時間の矢 友
目を開ける。すると友達二人とクラスの皆が見えた。
まだ全員が集団行動していた地点に戻ってきたわけである。そしてまたもや何かが減っていく感覚。
戻れるのは、後二回。
クラスの陽キャ達が騒いでいて、普段なら煩わしいのにこの時は、なんだか安心した。
「ごめん一木、中宮。ちょっとトイレに行ってくる」
「はぁ?お前出発前にしとけよ」
「ごめんごめん、今尿意が来てしまってね」
「仕方ねえ奴だ、待っとくから行って来い」「え、待つの?」
一木は意外とこういうところがあるよな、中宮は待つことに疑問を言っているあたり性格がわかるな。
こう言っては恥ずかしいのだが、なんやかんや大切な友人なのだ。
「...次は助けるから、今回はごめん」
「「え?」」
壮吾は走って何処かに行く。その後ろ姿を友人二人は怪訝そうに見つめる。そして何か悟ったのか顔を合わせ、互いに頷きあった。
クラスから早速三人が迷子扱いとなった。
「英雄様は観光中とのはずでしたが...」
「あー、城の中も観光してみたいと思いまして」
「なるほど!それは良いですね。では、立入禁止区域には入らないようにしていただければ自由に見て構いませんので」
「立入禁止区域?」
「ええはい、そこは神の領域なのでたとえ英雄様でも入ってはいけません」
衛兵が扉を開ける。
神の領域ね、行ってみたくもあるが危険かな。
とにかく今は情報、本が必要だ。
城の中を探索するが、いかんせん広いので見つからない。とそんな時に司教のおっさんが見えた。
「おや?外に出ていたのでは?」
「この世界の歴史が知りたいので、戻って来ました。ここに来れば知れると思ったんですけど」
「あぁでは図書室に行くといいでしょう。そこを右に曲がればたどり着きますよ」
灯台下暗しとはこのことだろう、なんだよ結構近かったのかよ。走り回って苦労した。
「ありがとうございます」
「いえいえ、では神のご加護を」
いい人なんだろうけど、なんだか胡散臭い人なんだよなぁ、おっさん。
これはアレだ、よくテンプレでは神は悪側の存在にされるからフィルターがかかってしまっているのだろうか。いやそんな事はどうでもいいよくて、てか図書室の扉が重い!
うんともすんともしない、教えはどうなってんだ教えは!?
「おやおや」
「苦労しているみたいじゃないか、壮吾くぅん?」
現れたのは友人二人、何やら変なポーズをして登場した。
「なんでここに...」
「意味深な事言われたらついていきたくなるのが人の性だろう?」
「詳しい事情は知らんが、お前を手伝うぜ」
こいつら...人の気も知らないで...
嬉しいじゃないか...
「せーの!」
三人で扉を押す。一人では力が足りなかったが三人だと違う。扉は開き図書室の全貌が見えた。とんでもない数の本があり、とても読み切れるものではない。
「見たか!これが友情パパワー!」
一木のボケを無視して創造神の歴史を調べるように中宮に指示をする。
ちょっと悲しそうな顔をするが構っている暇は無いのでさっさとやることをやる。今この間にもクラスメイトは殺されているのだろうか。
...確かに悲しいことではある、でも正直に言って、『どうでもいい』。自分でも最低だよなって思う、でも事実なんだから仕方ない。僕は友人を助けられればそれでいい。
聖人を気取るつもりはない。
「おい!これ見て見ろよ!」
中宮が見せてきたのは大昔にあった戦争についてだった。創造神と『破滅龍』の争いだ。破滅龍側は龍一匹と騎士が二人、対して創造神側は100万の軍勢。
結果は創造神の惨敗。軍勢は全滅して、相手には損害無し。
「こういうのって記録が改ざんされるのがテンプレなんだけど...珍しいね」
「他には?神に反逆した奴はいる?」
一木は本をめくるも頭をかく。
「うーむ、無いね。それっぽいタイトルは全部破滅龍の事ばかり」
これで決まりだ。紫のアイツは破滅龍に関わる仕事をしている。
だからなんだ、って話だが。これは見極めたかった、どちらにつけば生き残れるかを。
あと少しでも情報においての不利を無くしたかったっていうのもある。
「ん?」
ドタドタとなにやら廊下が騒がしい。すると衛兵が扉を開けた。
「し、侵入者です!今すぐひな...」
「はい案内ご苦労」
衛兵は首を180度回されて絶命した。
「やあ、さっきぶり」
「...ここまで来れるのかよ」
「苦労はしたよ?」
紫は銃を取り出す。
最初は壮吾を狙っていたが、彼の目に何かを感じたのか狙いを一木と中宮に定めて、一瞬にして殺される。
壮吾は内心申し訳なさを感じつつも紫から目を逸らさない。
「君、何か言いたい事あるでしょ」
「ああ、取引がしたい」
