夜のさざ波。
心にはある、夜のさざ波が。
聞こえるでしょう?
ねえ、聞こえるでしょう?
心に満ちてくる、夜のさざ波が。
見えるでしょう?
ほら、見えるでしょう?
心から溢れ出す、夜のさざ波が。
冷たいでしょう?
もう、冷たいでしょう?
心には、目と口で覆われた夜のさざ波が、ある!
やって来る!
ほら、聞こえるでしょう?
ほら、見えるでしょう?
ほら、動けなくなる前に!
見覚えのある目と口で覆われた夜のさざ波が、くる!
わたしは、限りない底に足はつくだろうか。
わたしは、息を邪魔する波間を泳げただろうか。
わたしは、息継ぎの仕方を思い出せるだろうか。
不随意の振動拡げて、夜のさざ波がやって来る。
不本意な信仰被せて、夜のさざ波が到達する。
ついに、やって来た!やって来た!
ほら、聞こえたでしょう。
忌み嫌う言葉の産声が!さざ波に乗って!
ほら、見えたでしょう。
鋭い角度の黒い月が、さざ波に乗って!
やって来た、やって来た、とうとうやって来た!
なりふり構わず、備えて。
目蓋を閉めたら白い闇が待ち構えている。
備えて、備えて、逃げて、泳いで!
どこでもいいから、なりふり構わず走っていって!
懐かしむなんて後にして。
取り返しのつかない慰めなら後にして。
息をさせてくれるうちに、泳いで!
あっという間に心を満たす、夜のさざ波を!
そっと押し寄せてくる、夜のさざ波を。