下心の在り処
その時になってようやく罪悪感を覚えて、私はゴメンとユズルに告げた。
「もうすぎたことだからいいけど」
そう、ユズルは言ってくれたけど。
ことあるごとに冒頭のようなイヤミを告げてくる。
……根にもつタイプとは。
ひとしきり遊んで、食事もとって満腹になったタクは、少し目を放したすきに眠っている。
起こしてもぐずるだろうから、そのままにしておくことにした。
ミチルちゃんが「遊ぼう遊ぼう」と私達の周りをうろうろしている。
あからさまな態度に出さないように注意しながら「遊んでいい?」とユズルに聞くと、ユズルも体を横たえて眠そうな顔で「いいよ」と告げた。
「チビは見てるから」
チビとはタクのこと。
言ったついでにユズルはあくび一つもらした。
「おいで」
と、両手を差し出すと、喜んだミチルちゃんが腕の中に飛んでくる。
ちっちゃな手足、柔らかな毛並み。
か、かわいい!
ぎゅっと抱きしめて、芝生のほうへ行くと、私はミチルちゃんとひとしきり遊んでいた。
フリスビーが上手で、驚いたほどだ。
ちょっと疲れてシートのほうへ戻ると、タクはまだ寝ている。
ユズルは眠そうな顔で私達を見ていた。
「ふうん」
「? なによ」
何だか納得した顔で、私とミチルちゃんを見ている。
「理由がわかったから」
「理由?」
唐突な話に、私はただ聞き返すだけ。
「そいつと遊びたいんならそういえばいいのに。まわりくどいことせずにさ」
……あ。
ばれ、ちゃった。
赤くなる私を一瞥して、ユズルはあくびをもらした。
「少し眠らせて」
そういってユズルは仰向けに寝転がった。
「……あれ?」
目をこすりながら目覚めたユズルは、ぼんやりとあたりを見渡して疑問符を唱える。
「チビは……?」
「お姉ちゃんが迎えにきて、帰ったよ」
ユズルが寝てる間に起きたことを告げると、ぼんやりとした寝起きの顔で「そう」とだけうなずいた。
「どれくらい寝てた?」
「一時間? くらいかな」
「あー……。ごめん」
なぜか謝るユズルに私は首をかしげる。
「そんなに寝るつもり、なかったんだけど。退屈だったろ? 何もすることなくて」
「ぜんっぜん! 遊んだもんねー。ミチルちゃん」
両手を捕まえて後ろ足で立たせても、嬉しそうに尻尾を振ってくれる。
ああ。
なんて憂いヤツ。
本心だとわかって、ユズルは苦笑した。
「じゃあ、帰ろうか」と告げるユズルに私は「え!?」と声をあげた。
ユズルはあきれた眼差しをむけている。
「なに。まだ遊びたりない?」
遊びっていうか。もう少し一緒にいたいっていうか……。
ユズルは困ったように頭をかいている。
そりゃそうだ。
用もないのに、公園にい続けるなんて苦痛でしかない。
「……ユズルの家で、遊んでもいい?」
さっき「直接言えばいい」って言ったのに甘えて。
ミチルちゃんの手を掲げながら、思いきって頼んでみた。
ユズルは驚いた顔をしてしばらく考えこんだけど。
しかたない。と、ため息混じりにうなづいてくれた。
ラッキー。