方へと手を伸ばす、しかし腕が何本もあってもそれが届く事は無い。


「ァ...テ...」


泣き女は何かを喋ったようだがよく聞こえず一部しか聞き取れなかった。そして泣き女は蓄音機頭に引きずられながらどこかへと消えてしまった。


「終わった...」


鍵山は安堵の表情を浮かべる、やっと恐怖の元を倒せたのだから当然だろう。しかし何故か、心の奥で変な感情が湧いてくる。言語化は出来ないのだがどうしてこんな複雑な気持ちになるのかがわからない、我ながら気持ち悪いと鍵山は思った。


「素晴らしい」


二人が休息していると廊下の奥から拍手をしている音が響き、男が現れた。


「また...白い髪。最近よく会いますね。」


男の一部分が白く変色した髪を見て呟いた。前回会った白髪もろくな奴じゃなかったから今回も...あれ?これ私も適応される?...まあそれはともかく、今は敵の分析をしよう。

魔力量は私とそう大差がなかった、つまり私と同じように大規模な魔術を行使出来るということなので油断は出来ない。


「おや?もしかして同僚に会ったのでしょうか?そしてその様子を見るに...どうやら偏見を持たれてしまったようだ。どうか誤解しないで、私達天将はただ世界を長く存続させたいだけ。一部の天将は確かにクズ...失礼、好奇心旺盛なお方ですが、それ以外は自分の仕事をきっちり遂行しているだけ。かくいう私もここの管理人をしておりまして。あぁ申し遅れました、私流刑地の管理人兼第十天将ロマリスと申します。」


丁寧にお辞儀をして自己紹介をしたロマリス。マルシアスとは違い、邪悪さは感じられずまたなんというか善心?も感じられない。悪にも善でも無い、中立ということだろうか。


「はあ、でそんなお偉いさんが俺達に何の用だよ。」

「私はただ褒美を与えたいのですよ、楽しませてもらいましたからね。まさか核の影を退けるとは」

「へぇ?褒美くれるのか、じゃあさっさとここから出しやがれ」


金や能力が貰える、なんて褒美は糞に等しい。...やっぱりちょっと欲しい...いやいやいや俺の望みはここから出てアイツに会うことだけ!


「残念ながら無理ですね。だからその代わりなんですが...」


パチンッ!と指を鳴らした瞬間、鍵山は何処かに消えてしまった。


「消えた!?」

「ご心配なく、核の所へ行ってもらっただけです」

「...私をどうするつもりですか?」


一人残されたアリア、ロマリスは先程の魔術ではない謎の力を考慮すると、今の魔術が使えないアリアは勝てるかどうか怪しい。


「あまりやりたくはないのですが...仕事なので、死んでもらいます」


アリアの周囲に剣、槍、斧などの様々な武器が一瞬で生成され、矛先を向ける。


「魔術...」

「それは不正解ですね。私もここでは魔力は使えません、ここでは核だけがそういったものを使用する権限があるのです。私のこれは『権能』と呼ばれるもの。魔術とはまた違う力です」


権能、エピックさんが昔教えてくれたことがある。魔力を消費することもなくまた制限されることもない、無限に使用できる能力の最上位。

この男が本当にそれを持っているならば、もう勝ち目はなくなる。


「権能の事をご存知の様子。ご安心ください、完全なる権能を持っているのは主と龍のみ。私達天将は主より一部を借り受けているだけ、更に私は天将の中でも序列は最下位。そこまで強力なものではありませんよ。」

「どうしてそんなに不利になるような情報を、自ら晒すのですか」

「褒美です、彼だけに与えるというのは不平等でしょう?それに貴女だけ剣のみ、なんてつまらない。だから私の権能のこともお教えしましょう」


ロマリスの権能は『武器を生成する』である。武器種に制限は無く、一度に出せる数には限りがあるものの無限に生成が可能。宙に生成されるが、これは一度地面や壁に突き刺されば制御を失う。そしてそうなった武器は消えることはない。

武器の質は良くもないが悪くもない。だがそれでも無限に、というのは破格の性能だろう。


「ちなみに魔力が使えればもっと生成出来るのですがね。全く、私は管理者なのに魔力等が使えないなんてひどい話ですよね」

「だけどそのお陰で、私に勝ち目が出来ます」

「確かにそうですね、さて一体どれほどの勝率何でしょうねぇ。ではお話はここまで、戦いを始めましょう」


戦いの火蓋は切られた。

待ち焦がれた熱い戦いに、きっとなるだろう

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