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第十一話 魔法力測定会

「よーし、お前たち、整列しろ!」


 教官--まぁ、うちのクラスの担任のウーバッハ先生なのだが、の号令にあわせて、僕たちオーハイム魔法学校高等部の一年生六十名全員で、魔法力測定会が開始された。


 なんでも実技時間は、クラスごとの枠組みを越えたチーム編成でカリキュラムをこなすらしく、そのチームをバランスよく編成するために、各人の能力を見極めることが、今回の測定会の第一目的とのことだ。


 また、各チームごとに、わざと色々なメンバーを組み合わせて、色々と特色を出したりもするらしい。

 そのために、それぞれのメンバーにあった個別カリキュラムを作る必要があるらしく、そのためにも、この測定会で、それぞれの得意・不得意を知ることが大事だ、と訓示を垂れていた。

 僕としては、学校が、割と手間隙かけて各個人ごとの訓練メニューを作るんだなー、などと少し、感激してしまう。


 ……まぁ、当然と言えば当然だが、他の目的としては、各人の格付けという側面もあるが。


「格の違いというのを、見せつけてやるよ」


 初日に僕に絡んできた、自称騎士様のチョイスクたちが、僕に対して宣戦布告をしてきた。


「お手柔らかにねー」


 まぁ、目立つなという師匠の言葉が撤回されない限りは僕は手を抜くけどね。


 チョイスクたちと入れ違いにエリサが向こうからやって来た。


「ホイラー、今日は、頑張ろうね!」


 エリサは今日も元気だ。


「ま、まぁ、あまり、張り切りすぎて怪我をしないようにね」


 一応、注意をしといてやる。


「やっぱり、こういったテストとか、実技はうきうきするよな!」


 ごっついバクスターが、いきなり、肩を叩いてきた。

 この脳筋、少しは加減をしてくれよ。


「バクスターは、気合いが入っているねー」


 僕としては、その元気の十分の一でも欲しいよ。


「あれ? ホイラー君、もしかしてやる気ない?」


 情報通のプラムがふらふらとやってきた、全身から気だるげなオーラを醸し出している。

 どうやら、こいつもあんまり、やる気がないっぽい。

 おぉ、同志よ!


「早いところ休みたいよ」


 僕は肩をすくめた。


 ……しかし、どれ程の力加減で、魔法力を制御しないといけないのかがわからないとお話にならないな、とも思う。

 力が強すぎても、弱すぎても目立ってしまう。


 僕は生徒たちの魔法力の調査するために、魔法式を展開する。

 ただ、調査の魔法が使われているのを彼らに悟らせないために、妨害(インターフェレンツ)の魔法式もあわせて展開しておく。

 学生には薄く、教官には、厚めに、妨害の膜を展開しておく。


 ……よし。

 気付かれた気配はないな。

 魔力を丁寧に展開し、それぞれの生徒の魔法力の情報を仕入れる。

 実際に魔法を発動しているわけではないので、どうしても近似値になってしまうが、まぁ、特に問題ないだろう。


 えーと、エリサはだいたいクラスC(上級者レベル)相当か。なかなかのものだね。

 すでに、実戦魔術師と遜色ない腕前だ。

 バクスターもクラスC。こいつもいい腕だな。

 プラムはクラスD(中級者レベル)だな、学年では上位というところ。しかし、なんだ? こいつのオーラは女のそれだな? 僕の測定ミスか? まぁ、いい。


 残りの連中のほとんどはクラスE(初級者レベル)で、一部、クラスDと、クラスF(初心者レベル)が混じっている。自称騎士さんは、それでも、クラスDだ。

 やるじゃないか。


 あとは、先生は、と。

 ……おぉ、さすがのクラス(マスターレベル)

 熟練魔術師だな。


 よし、僕はクラスEをターゲットにしよう。

 この辺ならば、誰も不審に思わないだろう。

 それと、ちょっとしたいたずら心で、みんなの平均値に近づけるように調整してみよう。

 すでに測定を始めている連中の実測値と、魔法で予測した値との差を分析して、と。


 あと、せっかくなので、エーテル・魔力変換速度、魔力蓄積量、魔法投射力、魔法展開速度と、魔法展開式の精度なんかも、それぞれ平均になるように調整する。


 さすがに、こんないたずらに気づくやつはいないだろうけどなー。

 ふふふ。なかなか、楽しそうだ!

 僕は仕入れた情報を分析して、なるべく、平均になるように、一生懸命に魔力を調整した。


 ただし、教官だけは、もしかしたらこのいたずらに気づく可能性があったので、ジャミングをかけておく。

 やはり、いたずらをするには、念には念をいれなければならない。


 そして、全ての測定が終わり、僕は大満足な笑顔を浮かべた。

 ちょっとした、魔法の芸術を達成した気分だ。


「なんだお前、あれだけ噂になっていたのに、所詮はクラスEか。普通じゃないか!」


 さっさく、自称騎士さんが絡んできてくれた。

 僕としては普通をアピールをするのに申し分ない相手だ。


「みんなが勝手に盛り上がっているだけだからね。僕はいたって普通だよ」


 僕は肩をすくめて笑顔を浮かべた。


「そんなことないよ! ホイラーは私にとってはいつも特別だよ!」


 余計なことをいうなエリサ。

 ほら、チョイスクの顔がだんだんと赤くなってしまったじゃないか。


「ま、まぁ、魔法力なんて、ころころ変動するものだし、一喜一憂するんじゃなくて、日々の鍛練が大事だと思うんだよね」


 なんとなく、僕としては良いことを言った気がする。


「じゃ、じゃあ、俺と試合をしてもらおうか! 鍛練の一環としてな! 男ならば逃げずに戦えよ!」


 なんで、いきなり、そうなるんだよ!

 勝っても負けても僕が目立つじゃないか。不本意だ。


「ホイラー! 私のために戦ってくれるのね!」


 いやいや、火に油を注ぐように、素で煽らないでくれよ。


「夕刻、格技場にて待つ! 逃げずにくるようにな!」


 そう捨てぜりふを残してチョイスクたちは行ってしまった。

 むぅ、困った。


「いったいどうするのホイラー君?」


 心配そうな顔でプラムが声をかけてきた。


「な、なんとかしないと……」


 かといって、妙手が簡単に浮かぶものではないが。


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