狂戦士とラプトルの戦い
石槍を手に男は太古の樹木が生い茂る森へと入って行く。
ギャーギャーと森の奥から獣の鳴き声が響く中、男は前進を続け、森の奥ーー更に奥へと進む。
ーーとそこで男は歩みを止めると何かの気配を感じて石槍を構えた。
足を引っ張られたのは次の瞬間である。
其処には背の高い茂みから顔を覗かせ、男の足に食らい付く恐竜ーーラプトルの姿があった。
男は渾身の力を込めて足に食らい付くラプトルの目に石槍を突き刺す。
激痛に先に身をよじったのはラプトルの方であった。
ラプトルの口から逃れた男はすぐに体勢を立て直すとラプトルの心臓目掛けて石槍を突き刺す。
心臓を貫かれたラプトルは絶命する直前に一声鳴く。
するとラプトルの群れが現れ、絶命したラプトルを一瞥すると男に向かって威嚇の雄叫びを上げる。
それに対して男は雄叫びをもって返すとラプトルの群れに突進して行く。
ラプトルの一匹が男に飛び掛かる。だが、気にしない。
男の狙いは一際大きなラプトルへと向けられていた。
男は腕をクロスさせて猛進するとラプトルの群れを掻い潜り、大きなラプトルに勢い良く突撃する。
揉みくちゃに転がる一人と一匹。ラプトルの鋭い爪が男の肩に食い込み、その牙が男の顔面を襲う。
肩から血を流しながらも男はその口を掴んで顔面の攻撃を防ぐと力任せにラプトルの首を捻った。
ゴキリと言う音が響き渡り、ラプトルの目が白眼を剥いて崩れる。
男は崩れ落ちたラプトルから身を剥がすと他のラプトルに向かって威嚇の雄叫びを上げた。
リーダーを失ったラプトル達は困惑すると男の威嚇で散り散りになって逃げて行く。
男はそれを見送ると仕留めたラプトルを石槍の先で強引に引き裂き、その肉を貪り始める。
さながらそれは原始人その物の姿であった。
ある程度、肉を貪り食らうと男は地面に刺した石槍を引き抜き、ラプトルの爪をその先端で引きちぎり、武器にでもするかの様に軽く振るうとその一対の大きな爪を腰巻きに差して元来た道を戻り始める。
戦うには新しい武器がいる。男は本能でそれを察すると先の村へと戻り、ラプトルの爪を加工し始めた。
加工しながら男は考える。ドラゴンに己の肉体は効かなかった。だが、もし通用する武器を手にしていたらどうなっていたかを……。
この時になって男は思考する知恵を身に付けるのだった。