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時計塔前の戦い

アリアは急いで時計塔に向かう、別に急がないと不都合な事は無いのだが一刻も早くエピックに罪が無い事を証明したいので全速力で進む。

正直エピックが人を殺そうが罪を犯そうが実はどうだっていい、とアリアは考えている。そんなものでアリアは態度を変えないしエピックに湧く感情は不変なのだ。しかしエピックが悪く思われるのはいい気分ではない。

時計塔前に着く、中に入ろうとするが衛兵がいて入れない。無理矢理通ってもこの混乱の中で不審な行動を取ったとされ後々面倒なことになるのは目に見えている、どうしたものかと悩む、空は飛べないし隠密系の魔術は習得していない、できることといえば大規模な破壊とちょっとした破壊だ。

とそんな時、話しかける男がいた。

「そんなところで何しているの、お嬢さん?」

話しかけてきたのは白いフード付きのマントを着た男だった、顔がよく見えず声で男だとわかる。

「時計塔に入りたいのですが、見るからに入れなさそうなので困っているのです」

男は顎に手を当てて答える。

「ははぁなるほど、じゃあさ僕が入らせてあげるよ」

「対価はなんですか?」

「お、話が早いね。まあ一つ教えてもらいたいだけだよ。」

「...答えれる範囲なら」

「じゃあ早速、君は何の用があって時計塔に入りたいのかな?」

嫌な予感がしたので答えず黙る。

「あれれ?もしかして人に言えないような事をしようとしてるのかなぁ?」

問い詰められて追い込まれる、ここでこの男を黙らせようにも周囲の目がある。とそんな困った状況の中こちらに走って向かってくる人影が現れた、おそらく正影だろう。

男もそれに気付く

「おや?あれは君のお仲「華契(はなちぎり)」」

向かってくるやいなや見えない斬撃を男に放つ、地面は抉れて煙が立つ。正影はアリアの前に庇うようにして立った。

「時計塔が壊れたらどうするんですか!」

「心配は不要よ、だって儂強いから加減の調整は容易い」

そんな事を話しているうちに煙からムクッと立ち上がる影があった。煙が消え男の姿があらわになる、白いマントは無くなりその天使のような羽と白い髪が見えた。

「私と同じ色?」

「...あぁやはり、そうだと思ったわい」

先程の斬撃で衛兵が集まってきた、正影はこれを好機と思いアリアに時計塔に入るように言う。

「...私だけ除け者じゃないですか、何も知らない」

皆いろいろな事を知っている、私だけ情報が無い。エピックさんも教えてくれないし、私はただ言われた事をやっているだけだ、それがなんというか上手く言えないけど、多分寂しいと感じる。

「ハハハ、それは悪いと思っている。だがこいつは、こいつらは儂がぶち殺す」

今までの好々爺とは一変、ドスの効いた声で殺害宣言をする。そのただならぬ雰囲気にアリアは思わず黙ってしまう。

「おっと怖がらせてしまった。まあ、お前さんの感じる疎外感はもっともだが、今ここで知る必要はない。おいおい知っていくはずじゃ、だからお前さんは暗闇の道を進めい。心配することは無い、お前さんには助けてくれる人がいるからの」

アリアはその言葉に元気をもらった。

エピックさんからはいつも褒められてはいるけど、なんだか新鮮に感じてその...嬉しい。

「わかりました、私の道は知らないことばかりですが星を頼りに暗闇を進もうと思います」

アリアは時計塔に向かう、珍しいことにアリアは一瞬だが微笑んだ。




「ふあ〜あ、あ終わった?なんだか悩んでる孫を励ます爺さんみたいだったね」

「フンッ、わざわざ待ってくれるとはお優しいことじゃのう」

「あ、わかっちゃうかあ。僕優しいんで」

と軽口を叩いていると大人数の衛兵が二人に向かってきた。

「んー、面倒」

男は腕を上げて衛兵に向かって何かをしようとする、そうはさせまいと正影はその腕を掴んだ。

「お前さん、アイツらに何をしようとした?」

「何ってわかってるでしょ?解放してあげるんだ、この世からね」

「ああやはり、お前らは外見だけ取り繕った外道よな」

正影は男を蹴り上げて空高く打ち上げた、そして

華契(はなちぎり)

斬撃を空中に二発三発と連続して放つ、男は身を翻して躱し屋根に立つ。正影も飛んで屋根に着地する。

「そうそう名乗ってなかったね、僕はマルシアス。第四天将マルシアスさ、君の名前は?」

「お前らに名乗る名なぞ無い」

「辛辣だね、僕達は世界を良くしようと頑張っているのに」

シクシクと泣いている動作をする、その行動に正影は一層嫌悪感が強まった。

(ま、儂はこいつらの事はあんまりよく知らんがな)

