あやかしの逢瀬
法子21才、信也30才、法子の大学卒業を待たず、ふたりは結婚します。
物の怪に身を委ねたるおとめごの
仕合せひとつ手に取りて
息吹きかけて風に飛ばさむ
あやかしに愛され尽くすおとめごの
吐息をひとつ温めて
露に変えては野原に散りばむ
うらぶれた苫屋にあるのはただふたり
この腕のみを頼みとする女
驟雨の音さえ帳に変わる
物の怪もあやかしも吾ひとつのかたち
物の怪もあやかしも愛ひとつの顕れ
吾が心根のかたちに過ぎない
誰が何と言おうとも
吾が恋情に嘘はない
今はこの熱肌に受け
この腕の中安らぎ憩え
この愛の中浸り夢見よ
信也と法子、血のつながらない従兄妹同士{信也は養子なので)の長編、「帰ってきた人」も、もしご興味あれば覗いてみてください。