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第二十八話 グリフォンたちの舌なめずり

「グリフォン四より、グリフォンリーダーへ。キツネどもが、斥候所へと入場した。繰り返す。キツネどもが入場した」


 ゼクサス帝国第六○一対魔法特殊中隊の中隊長、グリフォンリーダーこと、ハインツ少佐はほくそえんだ。


 今頃、魔法学校のガキどもは、斥候所の兵隊どもがみんな死体になっているのを発見してパニックになっている頃合いだろう。

 それを考えただけでも勃起ものだった。

 今回は、フラフラとオーハイム王国の王女様が物見遊山で、ピクニックにやってくるという、首都のスパイからの情報で立案された、正規作戦のついでの簡単な作戦だったが、思いの外、楽しくなりそうだ。

 部下二人を使った先ほどの紳士的なお誘いは、王女にあしらわれてしまったという報告は受けている。

 さすが、アケイナ王女。猛者だと事前に聞いていたので、そこには特に何の感慨も感じない。


「他の八人の学生は?」


「男が五名、女が三名。男と女にそれぞれCランクの魔法使いが一人ずついるみたいですが、所詮、素人相手ですので、排除は容易です」


 部下からの報告に満足する。


「そうか。よし、男は殺せ。女は好きにした後に殺せ。王女だけは生かして連れ帰れ。なお、腕や足の一本、二本、千切れていても構わん」


「はは。さすが俺たちの隊長は話がわかる!」


 部下たちからの賛辞の言葉が心地よい。


 所詮、成功しようが失敗しようがどうとでもよい、ついでの作戦だが、失敗をする要素がない以上、何も心配することは思い付かないことにハインツ少佐は満足そうに嗤った。


◆◇◆◇◆◇


「あ、あれを見て!」


 震える声でエリサが叫ぶ。

 燃えている小さな砦。

 ここが、一応の休憩ポイントであった北方騎士団の斥候所だ。だったところと過去形で言うべきかもしれないが。

 燃えている砦から少し離れた木のところになにかが絡み付いている。

 遠目の魔法を使ってみると、兵士と思わしき、首から上が存在しない死体が数十体。木に吊るされていた。

 さながら、グロテスクなクリスマスツリーといった風情だ。


「たぶん、これは罠だ。あそこの木に、吊るされた兵士たちの遺体がある」


 アケイナにだけはぼそっと伝える。

 班員全員が知る必要はない情報だ。


 エリサ、バクスター、プラムは、皆不安そうな面持ちだ。


 僕とはあまり面識がない男女四名の学生はあるものは茫然自失とし、あるものは泣き叫んでいる。

 まさしく阿鼻叫喚だ。

 アイアンゴーレムを相手にするような死線を潜り抜けたことがないこの四人の学生たちには、ちょっと刺激が強いみたいだな。


「ど、どうするのホイラー君?」


 プラムが震える声で聞いてきた。


「まず、一つ言えることは、これは帝国の仕業だろうな、ということ。もう一つは、相手に、僕達を精神的に追い詰めて楽しもうという魂胆があるということ。明らかに僕達を侮っているね」


 でなければ、こちらへと誘導をするかのように敵兵士たちが一定の距離を開けて、追いかけ続ける必要がない。


「逆に言えば、連中が僕達を侮っている限り僕達に逃げるチャンスがあるということだね」


 燃え盛る火の手の前で不敵に嗤いながら僕は断言した。


「じゃ、じゃあ、どうやって連中を出し抜くんだ? 正規兵、たぶん魔導師もいたはずの前線部隊がこうも簡単に制圧されているんだぞ」


 バクスターが困ったように言ってくる。

 どうやら、もう精神的なダメージは克服したらしい。なかなかタフだな。良い兵隊になるぞ。


「ここは、僕達がパニックに陥って逃げ出そうとしていることを演出しよう。たぶん、ここから下山するところにトラップがしかけられているのがセオリーのはずだから、まずは、そこに向けて進むのが良いと思う。連中も、そこまでは襲ってこないはずだし」


 僕の頭のなかでは相手指揮官が、こちらを侮り、追い詰めようと、嗤っている姿が鮮明に浮かべることができた。


「でも、前みたいに、一人で囮になるようなことは絶対にやめてね」


 エリサが僕の方を震える瞳で見上げている。


 アケイナがそんな僕達をじっと見つめていた。


◆◇◆◇◆◇


「グリフォン四より、グリフォンリーダーへ。キツネどもが下山を開始した。トラップの方向へとまっすぐに進んでいる!」


 ははは、と笑い声さえ聞こえてきそうな陽気な声色だ。

 ここまでこちらの想定通りの動きをされると、張り合いが無さすぎるな、などとも思ってしまうのは欲をかきすぎだろうか。


「グリフォン一より、グリフォンリーダーへ。こちらの三個グリフォンチームは、先制の準備完了。いつでも、行動に移せます」


 山中に潜ませている北方騎士団への先制攻撃用の各部隊からの点呼が完了した。こちらの三チームは、王女誘拐ではなく、北方騎士団への奇襲用の正規作戦の担当だ。

 学生たちを蹂躙し王女を拉致したら、奇襲攻撃により北方騎士団の魔術師どもを殲滅。そうしたら、あとは、正規軍どもの仕事だ。


「グリフォンリーダーより、各グリフォンどもへ。今日は仕事が終わったら、基地で祝い酒だ。俺の奢りだからな! 今日は存分に働けよ!」


 ははは、と部下からの笑い声が聞こえてきた。

 今日は楽しい一日になりそうだ。


次回は3/19(日)に更新の予定です。

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