こんなにも嫌いという感情が出るのはこの鎧に刻まれた記憶によるものだろう、正影は影響を受けてこんなにも殺意が湧き出る。

「すぅーーーはぁーーー」

深呼吸、別に呼吸をする必要は無いが一旦冷静になるためにする。

「お前さん方、危険だからあっちに行っておれ」

衛兵達はコクコクと頷き、全速力で逃げて行った。

「さて、華契(はなちぎり)

「おっと」

マルシアスは虚空から槍を取り出し、見えない斬撃を弾く。魔力や能力を使わない技なので非常にやりずらい、こうして対応出来ているのは大昔に何度も見たことがあるからだ。

それでも力加減によって威力速さ大きさが異なるのでやっぱりやりずらい、しかも華契(はなちぎり)は一発撃って隙が出来る技ではなく連発が可能でそれが強さに拍車をかけている。

なんとか斬撃を躱し弾き、射程圏内まで辿り着く。接近戦なら槍であるマルシアスの方が有利、とはならない。何故なら近距離でも予備動作無しで華契(はなちぎり)をバンバン撃って来るのでリーチ差なんて関係が無い。

ジリジリとマルシアスが追い詰められていく、だがマルシアスもやられっぱなしではない

「天雷」

飛び上がり槍に雷を纏わせ突きを放つ。

正影はその攻撃に対して何か技をぶつけることもなくじっと待って、そして槍が自身を貫く直前ギリギリで体を横にずらして躱し、そのまま槍の持ち手を左手で掴んで右手の『葬魂』でマルシアスを斬った。

肩を深く斬られたが、痛みを感じている様子も無く即座に蹴りを入れる。正影は腕で防御した、ダメージは無かったが距離を取られてしまった。

「そろそろ僕の力をお見せしようか」

マルシアスは天に向かって手を伸ばす。すると局所的に晴れていた空が完全に曇る。

「荒天」

急激に街一帯が暴風と豪雨に包まれる。

「天候操作か、面倒じゃのう」

正影が心配しているのは自分の事ではない。雨による視界不良で間違えて街に被害を出してしまうことを心配しているのだ。

「余裕だね。余程自信がお有りのようだ」

豪雨の中でもマルシアスの声はクリアに聞き取れた。

「はっ、お前さんの声はよく響くのお。雨の音を聞いとるの方がよっぽど良いわい」

「酷いなあ。折角声が通るように空気を調節したのに」

マルシアスは手を横に振る、すると地面から人の形をした影が出てきた。それは幻などではなく実体を持った影だった。

「お前さん特有の力か」

「そうとも!借り物でほんの一端しか引き出せていないけどね。ま、楽しんでよ」

正影は察する、これは自分を混乱させる罠だと。この激しい嵐の中、影と人の区別は難しい。そして一般人には攻撃することは出来ない。

迷いを生ませ、その隙に正影を倒す算段なのだろう。

しかし正影は視界に頼らずとも気配や悪意などで探知することが出来る。意思なき影たちにはそれらがない、故に正影にはその戦法は効かない。

だがそんな事は予測済みのマルシアス、そこらに居た衛兵を拉致してきて自身の前に座らせる。これで例え斬撃が放たれても自分も食らってしまうだろうが嫌がらせをすることが出来る。

(さあ斬撃を撃ってこい)

「甘いな、お前達の考えは知っている」

「へ?」

正影は直接刃を突き立てた。心臓を貫きそしてそのまま体の中心、核がある所まで引き裂いた。

「居る場所がわかっとるんじゃからわざわざ斬撃なんぞ飛ばさんよ」

マルシアスは魔力で作っていた血擬きを垂れ流す。

「ハハハ、やるねぇ」

膝をつく、致命傷でもう戦えないだろう。いつの間にか天候は雲一つ無い晴天になっていた。

「でもやられっぱなしは癪だよね」

マルシアスは服の中から見せつけるように何かを取り出す、それは起爆装置だった。

「...!」

正影は起爆装置とは知らないが嫌な予感がして、すぐにマルシアスの腕を切り落とそうとする。

しかし一歩遅かった、正影では間に合わないだろう。


「出力調整完了、風速計算完了、軌道確認終了」

弓を構え、赤いマフラーの黒騎士は弦を最大まで引き絞る。

「我が弓は外すことなし」


(駄目か!?間に合わん!)

正影が諦めかけた瞬間、閃光がマルシアスの腕を貫いた

「矢!?」

マルシアスが驚いた、そして正影によって首が斬られ生首となる。

「あーあ、殺されちゃった。グスッ、あんまりだ〜〜!」

「下手な芝居はやめることじゃな」

「なんだ知っているのか、僕が本体じゃないこと」

生首になってもまだ喋る、だが今にも消えそうになっていた

「しかし残念だよ君の本気を見たかったんだけどね」

「次はもっとマシな分身を寄越すことだな」

「ハハ、そうするよ。そうだ一緒にいたお嬢さんに伝えてくれる?」

「...なんじゃ」

ニタリと不敵な笑みを浮かべ。

「王族を使った実験は、面白かったよってね」

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