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背中あわせにつなぐ手を。  作者: 高月 すい
第一章 カウンターの君。
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下心の在り処

 その時になってようやく罪悪感を覚えて、私はゴメンとユズルに告げた。


「もうすぎたことだからいいけど」


 そう、ユズルは言ってくれたけど。


 ことあるごとに冒頭のようなイヤミを告げてくる。

 ……根にもつタイプとは。


 ひとしきり遊んで、食事もとって満腹になったタクは、少し目を放したすきに眠っている。

 起こしてもぐずるだろうから、そのままにしておくことにした。


 ミチルちゃんが「遊ぼう遊ぼう」と私達の周りをうろうろしている。

 あからさまな態度に出さないように注意しながら「遊んでいい?」とユズルに聞くと、ユズルも体を横たえて眠そうな顔で「いいよ」と告げた。


「チビは見てるから」


 チビとはタクのこと。

 言ったついでにユズルはあくび一つもらした。


「おいで」


 と、両手を差し出すと、喜んだミチルちゃんが腕の中に飛んでくる。

 ちっちゃな手足、柔らかな毛並み。

 か、かわいい!


 ぎゅっと抱きしめて、芝生のほうへ行くと、私はミチルちゃんとひとしきり遊んでいた。

 フリスビーが上手で、驚いたほどだ。

 ちょっと疲れてシートのほうへ戻ると、タクはまだ寝ている。


 ユズルは眠そうな顔で私達を見ていた。


「ふうん」

「? なによ」


 何だか納得した顔で、私とミチルちゃんを見ている。


「理由がわかったから」

「理由?」


 唐突な話に、私はただ聞き返すだけ。


「そいつと遊びたいんならそういえばいいのに。まわりくどいことせずにさ」


 ……あ。

 ばれ、ちゃった。


 赤くなる私を一瞥して、ユズルはあくびをもらした。


「少し眠らせて」


 そういってユズルは仰向けに寝転がった。





「……あれ?」


 目をこすりながら目覚めたユズルは、ぼんやりとあたりを見渡して疑問符を唱える。


「チビは……?」

「お姉ちゃんが迎えにきて、帰ったよ」


 ユズルが寝てる間に起きたことを告げると、ぼんやりとした寝起きの顔で「そう」とだけうなずいた。


「どれくらい寝てた?」

「一時間? くらいかな」

「あー……。ごめん」


 なぜか謝るユズルに私は首をかしげる。


「そんなに寝るつもり、なかったんだけど。退屈だったろ? 何もすることなくて」

「ぜんっぜん! 遊んだもんねー。ミチルちゃん」


 両手を捕まえて後ろ足で立たせても、嬉しそうに尻尾を振ってくれる。

 ああ。

 なんて憂いヤツ。


 本心だとわかって、ユズルは苦笑した。


「じゃあ、帰ろうか」と告げるユズルに私は「え!?」と声をあげた。

 ユズルはあきれた眼差しをむけている。


「なに。まだ遊びたりない?」


 遊びっていうか。もう少し一緒にいたいっていうか……。


 ユズルは困ったように頭をかいている。

 そりゃそうだ。

 用もないのに、公園にい続けるなんて苦痛でしかない。


「……ユズルの家で、遊んでもいい?」


 さっき「直接言えばいい」って言ったのに甘えて。

 ミチルちゃんの手を掲げながら、思いきって頼んでみた。


 ユズルは驚いた顔をしてしばらく考えこんだけど。


 しかたない。と、ため息混じりにうなづいてくれた。


 ラッキー。





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