7/35
7
瑛太にお粥と処方箋薬を口にさせると、そっと目を閉じる瑛太だった。
「悪いな……。何もないけど、まだいてくれるか?」
と、囁く瑛太に、
「ううん。いいのよ。大丈夫……?」
と、声をかけた。
瑛太は目を閉じたまま、やがて寝息を立て始めた。
薬も効いてきたのかもしれない。
静かに休んでいる瑛太を起こさないよう、そっと寝室を出た。
寝室を出ると、手持ちぶさたになり、戸惑った。
また寝室に戻る勇気はない。
有架里は隣の部屋へ行ってみた。
ピアノを理由に、もっとここにいたかったのだ。
理由もなく男性と二人きりでいられる余裕など全く無かった。
廊下の絨毯も防音になってる気もするくらい、静かだった。
バイオリンには目をくれず、ベーゼンドルファーの蓋を開ける。
ピアノを選んだのはちゃんと理由もある。
ベーゼンドルファーに触れたことがないことだ。
もう一つ、大きな理由といえば、バイオリンにしてしまうと、瑛太の息遣いや汗を感じてしまいそうで怖かったのだ。




