浪漫武器
「ほれ着いたぞ」
二人を連れてきた正影、フレドの様子は相変わらず呆けているがアリアは割り切ったようで元の状態に戻っていた。
「鎖...本当に動くんですか?」
「まあ見ておれ、来たぞ!」
そう叫ぶと鎖は音を立てて近寄って来た、正影が手を出すと頭?をのせる。
「なんだか...可愛いですね」
「そうじゃろ」
正影は鎖を見てふと思い出す、そういえばあの子もこんな風に懐いていたなと
(何しとるんじゃろなあ)
フレドの話から恐らく今も生きているのだろう、そしてこの鎧の記憶をみても相当な研鑽を積んだのだろう。しかしいつになっても、心配なものは心配なのだ
そんなことを考えている隙に鎖はいつの間にかフレドの足元に移動していた
「...?」
うわの空なフレドは足元の感触が気になり目を向ける
「これは...」
フレドは鎖に触れる、そしてとある思いが流れてくる
「......そうか、逝ったのか。フッ、馬鹿だよ本当に馬鹿だ」
フレドは鎖を丁重に持ち上げる、別れは必然で破滅は必ずやってくる。だからせめて亡き友の安寧を願おう
「失礼、醜態を晒してしまいましたね。」
正影に鎖を渡す。
「それはきっと貴方達を良い方向に導くでしょう」
「お前さんはどうするんじゃ?」
「何、友人に会いに行くだけです。解決する頃には戻りま—」
そう言ってフレドは何処かへと向かおうとした、しかしそこで異変が起こる。正影とフレドが周りを見ると全ての生物の動きが止まっていた。アリアさえピタッと動きが止まる、今この瞬間動いているのは二人だけ否コツコツと靴を鳴らして誰かが近づく。
黒いシルクハットと茶髪はそのまま、服は黒いスーツに変えた情報屋ゴーストである。
「お前は.....」
「誠にすまないと思っているよ、フレド殿」
胸ポケットからペンを取り出しその先端を脳へと向ける。
「『忘れたまえ』」
そう言われた直後、フレドの意識がブラックアウトする。そしてゴーストはフレドを担ぎ上げると正影の方を向いた。
「この事は内密にお願いする」
「馬鹿言え、わざわざ見逃すと思っとるのか」
ふぅ、とゴーストはため息をつく。
「私はあなた方の敵では無い、中立...いや味方寄りだな。」
「それを信じるとでも?」
「いいや、だからこの情報を言おう『村正』」
「なんじゃと!?お前さん今!なんと言った!?」
「私はそれを断片的にしか知らない、教えてもらっただけだからな。だが貴方ともう一人はそうでは無いだろう?」
正影は押し黙る。そのもう一人に心当たりがあるからだ。
「これで理解しただろう。では適当に誤魔化しておいてくれ」
ゴーストはコツコツとフレドを担いだまま停止した世界を歩いた。
しばらくして時間停止が解除される。
「ん?フレドさんは何処に...?」
アリアからすれば唐突にフレドが消えたので困惑するのは当然だろう。
「......フレドは瞬間移動して行ってしまったぞ」
「そんなに急いでいたようには見えませんでしたけど?」
「歩くのが面倒になることもあるじゃろう」
「...何か隠しています?」
冷や汗がダラダラと全身に溢れ出る。声が裏返りそうになるのを我慢して頑張って答える。
「いいや?全く」
アリアはとても訝しむ。ジーっと正影を見てそして溜息をつく。
「まあそういう事にしておきましょう。行きますよ正影さん」
「あ、ああそうじゃな。張り切って行こうかの!」
「うお!?あっぶね!」
エピックは顔面スレスレで斧の斬撃を避ける。距離を取り銃を撃つも弾かれ避けられ懐に入ってくる
さっきからこの繰り返し、壊れていない墓も希少になってきた。しかしこれは長くは続かないだろう。
シスターは大柄な武器を振り回しているが汗一つ垂らすことはない、対してエピックは比較的体力消費の少ない銃を撃っているのだが段々と動きに鈍りが出てきた。
そしてついにエピックが足を滑らせる、その隙を待ってましたと言わんばかりかシスターは斧を横に振り上半身と下半身を分断しようとする。
エピックは左手には何も持っておらずがら空きだ、とエピックがどこからか瞬時にその得物を取り出す
ガキィーンと金属がぶつかり合う音が鳴った、斧はその得物に引っかかり動かなくなる。
ナイフの形をしてしかし凸凹の形状をしている変わった武器だ
(ソードブレイカー...でしたか)
斧が凸凹に引っかかり動けない隙にエピックは銃でシスターを狙う、がその怪力で斧を動かしエピックは身体ごとふっとばされる
見るとその衝撃でソードブレイカーの凸凹の部分が一部破損していた
「む、壊れたか...はぁ〜スペックの暴力やめてって」
「鍛えましょう」
「人が獣に勝てるかよ」
そう返されるとシスターは心底不思議そうな顔をして言った
「...?貴方人なんですか?」
「失礼だな人だよ、今はね」
「...まあ貴方が何であろうと今死ぬことには変わらぬ事実ですがね、そろそろ限界なのでは?」
「ソンナコトナイヨ」
銃を置いて手を前に出してフリフリさせる、否定を指すジェスチャーをするのと同時に左手でナイフを出して続けて投げる、シスターの両横に銃を撃ちナイフを弾かせるように誘導する
当然のように斧でナイフを弾き...また弾いた。ナイフは二回投げられており二段目が見えないようにされていた、が視覚が失われているシスターはそれ以外の五感がとても鋭い、投げられる際の風圧で来ることが分かっていた
「チッ、やっぱ無理か」
口数が減ってきたエピック、シスターの読み通りかなり疲れていた。正直早く寝転びたいなあとも思っている
(そろそろ殺しますか)
もう十分だろう、十分見せた。仕事を遂行しよう
シスターは突きを放つ、間一髪で避けてエピックはそのまま銃を撃とうとした、その時ガシャンと何かが動く音がして...
