流刑地5 誘導
アリアは地下空間を颯爽と駆け抜けていた。背後には泣き女、奇声を発しながら八本の腕を使いムカデのように這って追いかけてくる。
「アアアアアアアアアア!!」
「うるさいですね」
一瞬振り向きハンドガンを三発撃つ、一発は初めて使うこともあり明後日の方向に撃ってしまうが二発目以降は慣れたのか泣き女に命中させた。しかし命中はして当たってはいるが効果は薄い。
てっきり鍵山の時のように透けると思っていたが動揺している暇は無いので気にせず逃げ続ける。
そして恐れていた事が起こってしまった、そう行き止まりである。
かなり不味い状況だ。奴に物理は効かない、でもやれるだけのことはやる。火炎瓶を無意味だろうが悪あがきで投げてみる
「あ...アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
意外にも効果ありで隙が出来た、アリアは横から通り抜けまた走り続ける。しかし泣き女は火を使ったことで怒ったのか先程よりも激しく速く追いかけてくる。
アリアは全力で走るも魔力を使っていない素の身体能力では泣き女を振りほどくことが出来ず、追いつかれて押し倒されてしまった。
「...ッ!?」
多数の腕を使いアリアの足、腕、そして首を掴む。細い腕にもかかわらず力が強く何も動かせず、呼吸も出来なくなってきた。
「...ぁ...が」
息が出来ない。だがそれ以上にこの女に触れていることによって伝わってくる憎悪、そして悲しみが辛い。過去に何があったというのか、尋常ではない狂気だ...
そろそろ意識が薄れてきた...まだ死ぬわけにはいかないのに...
「テメェ舐めた真似してくれたな」
泣き女がその声に気づき、上を見上げる。するとそこには鉄パイプを持ったエピックが立っていた。
バットを振るように鉄パイプを振り回し、泣き女をふっとばした。
「ゲホッ...助かり...ました」
「気にしないで、さあ出口はすぐそこだ」
エピックはいつの間にか現れた正面の扉を指差した。それはここに入る時に見た地下への扉だった。
鍵山はビビっていた。地上に出る際に一人で上がって来たのだが、やたらと泣き女に至近距離で見られ続けた。特に襲って来るわけでもなくただ鍵山を見ている、それが恐ろしくてたまらなかった。しかもどういうわけか地下の構造が変わっていたので迷って滞在時間が伸びたのが本当にクソだなって悪態をつく。地下から出たらもうついて来なかったので心底安心した。
さて計画の手筈としては、まず鍵山は地下の入口付近で蓄音機頭を爆竹で呼び出し、アリアが来るまで拘束罠や銃を使ってひたすら耐えるというものだ。
そろそろアリアが安全圏から出てこちらに向ってくるので爆竹を起動して大きな音を出す。やがて奴の音楽が聞こえ始めた。
「ーー♪〜ー♪」
「来たなクソッタレめ」
あらかじめ仕掛けておいた罠の位置を確かめる、その行動は恐怖心によるものだ。口では強がっても、一発くらったら即アウトなのは流石に怖い。
音楽が消えた、しかしこれは遠ざかったのではなく瞬間移動していると鍵山はわかっている。
ガシャン、と後ろに置いた罠が起動する。急いで振り返ると蓄音機頭は罠に引っかかり動けなくなっていた、だがすぐに壊されてしまうだろう。その証拠に罠はもう壊れかけていた。
(早くしてくれえ!)
まだアリアは来ない、そして蓄音機頭は罠を脱し鍵山目掛け斧を振る。なんとか回避をして頭に鉛玉をぶち込む、怯むがそれだけだ。
それから数分。爆竹や罠、能力と今ある全てを使い時間を稼ぐ。もう尽きるというところでアリアが扉から出てきた。
「お待たせしました」
「遅いんだよポンコツ!」
口ではこう言っているが表情にとびきりの笑顔が浮かぶ。鍵山はアリアの方へと走った。
そして二体の化け物が出会う。泣き女は地下を出てアリアを殺そうとしたが蓄音機頭を見た瞬間、奇声は止まり怯えた様子を見せる。泣き女が地下に居た理由は蓄音機頭を恐れていたからだろう。
「ーー♪」
「ァ...ァア...」
蓄音機頭はアリア達を無視して恐怖で動けなくなっている泣き女の方へと歩きはじめた。