「へぇ?」
「まず、アンタは破滅龍の仲間...だろ?」
「さあ?どうだろうね。そんな事を言うって事は証拠はあるのかな?」
壮吾は紫が手に持っている銃を指差す。
「ソレが証拠だ。本に書いてあったんだ、『異世界のものを呼び出すのは神の御業』ってな。そして、その銃は異世界の物だ。この世界には魔力があって能力があるから、機械というものは生み出されることはまずないはず。というかこの国に無い事が機械が無いことの証明になる」
神の座す国なのだから発展はしているはず、なのに機械類が無いということはそういうことなのだろう。ここに来た時に法律を見せられたがどこぞの教えのように機械禁止、なんてことも書いてなかった。
「で、破滅龍は神と同格もしくはそれ以上。ならば同じく異世界のものを呼べる。はず...多分」
「...いいよ、認めてあげる。僕は破滅龍の陣営に属するものだ。」
「やっぱり!じゃ、じゃあ提案があるんだけど」
紫は手でどうぞ、というジャスチャーをする。
「アンタは僕達を厄介、邪魔だから消したい。特に僕の能力は。」
「そうだね、折角何かを成し遂げてもそれをチャラにされるのは悲しい事だ」
「それが味方側に来たとしたら、相当なアドバンテージだと思うんだけど。どうだろうか?」
「......ふーむ。こちら側に来たいと?それは、自分が生き延びたいから?」
何言ってんだこの人。今までの事を考えたら理由はそうだろう。生きたいからそっちに行くって言ってんのに...
まあ、でもそれ以上に...
「それもあるけど、やっぱり一番は友達と楽しく生きたいんだ。」
これは持論なのだが。人生において家族、親友、恋人は同価値だと僕は思っている。若干家族が上かもしれないが、それでもどれも人生を彩ってくれる存在であることには変わりがない。
「友達...友か......」
今までに無い反応をみせる。いつもふざけた雰囲気を醸し出していたのだがこの時はそんなことはなく、何かを懐かしんでいる様子。
何か地雷を踏んだか?と警戒するがその心配は不要だった。
「...うん良いよ。仲間にしてあげる」
「あっさりしすぎでは?」
「いやあそんな事は無いさ。それに条件として君の親友以外の無事は保証しない、がついてくるけど」
なんだ、全然良い条件じゃないか。
「構いませんよ、それで」
「え、ほんとに?『皆を僕が助けるんだ!』みたいに思わない?」
「思いませんよ。はっきり言って友達とか家族以外はどうでもいいので」
「変わってるね君。僕が言えたことでもないけど」
確かにこの人ほど変わっている人は早々居ないだろう、格好的に。
「じゃあ、そういうことなんで。早く殺してください」
「...ん?なにを言っているのかな、もしかして勘違いしている?」
勘違い?僕の能力は死に戻りではないのか?
でも今までは死ぬ間際で戻っていたからてっきりそうだと思ってたのだけど...
「僕の能力は死に戻り的なアレじゃないんですか?」
「違う違う。君の能力は時間線の移動...いや、時間の矢で例えようか。知ってる?」
「なんとなくは」
「時間は常に矢のように進む、君は世界ごとその矢先を過去に移動させれるってこと。そして記憶は君以外消される、一部例外を除いてね。要は『巻き戻し』って考えたらいいよ」
「じゃあいつも死ぬ間際に発動するのはなんなんですか」
「僕が観察した限りでは、それは発動条件が関係しているね。君が最も覚悟がキマっている時にそれは発動する。やってみなよ?」
目を閉じて集中する。
しかし命の危機というわけでは無いので中々決意が固まらない。
「参ったね」
とそこに、紫の身体から声が聞こえた。紫はどこからか無線機を取り出して応える。
『聞こえてますか?』
聞こえてきたのは女性の声、可愛らしくも強さのある声だった。
「聞こえてるよー」
『あら?どちらさまでしょうか?』
「ん?ああ、ちょっと待って。んン゙!よし、はい戻りましたどうぞ?」
男の声から一変、男女どちらとも聞こえるような声になった。
(多芸だなこの人)
『そんな事も出来るのですね。それはともかく、天将達が向かって来てます。いつまで城内におられるつもりですか?」
「あー、了解。すぐ撤収するから引き続き監視を頼む」
無線の切り懐にしまう。
そして早足で壮吾の方へと近づく。
「悪いんだけど、君の能力を改造させてもらうよ」
「は?改造ってどういう...」
紫は壮吾の腹を勢いよくぶん殴り、壮吾は倒れ伏す。
「ああ、そうだ。僕はエピックって言うんだ。これからよろしくね」
遠のいていく意識の中で、その自己紹介は記憶に残った。
そして次に目を覚ますと、召喚された地点に戻っていた。




