流刑への誘い、そして二年前
あれから一日。今は混乱は収まっている、あの時私が黒い箱を機械に入れた瞬間、街中に声が響いた。殺人鬼など存在せず自分の死に場所が欲しかったから、自分は戦って死んだとのこと。次に皆に対して混乱を招いてしまったことへの謝罪だ。
私としてはそもそもエピックさんを巻き込まないでほしかった。でももう過ぎた話なので、気に留めないことにする。
と考え事をしていたら正影さんが来た、昨日は「疲れた!」と言って早々に宿に帰ってしまったのであの男がどんな奴だったのか、何者なのかはまだ聞けれていない。そういえばフレドさんはどこに行ったのだろうか?
「あー落ち着いて聞いて欲しんじゃがな」
正影はアリアに伝言の事を伝えた。
「王族を使った...実験?」
正影からもたらされた情報は予想外のものだった。
王族...私に伝えられたということはつまりクロム達のことだろう。実験...確かに違和感はあった。あんなにお母様を愛していた王が処刑までするなんて考えづらい。となると皆を不幸にしたのはアイツってこと?いや、そもそもの元凶は別か。あのクズは多分お母様の冤罪に便乗しただけだ、アイツが私の...あまり言いたくないが父親ならもっと別のことを言うだろう、ちょっと話しただけでわかるあの邪悪の塊がその事を嫌がらせで言わないわけがないから。
「儂は何の事かさっぱりなんだが、何だったんじゃ?」
「...いえ、因縁が出来ただけです」
「ふーむ?よくわからんが大変じゃなお前さんも」
「そうですね。考える事が多くて大変です」
「...ふむ。ならば飯を食いに行かんか?」
そう提案したのはこの先も困難な道を歩むであろうアリアを今は良い思いをしてほしいと思ってのことである。若者に食わせたいという老人特有の思考も何割か入っている。
「私をご飯に誘うということは勿論、わかっていますね?」
「ん?あー分かっておるさ。儂の奢りじゃ、存分に食え!特にお前さんのような若いもんははな」
「ふふ、よく分かっているじゃないですか」
その後、アリアは沢山食べた。人の金で食う飯はとても美味く充実した時間だった。
正影は思ったより食べるアリアに驚きつつももっと食えと促す。無駄にお金は沢山あったので消費するには丁度良かった。
数時間後
私達は星空の下にいた。依頼に記されていた報酬は本で、その内容は己の内に秘めたる物を引き出す方法と変な絵が書かれていた。
本に記されていた文章を簡単にまとめると、『雲なき夜空に自らを晒し、星を見つめたまえ』と書いていた
変な絵に関しては何なのか検討もつかないので考えるのは保留とする、フレドさんに聞いてみようかな。
ともかくこうして夜に近くの草原にいる理由は、私に関する情報が欲しいからだ。
己の秘めたるものが何なのか、どうしても知りたい。
アリアは早速試すため近くにあった木の椅子に座り星を見る。
(なんでこんなところに椅子が?)
と思ったりしたが細かいところは気にしない
「おや?皆さん何をして...」
フレドがやってきた。最初はいつもどおりの口調だったがアリアがしていることに気づき、徐々に声に焦りが出てきて...
「待った!?今はまずい!」
「え?」「え?」
アリアと正影、二人が同時に疑問符を浮かべた
そして急いで中止しようとしたが、アリアの腕は闇から現れた何者かの腕によって掴まれしまい、そのまま引きずり込まれてしまった。
「しまった...」
「な、何かやらかしてしもうたか!?」
慌てふためく正影、オロオロとしてしまう。
「困りましたね、流刑地に行ってしまった...」
フレドは手を頭に当ててどうしたものかと悩む。
「ど、どうしてこうなったんじゃ?」
状況が読み込めていない正影はフレドに問う。
「貴方達の行おうとしていた儀式は、魂と向き合い潜在していた力を呼び起こすもの。星空を鏡面とし自分の魂だけを反射することでそれを可能とさせる、しかしそれ故に魂が無防備になってしまいます。平常時ならば問題は無いのですが、今は死者を弔う世界...いえ今は流刑地と呼ばれる世界がこの世界に近づいていましたので、一時的に魂だけとなった彼女は死者と誤認されてしまったのでしょう」
「事情は分かった!流刑地とやらに今からいけんのか!?」
「無理ですね、招待されなければ生きたまま入ることは不可能です。死ねば行けるのですが...まあ死ぬわけにはいかないですし」
「うーーーむ」
どうしよう、と頭を悩ませる二人。とそんな時、近づく人影があった。
「あ、やっぱり悩んでいる。でもなんか近づきずらいな、どうしよう」
その少年は、三人を手伝ってと頼まれやって来たが中々言い出せずにいた。その理由だが、彼は俗に言う陰キャに分類されるので初対面の人とは話しかけづらいのである。
なんとかあっちから気付いてもらえないかな、とソワソワするがあの様子だと無理だ。
だから勇気を出して話かける。
「あのー」
「あ、何じゃお主」
そう問われて少年は名を名乗る。
「えっと、僕は高垣壮吾って言います」
「はぁーー」
大きなため息を吐くのは少年と呼ばれている騎士である。
「どうしたの、そんなでかいため息ついて」
エピックは肩を落として落ち込んでいる騎士に向かって問いかける、といってもだいたい分かっているが
「いや、本体の天将を殺せるチャンスだったのに、まんまと逃げられてしまいましてね...」
「ブハハハハハ!!君の方がw圧倒的に強いのにw逃げられましたぁ!?ハハハハハ、でなんで第四程度に逃げられたの?」
急に真面目なトーンになって問いかけるエピック。
「あんたのそういうところ怖いですよ、切り替え早すぎ...。まあ単純な話、アレの実力が上がっていた。それだけです」
とはいえ情けない、格下に致命傷も与えず逃げられるなんて。恥だ...
「ふーん?ま、それはいいとして。少年、僕に何か聞きたい事あるでしょ?」
凹んでいる騎士の為に話題を変える。
「よくわかりましたね」
「長年の付き合いってやつ」
騎士は黒い剣を布で拭きながら質問をする。
「あの連れてきたひよっこは何なんですか?あとあれ、教団によって召喚されたもんですよね?不味くないですか」
「あー、大丈夫だよ。彼の能力は改造したからステラの野郎も追跡出来ないだろうし、なにより互いの合意のもと協力関係を築いているからネ」
「それなら良いんですけど...、いや彼平和な世界から来たんですよね?いくら能力がちーと?でしたっけ、それだけならこの先生き残れませんよ?」
騎士がこんなに言うのは心配からだ。別に他人がどうなろうが知ったことではない、だが目に見える範囲で自殺するような真似は見過ごせない。
「心配は無用、彼は平和ボケしている割には中々に面白いからね」
「へぇー?じゃあ聞かせてくださいよ、彼がどんな奴なのかを」
「おいおいおい、長くなっちまうぜ?それでもいいなら聞かせてやろう、アレは二年前の事」




