3.得物語
「あー……! 面倒さえなければ、カイソクも悪くはないけど……!」
口に出して言ってしまった。
「姫様、本気ですか?」
シュリがどん引きしている。
「ちがう……! 違うの。11歳の王子がどうこうではなくて、 ナタシアと同じ人に嫁ぐのが面白そうだと思ったのよ」
「友達同士で男の共有ですか?
趣味の良し悪しはともかく、セツゲンはすでに断ったのでしょう?」
「わたくしが嫁ぐと言えば、ナタシアは気を変えるかもしれない」
「その場合、どちらが第一夫人ですか?」
「年齢からいえば、わたくし? ああ、でも身分的にナタシアの方が上だから、」
「面倒くさそうですね」
「――そうね」
我ながら、阿呆なことを口走ったと思う。
「ちゃんと断ったわ。子どもは範疇にない」
「王子が成人するまで、6年は遊べますよ?」
「シュリ!」
寝る支度をして、シュリに明かりを消させた。
そういえば、明日はどの恋人とも会う約束をしていない。
恋愛に、食傷気味なのだろうか。
ダンギのせい?
いいえ。ダンギなどに、私は乱されない。
あの、王のせいだ。
恋愛に傷つき、絶望の緑色をした、カイソク王。
全てを諦めた空虚。
あれが恋愛に全てを賭けた男の、成れの果てだ。
布団に入ってしばらく経ったものの、眠れなかった。
――あれはもう人のモノですよ。カイソク王では手に入りません――
シュリの言葉を思い出すのも、何度目か。
そう。あれは手に入らない。
諦めるしかない。
「――諦める?」
わたくしは、いつ、カイソク王を狙った?
狙っていた?
ばかばかしい。
恋愛は、楽しむもの。
カイソク王といい、ダンギといい、苦しむなどとは愚の骨頂。
なにをそんなに追い求めるのだろう。
もっと楽しめばいいのだ。わたくしみたいに――。
「いやーー」
カルラは身を起こす。
ぞくぞくぞくと、身が震えた。
今、楽しいではないか。
こんなに打ち震えたことは、ない。
――あれはもう人のモノですよ。カイソク王では手に入りません――
人のモノ。
行方知らずの第一夫人のもの。
身の震えが止まらない。
そう。
手に入れたいのでは、ない。
わたくしは、あの不幸な緑を見ていたいのだ。
第一夫人に捨てられて、国王となっても、王妃を得ても幸せになれない。
なんて可哀そうな王様。
なんて、なんて可哀そうな王様!
あの男は、どうやったら幸せになれる!?
第一夫人が見つかったら?
王子が生まれたら?
「ああ」
見ていたい……。
カルラは起き上がって、ランプに火を灯した。
もう寝てなどいられない。
わたくしは、見たいのだ。
どうすれば、あの緑の目に火が灯るのかを。
あの虚ろなカイソク王を、見届けたい!