エピックは真っ二つとなった
「任務完了と」
シスターは鎌を肩に掛けてそう言った
アリアと正影は鎖に導かれて街のとある家に来ていた。その家は二階建てで古びてはいるが綺麗に掃除されていた
鎖は正影の手の上から飛んでその家の扉の前に座った、目的地はここらしい
扉を開ける、鍵はかかっていない。
「私は一階を調べるので正影さんは」
「二階じゃな」
一階を調べる。部屋は三部屋あって寝室、リビングと一般的で飲み物がまだ残っているあたりつい最近まで人が居たのだろうとわかる、そして残りの一部屋に見慣れないものがあった。
謎の白い物体、アリアはそれを色々触ってみる。レバー?に触る、すると水が流れる音が聞こえてきたので蓋を開けると本当に水が流れていた。それ以上はなぜだか汚い感じがしたのでもう触れないことにした。
「おーい!こっち来てくれい!」
丁度探索が終わったところで二階から正影の呼ぶ声がした。
「これを見てくれ」
二階に上がると正影は何かを手渡してきた
「なんですかこれ?」
手渡してきたのは黒い長方形の形をした物、これが何なのか全く想像がつかな...いや昔見たことあるような...?
「儂にもわからんが、傍に手紙があった。まだ読んどらん、というか文字が読めん。儂が読めるのは日本語だけじゃ」
「じゃあ今喋っているのは何なんですか...あとにほんご?聞いたことのない言語ですね」
「そりゃあそうじゃろだって儂、異世界からきたもん」
「...そうですか」
「ありゃ反応薄いの」
「こことは違う世界があるのは知っていましたし、なんとなく貴方は異質だと感じていたので」
アリアは手紙を開きそのまま言葉に出して内容を綴る
『はじめに、この手紙を読んでいるということは私はこの世には居ない。そして君は彼の縁者だろう。私はかつて英雄と呼ばれていた者だ。まあそれはどうでもいい、私はとある阿呆から彼を殺すように依頼された。私はそんなことしたくはなかった、だが断ればどうなるかを考えると、やらざるおえなかった。
私はきっと彼に勝てないだろう、だがそれは阿呆の計画の始発点なのだ。私は光栄にもこの地方の住民に慕われている、だからこそ私が殺されれば彼は陥れられて憎悪される。友をそんなことにはさせるものか、だから頼む。その黒い箱を時計塔に持っていきそこにある機械に入れてくれ、そしてできるならば黒幕「第四天将」を倒して欲しい。今ここに来ているのは本体ではなく分身であるから倒せるだろう。報酬は時計塔にあるから持っていくといい。どうかお願いします』
「...一応首も切っておきますか」
ザシュと半分になったエピックの首を鎌で切る
龍武器「残夢」特徴的なのはやはりその変形機能だろう。斧と鎌に変形することができる。普通ならば変形する武器なんて中身の複雑さ故に脆く実用性が皆無なのだが、龍武器はそれを克服した実用性とかっこよさを合わせた浪漫武器なのだ
シスターは任務が完了したので帰還しようとし振り返る、壊した墓にはちょっぴり罪悪感を持って
「あー痛いって、全く胴体から下が無いのに更に首切るとか無慈悲かよ!」
エピックはそう言いながら首をくっつける、先程まで死んでいたとは思えないほど元気ピンピンだ
「...ほお、一度では殺せないようですね。ならば何度でも殺すまで」
「すぐに割り切るねえ、まあ逃げさせてもらうんだけどね」
エピックは手裏剣を投げる、当然弾かれるのだがその隙にマッチ棒に火をつけて地面に置いてあった爆竹に移す
エピックは戦闘中爆竹を銃の音で誤魔化して地面に置いていた、いくらシスターの聴覚が優れていようと銃で誤魔化されては探知出来ない...はず
それはともかく爆竹は四方八方に置かれており誘爆するように置かれていた、そして今火がついたことにより...
「ぐっ!」
両手で耳を塞ぐ、普通の人なら大きな音、彼女にとっては爆音だ
「ハーハッハッハッハ!さらばだぁ!」
エピックは走って逃げた、心なしか先程よりもスピードが上がっていた。
急いで追いかけようとするが
「!?」
突如として自分の身体が止まる。
(これは時間停止ですか)
そうなればエピックも止まっているはずなのだがその様子は無さそうだ。
(...どれくらい止まりますかねこれ)
シスターは時間が止まっていてもそれを知覚できる、それどころか動けもするのだが
(まあ手札は隠しておきますか)
それからしばらくしてようやく解除された。
「不覚を取りましたね...」
シスターはわざと聞こえるように呟き、そしてちらりとこちらを監視している白い鳥を見る、鳥はもうここには用が無いという風に飛び去っていった。
「...帰りますか」
帰り道の途中、シスターは月を見上げる。
見えはしないが光は感じる事はできる、計画どおり月は欠けていた。
シスターは微笑み、そして闇に消えた。




