百鬼 草庵居然と時々鍋
気づいたら懐かしい部屋にいた
四畳半の小さな部屋
週刊誌が散らかり
風が吹けば涼しい音と共に
ラムネと野菜カレーの匂い
窓から外を見下ろせば
小さい頃から良くしてもらった
近所の方が一人で切り盛りしている駄菓子屋が
今日も小学生の相手をしていた
僕の記憶が正しければこの部屋を出たのは
五年前である
しかし暑さのせいか煩さのせいか
考えがまとまらなかった
日が沈めば
窓から夕焼けが入り
部屋は赤々としていった
部屋は電気が付けっぱなしだからか
外が暗くなっても部屋は明るかった
子供の頃はこの時間になると母親が夕飯ができたと
声をかけに上がってくるがそんなことはなく
気づけば目の前には料理が出されていた
しかしそれに違和感を覚えるわけもなく
出されたからただただ頬張るのである
あつあつに煮えたぎっていて
ぐつぐつと音をたてる鍋が目の前にある
中にはネギやら椎茸やらが入っていたが
極め付けは鮟鱇が入っていた
テーブルを挟んだ向こう側にも
鮟鱇が泳いでいた